第5話 ブルーイン帝国で起きたクーデター(1)


『ローチラン派』挙兵。


 その知らせは挙兵から40分でブルーイン帝国の皇帝である

 リコーン・ブルーイン 通称『リコーン帝』の耳に入った。


「どうりでイヴァイがいないと思ったら そんな事だったか・・・」


 リコーン帝は妙に冷静だ。


「陛下・・・ 最初からイヴァイ殿下を怪しんでおられたのですか?」


 側仕えの家臣が質問する。


「ああ。まさかな とは思っていたが本当だったようだ。」


「そうですか・・・」

「すぐに兵を出しますか?」


「ああ。そうしてくれ。」


「はっ。」




 同じ頃、ブルーイン帝国東部のユズーン台地にて

「ローチラン公、我が軍は『ローチラン派』の各貴族の兵、第3・第4騎士団

 総合計1万2000。対する皇帝・『ザシス派』がすぐに動員できる兵は

 約2万です。」


 カーペ・リージア辺境伯家長男(嫡男)が言う。彼は齢24。

 今回で戦は2回目であまり慣れてはいない。


「では、このユズーン台地に陣取り敵を迎え撃つのが良いと思われます。」


 クヘン・リーランド侯爵が提案する。


「そうだな。どのような陣形が良いだろうか。」


 ナマソが言う。


「はい。迎え撃つ位置には弓隊を鶴翼の陣で配置し、第1陣を崩壊させ、

 その後、後ろに第4騎士団による車掛の陣の特攻隊を編成し、第2陣に

 対し弓隊で攻撃を加えたあと出撃、トドメを刺す。

 この繰り返しで良いと思います。」


 戦に慣れたクヘンは言う。


「分かった。ではそれでいこう。」



 1時間30分後


「かかれっっっ‼︎」


『ザシス派』の指揮官が叫ぶ。


「構えっっっ‼︎」


『ローチラン派』の指揮官が叫ぶ。


「放てぇっっっ‼︎」


『ローチラン派』の軍から矢が大量に放たれる。

 まともに矢を喰らった『ザシス派』の騎士達は次々に落馬し、倒れる。


「『ザシス派』の第1陣を壊滅させたぞ‼︎」


 指揮官の声で『ローチラン派』の軍達の士気が上がる。

 同時に総大将のナマソの元にもその話が伝わる。



 その頃『ザシス派』の陣では


「くそっっっ‼︎これでは反乱軍の陣に攻め入れない‼︎」


『ザシス派』の指揮官が苛立ちながら叫ぶ。


「では、別働隊を回り込ませますか?」


「それは名案だ‼︎」


 部下の言葉に嬉々として応じる。


 いや そんなことも思いつかないのかよという心の声を封じながら

 部下が頷く。


「では、すぐに始めます。」


「うむ。」


『ザシス派』の筆頭であるシュタール・ザシス公爵が団長を務める

第2騎士団による別働隊が進軍を開始する。

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