第54話 陰謀と謀反人(1)

ーーグロッセ子爵家


「ジャイライド、兵の数は?」


「リーランド侯爵家の兵も合わせて5,000弱です。」


「そうか。勝てるかどうかは不安な数だな。」


「はい。リージア辺境伯家は協力してくれそうにないですし。」


「ああ。その事なんだか・・・」


「えぇっ?! それは本当ですか!?」


「本当だ。リージア辺境伯家は今は御家騒動の最中でな。

 我らに加担しようとする急進派と帝国にこれまで通り仕えようと

 主張する保守派が争い始めてな・・・」


「そうですか。」


「結局、保守派が勝ってカーペ殿と急進派を追い出しのだが、

 カーペ殿と急進派の連中が一部の兵を連れて来てくれるそうだ。」


「何と・・・」


「明日の午前中には到着される。準備を急げ。

 ただし、国には気付かれないようにな。」


「はい。」



ーー翌日


「久しぶりですな。」


「はい。今回は頼みますぞ。」


「ささ、こちらへ。」


「ああ。」


軍議が始まった。


「今回の我々の兵は約5,000。サリサ共和国の兵は約7,500です。

 並びに、既に我らに内通している者の兵は3,500。合計で1万6,000です。」


「サリサ共和国軍の到着は明後日です。

 それまでに準備を整えます。」


「目標はブルーイン帝国帝都。今回は参勤が表向きの理由だ。

 エルライド殿は精鋭部隊20人と共に陛下に謁見。

 ジャイライド殿は歩兵80人と共に護衛役として待機。

 サリサ共和国軍は後から来る。俺と他の者は軍務局にて待機。

 既に軍務次卿殿と第2騎士団、第3騎士団がこちらに内通している。」


「分かった。謁見が終わった直後に陛下を討つ。そしたら一気に脱出する。

 それを合図に攻め入れ。サリサ共和国軍は後詰だ。」


「「「はっ」」」



ーー翌々日


「グロッセ子爵家嫡男のエルライド・グロッセ殿です。」


「長旅、御苦労であった。申したいことがあれば申せ。」


「特にありません。」


「そうか。ゆっくりして行け。」


「はっ ・・・ 陛下、覚悟!」


「くそっ!黙って殺されるくらいなら貴様も殺す!!」


「ぐっ!」


皇帝一家に伝わる宝剣『聖帝の一撃』がエルライドの左肩に突き刺さる。

しかし、皇帝であるリコーン帝の左腕にも切り傷が刻まれる。


「我が子爵家伝統の突きを喰らえ!」


エルライドは回転突きを放ち、剣を刺すとそのまま回転を続け

上に剣を振り上げた。


「ゴハッ!

 くっ・・・ しかしまだ負けぬ!!」


「化け物か!?」


リコーン帝は一気に距離を詰め、剣で薙ぎ払った。


「陛下を守れー!」


「くそっ!!」


ブルーイン帝国軍が突入した。


「そうはさせるかー!」


反乱軍も突撃した。



ーー2時間後


反乱軍が撤退したことで帝都での戦いは終わった。

しかし、帝都の惨状は酷いものであった。

建物には矢が突き刺さっていたり、ボロボロになっていた。

所々には兵の死体もある。



ーー反乱軍


「帝都の占領には失敗したが、明後日には帝国西部や南部を攻める。

 明日はしっかりと休息をとるように!」


「「「はっ」」」



ーーその頃、帝都では


「急げ!モタモタするな!!」


「はい!」


こちらでは負傷者の治療や死者の埋葬などが行われていた。

軽傷や無傷の兵は作業を手早く進めていた。


「いてて・・・」


「しかし、陛下がやられなくて良かったです。」


リコーン帝の傷は右腕の捻挫、左腕に切り傷が2箇所、

その他切り傷や擦り傷などの怪我が3箇所だった。


ちなみに、エルライド・グロッセの傷は

・左肩に切り傷。少し深め。

・右腕に浅い切り傷。×4

・右肩の打撲

                  であった。


この戦で、サリサ共和国軍は帝都の端で様子を見ていたが、

戦況が不利になったのを見て一瞬で撤退したらしい。

そのため、怪我人も0だった。(当然)

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