第3話 side沙川
ちぇ〜〜〜、まみちゃん、絶対東雲のこと好きじゃん。いきなり失恋したわ。可愛い顔で東雲を見てるまみちゃん推せるな〜。傷ついたけど。これはここだけの話。
朝起きて、1年1組の教室に集まる。来てすぐにまみちゃんをさりげなく見る。今日も元気そう。よかった。っていうのが毎日のルーティン。まぁ失恋したけどやめる予定はない。体調も見れるし。
最近は勉強会をいかにゲーム大会にするかに血筋を上げている。東雲が指定した範囲まで勉強をすすめて、なんとなく空気が弛緩したところで「じゃあ休憩がてらトランプしようぜ!」って言えばもうこっちのもの。東雲はやれやれみたいな表情でこっちを見るけど、場の空気を持っていったので、もう怖いものはない。まみちゃんも勉強嫌いらしいからすぐ俺に乗ってくる。相上さんも笑って「いいですね」なんて言ってくれる。意外にも、香川も反対しない。そんな感じで、日が落ちるまでゲームに興じる。この日もそんな感じだった。
なんとなく家に帰るのが億劫になって、学校に泊まった。慣れ親しんだ陸上部の部室で、マットレスを敷いてその上に寝転がり、家から持ってきた漫画を読んでいた。すると、遠くでボソボソと話し声が聞こえる。4人はもう帰ったはずだ。まさか、こっちに移動してきた他の人間がいるのか? 俺は声の主を暴くため、部室を静かに抜け出した。声はどうやら校舎裏の花壇の方からしているらしい。すり足で近くまで行く。校舎の影から覗くと、長い髪の後ろ姿があった。あれは……。
「相上さん?」
途端に、影がぴくんと震えた。振り返ったその人は、まさに彼女だった。
「え、帰ってたんじゃなかったの? どうして……」
「沙川くん、ごめんなさい!」
突然謝られた。なんだなんだ?
「私、みんながここに来ることになった理由を知ってるんです……」
泣きじゃくる相上さん。わわ、俺が泣かせたみたいじゃん。
「泣かなくていいよ、相上さん。話すのは落ち着いてからでいいからさ」
花壇に座ってうぇっうぇっとしゃくりあげていたけど、段々落ち着いてきたみたい。
「で……この世界に、なんで俺たち飛ばされたの? それか、俺たち以外が滅んじゃったとか?」
「……私達が集まっていたこの花壇の地下で、次元転移装置が作動したらしいんです。私達、それに巻き込まれちゃったみたいで……。それを使った生命体が、何故か私が一番話しやすそうだったからって理由で私にコンタクトを取ってきて……手違いだったから戻そうと思ったんだけど、面白いからまだ帰さないとか言うんです……仲間には言うなって」
「へぇ〜〜……なんか勝手な話だな」
「信じてくれますか!?」
「いや、相上さん、こんな時にふざけた冗談言う人じゃないでしょ。真面目な相上さんの言うことだもん、信じるよ」
「うぅ……よかった〜……」
「でもさ、俺には言っていいの?」
「反応ないからいいんだと思います……なんか色々面白がってる節があって……」
「はは、ムカつくな〜それ」
花壇をペシペシ叩く。
「おい、どっかの誰か。相上ばっかに責任負わすなよな。俺にも話しかけてみろよ」
シーン。無視しやがる。
「この話、みんなにしていい?」
「大丈夫です……肩の荷が降ります、ありがとうございます」
月の光に照らされた相上さんは、ほっとした顔をしていた。可愛い。まみちゃんにかまけてたから気がつかなかったけど、相上さんもいいよな。力になれたみたいでよかった。
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