第4話 ブルーイン帝国の権力闘争

ブルーイン帝国では、


領土の増加よりも国内の安定と発展を図る『ザシス派』


軍事を従来以上に重視し、領土の拡張を図る『ローチラン派』



この2つの派閥は真っ向から対立しており、特に『ローチラン派』は

『ザシス派』を蹴落としてしまおうと画策している。



『ローチラン派』による話し合いが終わり、自室に戻った

ナマソ・ローチラン公爵は綿密に『ザシス派』を蹴落とす為の

計画を立てていた。


「まずはイリア・スタンの件を陛下に伝える。次に・・・」


念入りに羊皮紙に計画を綴っていく。



3時間後、

ある程度計画が纏まったようだ。



その内容は、


まずブルーイン帝国の皇帝であるリコーン・ブルーインにイリア・スタンの

件を報告し、調査をすべきと進言する。その裏でナマソ自身が

団長を務める第3騎士団、同じ『ローチラン派』に属する

クヘン・リーランド侯爵が団長を務める第4騎士団に戦闘用意を命じる。

その後、調査結果がイリア・スタンに謀反の疑いありとなった場合は

戦闘用意を解除し、イリア・スタンに対し謀反の疑いなしとの結果が

出た場合は自分達と同じく軍事を重視し、領土の拡張を主張していて

裏で『ローチラン派』を支援している第2王子で軍務卿の

イヴァイ・ブルーインを次期皇帝として担ぎ上げ、第3、第4騎士団を

率いてクーデターを起こし、『ザシス派』の者達と第1王子で帝位継承者の

イエグ・ブルーインを殺害し、皇帝であるリコーン・ブルーインを

捕らえて実権を握りイヴァイ・ブルーインを次期皇帝とする。



という壮大なものだった。



翌日、ナマソはリコーン帝に計画通りクヘンとの連名で

イリア・スタンの件を報告し、調査をすべきと進言した。


「あのイリアがそのようなことをするとは思わんが・・・

 とりあえず調査はしよう。」


まんまと嵌まった。そう思ったナマソの考えは

まだ甘かったようだ。


その1週間後、調査結果が出た。


報告によると


ナマソ・ローチラン公爵の話したことは事実だったが、

イリア・スタン侯爵次男に謀反の疑いはなし。

とのことだった。


「くそ‼︎ 上手くいったと思ったのに・・・」


「すぐに第3・第4騎士団に触れを出せ‼︎ すぐに出陣できるようにするようにと

 命じよ‼︎」

「『ローチラン派』の全貴族に早馬を出せ‼︎

 『これより兵を挙げる‼︎ すぐに出陣するように‼︎』とすぐに伝えよ‼︎」

「第2王子で軍務卿のイヴァイ・ブルーイン殿下にも伝えよ‼︎

 『これより我らは兵を挙げる。殿下も戦支度をして第3騎士団の駐屯地に

  いらっしゃるように』とすぐに伝えよ‼︎」


焦りながらも的確に家臣に命じる。

その姿はクーデターを起こした事以外は尊敬すべき指揮官の姿であった。

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