第60話 奸臣と忠臣(1)

ーーサリサ共和国某所、貴族屋敷


「エーザ公爵閣下は精神を病みかけている。これは絶好の機会だ。」


中年の厳つい貴族−ヴィクト・ロッヂ公爵が話す。


「明後日、我らは挙兵する。閣下はまともな判断ができない。

 我らは閣下の保護という名目で兵を挙げる。あの奸臣共から

 閣下を守るためだといえば我らは官軍だ。民衆も官軍には逆らえまい。

 義は我らにあり!!」


「「「おー!」」」



「それでは、計画を話し合うぞ。まず、ガリア侯爵。」


「我が方の兵数は、ロッヂ公爵家、ガリア侯爵家、スジャー伯爵家、

 ウィヴァル伯爵家など10家。さらにガイウス大公国軍の合計で

 約2万5000です。」


「そうか。次に、敵方の兵数はどうだ?」


「恐らくサリサ共和国軍は兵を出さないでしょう。革新派の連中の兵が

 合計で約1万5000程かと。」


「分かった。当日の計画だが、日の出を合図に行動を開始。

 エーザ公爵邸を包囲し、閣下を公爵邸に幽閉。

 次に革新派の奴らの屋敷に攻め入る。最悪殺しても良いが、できれば

 生け捕りにせよ。その後は奴らの領地にも攻め入れ。抵抗された場合は

 滅ぼしても構わん。」


「「「はっ」」」


「くれぐれもミスのないよう心して取り組むように。失敗は許されませんぞ!」


「「「はっ!」」」


「・・・」


しかし、この部屋の天井に小さな穴が空いていることに気付く者はいなかった。



ーーその後


「そのようなことがあったのか。ご苦労であった。下がれ。」


「はっ」


革新派筆頭であるエルデン伯爵に保守派が挙兵を

企んでいるという報告があった。


「だそうだ。どう思う。」


「皆様を呼ばれるべきかと。」


「よし。皆を呼べ。」


「はっ」



ーー30分後


「全員集まったようですぞ。」


「そうか。

 今回は皆に急ぎで伝えたいことがあって呼んだ!」


部屋の中にいる貴族達がざわつき始めた。


「静粛に。保守派の連中が明後日、挙兵するそうだ。」


「何だと!?」

「やっぱり何か企んでたか・・・」

「これだからあいつらは信用ならん。」


またざわついた。


「お静かに。その対策を話し合うために皆さんを呼んだのですから。

 まず、奴らの計画をお話しします。」


伯爵の口によって説明された。


「以上が奴らの計画です。我々としてはすぐにでも兵を出して謀反の疑いで

 捕えたいところですが流石に証拠がないと。」


「では、挙兵するところを仕留めれば良いのでは。」


「いえ。奴らのことです。そこは対策されています。」


「ならば保守派の誰かを唆して明日に決行させますか。」


「それでいこう。問題は誰を唆すか・・・」


「無論、ロッヂ公爵の重臣を唆すべきでしょう。」


「まあ、そうなるよな。バレないうちにはやくやってしまった方が良いと

 重臣が言えば流石に考えるだろう。」


「それと実際に行動を起こすかは別問題ですけどね。」


「それに、万が一他の奴らが動かなかったらロッヂ公爵と家臣の

 乱心とされかねません。」


「そしたら保守派の一掃はできない。」


「だからといって強行する訳にも行きませんし・・・」


「そうだ!向こうにスパイを送り込んで資料を盗ませよう。」


「良いとは思いますが、万が一なかったり奴らにバレたら・・・」


「心配性だな。その時は別の対応をとるだけだ。」


「はぁ・・・ しっかりしてくださいよ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る