第26話 屍の街道(1)

ーー翌日


「それでは、グレイング・オブ・ロアー王国とゴンディー・オブ・パリサ帝国の

 連合軍による遠征を開始する!ゴンディー・オブ・パリサ・帝国の残りの

 兵で出陣する者達は別働隊として別の方角から侵攻を明日から

 始める。我らは先鋒隊としてサリサ王国北部の街道から攻め込む。

 ・・・出立‼︎」


大量の兵が南へ進んでいく。


ーー3時間後


「皆、よく見ろ。ここが国境だ。

 ここから先は敵の国だ。決して油断するな。

 今回はこの街道を通る。途中に宿場町がある。

 その際、おとなしく降伏すれば許し、武力で抵抗した場合は降伏するまでは

 戦う。覚えておけ。行くぞ!」



ーーその頃、街道沿いの宿場町では


「もうすぐ敵が攻めてくる。我らは徹底抗戦するぞ。

 皆、準備を怠らないようにな!」


町長らしき中年の男が住民に呼びかけている。

どうやら住民からの信頼も厚いようだ。


「ああ。敵なんぞ返り討ちにしてくれる!」


「「「その通りだ!」」」


「うむ。しっかり頼みますぞ。」


「代官殿。敵に屈することのないよう総力を挙げて戦います。」


「心強いな。頑張ってくれ。私は騎士団に指揮を出すから

 あなたは住民達のことをよろしく頼んだぞ。」


「はっ」


しかし、この選択が後に起こる悲惨な出来事の引き金であったということは

町長や代官を含め、住民や騎士達は気づかなかった。


ーー1時間後


「敵襲!敵襲!」


敵襲を知らせる半鐘が町中に響き渡る。


「敵だー!敵が攻めてきたぞ!」


町長が叫ぶ。


次第に馬の蹄の音が近づいてくる。


「弓を構えろ!」


代官が2階建ての平屋の商店の屋根に土嚢を置き、その後ろに隠れている兵士に

声をかける。


「「「はい!」」」


若い男3人が返事をし、集中して弓を構える。


「かかれー!」


ついに敵の連合軍が攻めてきたな。


矢を番え、いつでも撃てるようにしておく。


「放て!」


代官の声で一気に矢が放たれた。


「進めー!」


それでも連合軍は進んでくる。


「全員切り捨てろ!」


次々と住民や騎士が斬られていく。


「ひいっ!来るな!来るな!」


しかし、必死の命乞いも虚しく町長の首が飛んだ。


「うわあぁぁ!止めろ!」


『神龍隊』の指揮官が代官に迫る。


「前の戦いでそちらの国には恥をかかされたからな。

 だからまだ殺さない。帝国に連れて行き、色々と尋問させてもらうからな。」


「くっ」


「連れて行け。」


「はっ」


代官は兵士に引きずられて行った。

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