第69話 三つ巴対決(1)

アスロ王国。

大陸南東部、アスロ山脈の東に位置する国で、王政。

大陸でも有数の軍事力を持っているが経済の発展は

サンシュミー魔導帝国やレフィル聖王国に比べると劣っている。

領土の多くがアスロ盆地と呼ばれる盆地になっている。


ーーアスロ王国


「サンシュミー魔導帝国を奪えれば魔法技術も広い領地も手に入る。

 まさに一石二鳥だな。」


「しかし、国力を考えると勝つのは難しいかと・・・」


「そこでだ。サンシュミー魔導帝国とレフィル聖王国を戦わせて

 我が国が漁夫の利を得るのだよ。」


「畏まりました。

 あと、例の実験については引き続きに任せるということで

 よろしいでしょうか?」


「問題ない。子爵がうまく出来るかは知らんがな。」


「最悪の場合は彼らには死んでもらうか。子爵も一緒にな。」


「リスクは付きものということですか。」


「ああ。失敗した場合の代償を承知でやっているのだ。

 精々無能なりに役立ってもらう。」


「では、子爵に伝えておきます。」


「ああ、よろしく。」



ーーガイウス大公国南部


「かかれー!」


これまでは小競り合い程度だったガイウス大公国とブルーイン帝国の戦闘が

激化していた。


狙いは互いの領土である。


戦況はブルーイン帝国が僅かに優勢であった。



ーーサンシュミー魔導帝国帝都


「魔法鉄の産出量が減っているようだな。」


「はい。

 このままだと魔道騎士団達に支給する魔法剣が足りなくなります。」


「それと、北大陸の探索も急がねば。」


「魔法鉄の鉱山があると良いですね。」


「ああ。そのことを北大陸の民が知っていなければの話だがな。」


「そうですね・・・」



ーー夜、ガイウス大公国南部 ガイウス大公国の陣


「くそ。いつになったら終わるんだ。」


「ああ。

 そういえばもうすぐ補給部隊が来るらしいぞ。」


「そんなことどうやって知った?」


「さっき、本陣に早馬が来て補給部隊がもう少しで着くと知らせに来てた。」


「そうか。しかし、この戦いはいつまで続くのか・・・」



ーー1時間前、ガイウス大公国本陣から北東に向かった場所


「いたぞ。直前まで気づかれないようにするんだ。」


「「「はっ」」」


「もうすぐ来るぞ。武将を優先的に殺せよ。」


「分かっています。」


道端の岩や茂みに隠れていたのはエルヤ帝国の兵であった。

手には銃身が短く加工された火縄銃や弓を持っていた。


そして、彼らの視線の先にはガイウス大公国軍の補給部隊。

彼らは、ガイウス大公国軍の補給路を断とうとしていた。


ただ、エルヤ帝国とブルーイン帝国は同盟を結んだというわけではない。


ブルーイン帝国とガイウス大公国の戦いを早く終わらせるためである。

正確には、エルヤ帝国は漁夫の利を得ようとしていたのであった。


「来たぞ。構えろ。」


兵たちが一斉に銃や弓を構える。


「撃つタイミングは各自で調整しろ。

 ただ、同じ奴はできるだけ狙わないように気をつけろ。」


「「「はっ」」」


「撃ったらすぐに剣を抜いて突っ込め。」


補給部隊がすぐ目の前まで迫ってきていたため兵たちは無言で頷く。


そして、目の前を補給部隊が通った瞬間・・・


弾や矢がガイウス大公国軍の武将らに突き刺さる。


「うっ!」


「敵襲だー!」


そして、エルヤ帝国軍の兵たちは指揮官を失って統率が取れなくなった

ガイウス大公国軍の補給部隊を蹂躙する。


エルヤ帝国軍にとっては運の良いことに、この補給部隊は新兵が多かった。

ガイウス大公国は補給部隊は比較的安全だろうと思っていた。


そのため、指揮官を失った途端に統率が取れなくなり逃げ出す者、戦う者、

敵には殺されたくないと自決する者、混乱して右往左往する者など壊滅状態に

なっていた。


そして、約10分後には補給部隊は全滅したのだった。

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