第14話 帰還

 言っちゃった、言っちゃった。沙川くん、来てくれるって。嬉しいな。何度も沙川くんの言葉をリフレインさせる。5人でわいわいしながら真っ直ぐな道を歩いていると、突然“それ”が私に話しかけてきた。

「いいもの見させてもらったよ。楽しかった」

「なに、それ。高みから見物して楽しいだなんて。見世物じゃないのよ。待って……楽しかったって」

「こっちでの資源回収もうまい具合に進んでいてね。君たちをずっとこちらにいさせるわけにもいかないから、帰すことにした」

 とん、という軽い衝撃。気がつくと、私達は同じ道にいながら、元の世界に帰ってきたようだった。なぜなら、周りに人がいたから。

「あれ……」

「戻ってきた!?」

 顔を見合わせ、歓声を上げた。

「よかった〜!」

「……携帯繋がるようになってる!」

「さなちゃん、なんか言われた?」

「うん、帰すって。楽しかったって」

「なんだよそれ」

 沙川くんが笑ってる。

「はぁ〜、久々のシャバの空気だよ」

「罪人みたいじゃん」

 東雲くんが吹き出した。沙川くんと東雲くん、やっぱり最初より仲良くなってる。微笑ましい気持ちだった。

 飯田さんがすうっと私のそばに寄ってきて囁いた。

「私、気づいたことがあるの。あの世界に行って、みんな自分の気持ちに気づいてさ、伝えられた人もいたじゃん。そのために、私達あの世界に行ったのかなって」

「……そうかもしれないね」

 生命体は娯楽みたいに見てたのかもしれないけど。でも私達だってすごく楽しかったし、なんだか素直な気持ちを、抵抗なく伝えられるようになっている気がした。それだけで、あの世界に行った甲斐はあったと思う。

「香川、これでよかったか」

 東雲くんが香川くんに訊いていた。香川くんは頷いた。

「うん。……みんなのいる世界なら、僕は生きていける」

 それから、東雲くんに何かを囁いていた。その言葉は分からなかったけど、二人が幸せそうに笑い合っていたから、こっちまでなんだか嬉しくなった。

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