第12話 失恋

 はぁ〜〜〜、どうしよ、見ちゃった。東雲が香川に告白してるとこ。正直ショックだったけど、そうかもな、って予感はしてたから、そんなにダメージは受けていない。……うそ、めっちゃ受けてる。悲しい。あーあ。失恋しちゃった。好きだったな、東雲のこと。冷静で、優しくて。飄々と生きてるふりして、ほんとは熱くて……やば、涙出てきた。

 膝を抱えて座って、ハンカチで涙を拭いていると、沙川がやってきた。

「まみちゃ〜ん……って、どうしたの!?」

「ううん、なんでもない」

「なんでもないことないでしょ……」

 隣に座る沙川。何も言わずにただ横にいてくれた。

「……俺さ、まみちゃんのことが好きだよ」

 やがてぽつりとそう沙川が言う。

「まみちゃんが東雲のこと好きなのは知ってたけど」

「え……あ、そうなの?」

 ハンカチに涙が落ちていく。そのふつっとした振動を膝に感じていた。

「俺、力になるよ」

「……ありがとう」

 ハンカチを畳む。しみが隠れるように。

「……ごめんね、東雲のこと忘れられない。だから、君の気持ちはごめん……受け入れられない」

「うん、そうだと思う」

 沙川は少し目を伏せて、それでもずっと側にいてくれた。優しい人だ。分かってたけどね。残酷なことしてるな、私。

「沙川……さなちゃんといっぱい話してあげて」

「相上さん? どうして?」

「いい子だから」

 沙川は遠くの方を見るような目をしていた。

「確かに、相上さんいい子だよな」

「うん。真面目で可愛い」

 沙川は私の頭を撫でた。私はされるがままになっていた。

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