第2話『チーズケーキ作り』

 プリンを食べ終えたゆうかは、夕飯の支度にとりかかる。プリンのカップをめぐがシンクで洗っているので、野菜を切るのはまだ早い。

「ねえめぐ、最近食べ過ぎじゃない? あご、たるんできてる」

 玉ねぎに切り込みを入れながら、めぐに尋ねる。

「あたしの体脂肪率知ってるの? 十八パーセント。そのあたしがたるむなんてありえないでしょ」

 めぐがタオルで手を拭き、首元をさわる。表情が曇る。

「ありている………。うそ………。首が………太い! ジム週四通いのあたしが! え、どうしよ、ゆーさん!」

 めぐが体を崩しながらゆうかに抱きつく。ゆうかが包丁を置いた。

「まあ、たるんでいってるのは誇張したかも。でも少し肉づきがよくなったというかね。とりあえず、私お菓子作るのしばらくやめるね」

「え、なんで!」

「やっぱりお菓子は太る。私たちもう三十歳超えたんだし、十代のときと同じような食べ方していたら、デブまっしぐら。お菓子やめればその分食費も浮くわけだし。なにしろ、めぐはモデル続けるためにお菓子をがまんするのは必要」

「えー」

 めぐが肩を落として、だだをこねた。



 翌朝。カーテンから漏れる光でゆうかは目を覚ます。

 手作りイチゴジャムを塗ったパンと、だし巻き卵を平らげて仕事着に着替える。

あとから起きてきためぐに「いってきます」と言って玄関を出た。

「いってらっしゃーい」

 めぐはぼさぼさの髪をかきながら、朝食が用意されたテーブルにつく。

「あれ? チーズケーキがない! いつもゆーさんが作ってくれているのに! ほんとにお菓子もうつくんないの? えー」

 めぐが机に顔を伏せた。

「じゃ、自分でつくっちゃおうかな」

 席をたち、台所へ向かった。 


 冷蔵庫を開き、手に取ったクリームチーズをコーナーに置く。

オーブンの電源を入れて、ダイヤルを一八〇度に設定する。予熱だ。

 ボウルを調理台に置き、クリームチーズをスプーンで落とす。

「チーズ投下~」

 トールキャビネットを開き、砂糖をすくう。そのままボウルの上に並行移動させる。

「砂糖も投下~。どーん」

 泡立て器で念入りに混ぜ、そこに溶き卵を注ぐ。

「卵もどーん」

 卵をかき混ぜて、色がやわらかい黄色になるまで手を回す。ブルガリアヨーグルトを横において、スプーンですくった。

「ヨーグルどーん」

 そこに薄力粉を茶こしでふるいながら、さらにすりまぜる。

 粉っぽさがなくなったら、クッキングシートを敷いた縦長の型に生地を流し込む。何度か縦に振動させて、トレーに容器を運んだ。お湯を容器の半分の高さまで来るようにトレーに注ぐ。

 予熱したオーブンに乗せた。冷蔵庫に入れて、朝食を済ませる。食器を全て洗い、容器を取り出した。

 食器に中身をだすと、きれいなチーズケーキがあらわれた。

「うわーお。いっただきまーす」

 スプーンでケーキを切り崩し、口に入れる。めぐは目を瞑って、体を震わせた。

「うますぎるー。やっぱり食べたくなっちゃうよね~」

 そう言って、あっという間に完食した。 

「このことは、ゆーさんにナイショ~」




つづく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る