第21話 サリサ王国とオウニラ王国(1)

ーーゴンディー・オブ・パリサ帝国にて


「申し上げます!『神龍隊』が要塞のうちの一つを落としたようです‼︎」


「「おおっ!」」


「うむ。ご苦労であった。

 ただ、『神龍隊』には一旦こちらに戻ってきてもらう。」


「何故でしょうか?」


「阿呆か!通常の軍隊が守る要塞を落とすだけなのに時間が

 かかりすぎだろう!何かミスがあったのだろう。

 すぐに呼び戻せ!」


「はっ」



この皇帝の予想は大当たりで2日後、『神龍隊』の総司令官は

呼び戻された後、何があったかを話すと1週間の謹慎を言い渡された。



ーーサリサ王国では


「何ということだ‼︎」


「陛下。これに関しては敵が『神龍隊』を出陣させた時点でこうなるのは

 目に見えていたでしょう。そもそも奇襲をかけられても死者が

 出なかったのはかなり幸運です。運が悪ければ全滅していた

 可能性もありましたよ!」


「そうだな・・・

 国境付近の防衛戦はこれから一層激しさを増すな・・・」


「伏兵や地形を駆使して必ず勝たねばなりません。」


「うむ。

 今は西側の国境付近が手薄だ。あの辺りには森がある。

 伏兵を忍ばせておこう。」


「それが良いかと。」


「東側はどうされますか?」


「確か東側には中立国がありましたな。

 オウニラ王国という国が。」


「そういえばそんな名前の国があったな。

 そうだ。その国と同盟を結めば良いではないか。」


「ただ・・・中立国なので向こうの反応は分かりません。」


「その可能性に賭けるのだよ。もし交渉が決裂しても

 こちらに損害はほぼ無い。同盟を結べたら味方が増えて好都合。

 良いではないか。」


「そうですな・・・では使者を送りますか。」


「せっかくですし手土産でも持っていかせましょう。」


「何が良いと思う。」


「彼の国は内陸国で海が無い。海産物がよろしいかと。」


「うむ。ただそれだけでは少々足りないだろうな。」


「では工芸品が良いと思います!」


「うむ。工芸品は外交においてはよく使われるからな。」


「何が良いのでしょう・・・」


「この国は彫刻の技術が発達しておる。

 彫刻の施された武具や調度品が良いと思います。」


「そうだな。すぐに宮廷お抱え彫刻家に頼もう。」


「畏まりました。」


サリサ王国の命運をかけた同盟交渉が始まる。

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