第7話 ブルーイン帝国で起きたクーデター(3)

『ローチラン派』の起こしたクーデターの初戦は『ザシス派』の圧勝で

終わった。



『ローチラン派』の軍は総崩れになり、ユズーン台地から北西の方向へ

逃げていった。


『ザシス派』の軍は兵糧不足の為、一度帝都へ引き返した。



2時間後、帝都にて


「「「反乱軍を倒した英雄の凱旋だ‼︎」」」


「「「『ザシス派』万歳‼︎」」」


「「「皇帝陛下万歳‼︎」」」



帝都に戻ってきた『ザシス派』の兵士達を帝都に入ってすぐの所で民衆達が

歓声をあげ、喜んでいた。


何故なら、『ザシス派』は商業や農業、工業を重視し、

領土の拡張は一旦後にし、まずは国内をより発展させることが大事だと主張していた。


それに対して『ローチラン派』は従来以上に軍事を重視し、領土を広げて

ブルーイン帝国の名を世界に轟かせ、戦争で手に入る労働力や資源、財産を

もう少し手に入れてからにすべきと主張していた。



つまり、圧倒的に『ザシス派』の方が民衆の支持を得ているという事だ。


民衆にとっては軍国主義に近い主張をしている(『ローチラン派』の主張は

決して軍国主義と同じものではなく、武力で力をアピールし領土を広げつつ

国内を発展させるというものである)『ローチラン派』よりも

より民衆の事を考えてくれる『ザシス派』の方が都合がいいからである。




同じ頃、リージア辺境伯家の領都、リーゴンでは・・・


「くそっ‼︎ 地の利はこちらが得ていたのに・・・」


「何故だっ‼︎」


『ローチラン派』の貴族達の声が響く。


「まあまあ、皆様落ち着いて・・・

 次の策を考えねば・・・」


少しオロオロしつつ言うのはグロッセ子爵家当主のエルヂ・グロッセだ。


「グロッセ子爵、では何か案があるのか。」

ようやく落ち着いた『ローチラン派』の筆頭、ナマソ・ローチラン公爵が

問いかける。


「防戦一方でもキリがありません。騎馬隊を率いて他の貴族の領地を

 攻め落とし、帝国の東側を占領し、可能であれば帝都を攻めるべきと存じます。

 帝都を攻め落とすのが困難な場合はいっその事独立してしまいましょう。」


「しかし、独立したとして指導者はどうするのだ。」


「指導者には第2王子のイヴァイ殿下を擁立しましょう。

 ただし、実権はこちらがある程度握らねばなりませぬ。」


「ではグロッセ子爵の仰る通り東部を攻めようぞ。」


「「「ははっっ‼︎」」」




翌日、圧倒的な武力で周りの貴族の領都を攻め落とし、帝国東部の4割を

その日のうちに占領した。


そして1週間後、帝国東部のほとんどを『ローチラン派』が占領した。


そこからさらに5日後、ブルーイン帝国第2王子を擁立し、

『大東ブルーイン帝国』が創られた。


それにより、ブルーイン帝国は領土の4割を『ローチラン派』改め

『大東ブルーイン帝国』に奪われてしまったのであった。

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