第43話 2つの同盟の駆け引き(9)

「退がれ!」


王たちの脱出に気付いた男爵らは本陣に敵を引き寄せつつ、少しづつ戦場から

離脱していった。


「何のつもりだ!」


ゴンディー・オブ・パリサ帝国の重騎兵が叫ぶ。


「王が逃げ出したんだよ!!」


「そうか。では手を組もう。」


「は⁈どういうことだ!さては我々を騙す気だな!」


「そんなことは無い。お前らは裏切った王が憎い。こちらはそちらの国を

 滅ぼしたい。利害は一致するぞ?」


「くっ・・・ 仕方無い。手を組もう。」


「話に乗ってくれてありがとう。私はゴンディー・オブ・パリサ帝国の

 第3重騎兵隊の者だ。ついてきてくれ。案内する。」


「ああ。頼む。」



ーー10分後


「着いたぞ。ここが本陣だ。男爵殿と護衛の方は中へ。

 他の方はここでお待ちください。」


「分かった。」



「隊長!連れて参りました。」


「ご苦労。下がれ。」


「はっ」


本陣の中央で椅子に座っていたのは30代前半の若い男だった。


「突然すみません。うちの陛下の提案でして。そちらの席に座ってください。」


「分かりました。」

礼儀正しいな。そう思いつつ男爵が椅子に座ると男は喋り始めた。


「あなた方のご協力に感謝する。まず、手を組んでくださるというのは

 本当ですね?」


「ああ。」


「分かりました。ではオウニラ王国の王を倒したらあなたはどうしたいですか?

 オウニラ王国の王となり、同盟国になるか、オウニラ王国は滅ぼして己は

 貴族として領主になりますか?それとも・・・」


「私の願いは腐りきった今の王家を打倒し、民衆にも貴族にも全国民に

 信頼される国にすることです。」


「では、オウニラ王国は我が同盟国となり対等な関係と

 するということですか?」


「そうだ。今の王家を打倒し、政府を作り変える。そして私は王に即位するが、

 民衆の意見も取り入れながらまつりごとを行う。」


「そうですか。では、早速ですが陛下に伝えてきます。」


「頼む。」



ーー20分後


「許可が降りました。」


「ありがとうございます。ちなみに今の王家は

 どうしましょうか?」


「それは貴方の自由ですよ。処刑しても、ただの貴族にしても、庶民にしても

 我々は文句を言いません。」


「そうですか。」


「では、追いかけましょう。」


「はい。」



ーーその頃、オウニラ王国の王と近臣達は


「急げ!野盗に襲われたら碌なことにならんぞ!!」


あと30分程で国境だが、どの国でも野盗が出ることがある。

それも、白昼堂々と。


特に、王が佩いている剣には見事な彫刻がされている。

蛇や龍、唐草模様の美しい彫刻が。


つまり、絶好の獲物であった。


「急げ!国境まで行けば我が国の関所がある。

 そこで休憩だ!!」


「「「はっ」」」

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