第62話 奸臣と忠臣(3)

ーー翌日、エルデン伯爵邸


「君たちはエーザ公爵の元へ行き、事情の説明と護衛を行え。」


「「「はっ」」」


「お前らはここで待機。すぐに動けるようにしておけ。」


「「「はっ」」」


「それでは、作戦を開始する。失敗は許されんぞ!」


「「「はっ!」」」



ーー同じ頃、ロッヂ公爵家邸


「これから行動を開始する。すぐにエーザ公爵邸に攻め入り、閣下を

 幽閉する。ただし、ガリア侯爵家は待機だ。」


「「「はっ」」」


「すぐに攻め入るぞ!革新派の連中が対応できぬうちにだ!!」


「「「おー!」」」


まあ、もうバレているのだが。



ーー5分後、エーザ公爵邸


「申し上げます。エルデン伯爵が面会を希望しています。」


「通せ。」


「はっ」



「それで、伯爵殿。何のようだ。」


「まもなく、保守派の連中が貴方を捕えに来ます。」


「は?」


「奴らは貴方を幽閉し、我ら革新派を討とうとしているのです。

 ですので、我々が閣下をお守りしますので兵を使う許可を。」


「良かろう。頼むぞ。」


「はっ」



ーー5分後


「かかれー!」


「「「おー!」」」


「待て!保守派の者につく兵たちよ、お主らは謀反人だ!!

 今すぐに投降すればお主らは不問とする。

 ただし、少しでも抵抗すれば殺す。」


「「「ひぃっ!」」」


「分かったなら早く投降せよ。」


一部の兵士が武器を捨ててこちらに向かってきた。


「「「降伏しますのでどうかお慈悲を。」」」


「仕方ない。そこに固まっておけ。」


「「「ありがとうございます。」」」


しかし、奴らがそれを見逃す訳がない。


「放てー!」


一斉に降伏した兵のもとへ飛んでいく。

一部の兵士は避けられたが、殆どの兵士は避けきれず当たってしまった。


「うわぁぁ!」


「お前らは下がってろ!弓隊、放て!!」


こちら側からも矢が放たれる。


「進め!白兵戦だ!!」


「「「おー!」」」


槍を持った歩兵がまず突っ込み、次に騎兵。

双方入り乱れ、乱戦になっている。


「うぉぉぉっ!」


ん?何だあいつ。あの鎧は確か、ウィヴァル伯爵家の騎士だな。

そういえばウィヴァル伯爵家の騎士団には『ウィヴァルの四天王』と

言われた4人の騎士がいたはずだ。


そのうちの1人か。

まさか、一騎討ちでもしようというのか。

ここで逃げたら末代までの恥だ。


「俺はウィヴァル伯爵家第2騎士団所属、『熱血のグラン』グラン・ピージだ!

 貴公が大将のエルデン伯爵閣下だな。一騎討ちを希望する!!」


名乗ってきた。あの2つ名、やはり『ウィヴァルの四天王』の1人か。


『熱血のグラン』こと、グラン・ピージ。

その2つ名が表す通り、明るくポジティブな性格。

戦うことが好きで、曲がったことが嫌い。武具好きでもある。

彼の獲物は日本刀で、彼の性格を象徴するような直刃の刃文と

重厚な見た目の物で、柄の白の糸と赤く染めた鮫皮も彼らしい。


「そうだ!俺がフリント・エルデンだ!!

 その勝負、受けて立つ!」


「「いざ、尋常に勝負!」」


2人の声が重なる。

そして、兵たちは戦いを一旦止め2人に注目する。


一騎討ちが、始まった。

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