第7話 後片付け
ガチャリと玄関が開く音がした。
「おかえり〜二人とも!夜道大丈夫だった〜?」
「不審者どころか人間すらいない」
そうジョークを飛ばしつつ、東雲がレジ袋をどさりと食卓に置いた。やった〜!たこ焼き食べれる!
手早く粉を出し、水で溶く。その間にたこ焼き器を温める。
「さすが野球部マネージャー、俺らにも手伝わせて」
沙川がそう言ったので、
「じゃあたこ焼きひっくり返すのみんなでやろうね!」
と言いつつ、液体を流し入れ、葱や生姜、たこを入れていく。
「ほとんどやったやん」
「こういう性分なんだよな〜、あはは」
「……憧れます、気が利く人に」
「さなちんも利くよ〜」
器の端がめくれだして、そろそろだな。
「みんな〜、ころころしていいよ〜!」
みんな真剣な顔してひっくり返してる。ふふ。
「はぁ〜、食った食った」
沙川がお腹をさすってる。東雲はたこ焼き器の鉄板を流しに置きながら私に言った。
「ありがとう、飯田。おかげでみんな食べるのに集中できた」
「いいよ、私こういうのやっちゃうほうだし」
「気遣い屋なんだね、飯田は」
にこりと微笑む東雲。はぁ〜、嬉しい。ぎゅんっってする。
「東雲、はさ、」
「ん?」
話しかけたところで、香川が東雲に話しかけた。
「洗い物? 僕がするよ」
「え、いいよ、香川」
「ううん、座ってて、東雲」
なんだかいつもの香川じゃないみたい。こんな積極的な子だっけ。何かあったのかな。
何故か心が沈んだ。どうしてか分からなかった。私、あんまり自分の気持ちが分からないことなんてないんだけど。どうして分からないんだろ……。
「飯田、何か言いかけてなかった?」
「え、あ、ううん、大丈夫」
楽しそうに話してる香川と東雲。なんか分かった気がする。私、二人が仲良しなのが気に入らないんだ。なんて醜い気持ちなんだろう。東雲が他の人と親しそうにしてるのが嫌だなんて。それって束縛じゃん。私、そういう気持ちにはならないと思ってたな。
「まみちゃん、どったの? 一緒にWiiやろうぜ!」
沙川が手招きしてる。
「……うん!」
気持ちを切り替えて沙川やさなちゃんの待ってるところに歩いていった。自分の気持ちは、後で整理しようと思った。
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