二人目の主

私は、不老不死のごく普通のメイドです。


西暦1695年。私は、新たなご主人様にお仕えするようになりました。

ご主人様は当初私の名前の珍しさに感心された一方で、私の技量を少しばかり疑っておられました。

しかし、私が懸命に家事に勤しむ姿を見て、私を信用して下さいました。

さて、今度のご主人様は未婚の富豪の方です。

少々酒癖が悪いものの、普段はとてもお優しい方でした。


私がご主人様にお仕えして7年後。

ご主人様は、遂にご結婚なされました。

お相手は25歳、ご主人様の2つ年下の方です。

私は、お二人のご結婚を心からお祝いすると共に、お二人の末永い幸せを神に願いました。

ご結婚後も、ご主人様は私に愛想を尽かされる事なく、今まで通りに真摯に接して下さいました。

そして、奥様も同様でした。


そして1705年、お二人に第一子となるご令嬢が誕生しました。

ご主人様は、ご令嬢にネリと名付けられました。

その由来は私の名前だそうです。これを知ったとき、私はとても驚き、そして光栄に思いました。

ネリ様はすくすくと成長され、気づけば10歳を数えていました。

やがて私は、家庭教師代わりにネリ様に勉学を指導するようになりました。

ネリ様はご主人様に似て、とても勤勉で、理解の早い方でした。

私としても、事をお教えするのにストレスがさほどなく、何よりネリ様と沢山お話でき、また素敵な笑顔を見られるのが、とても楽しく、また、好きな事でした。


しかし…

1720年。

ネリ様は、恐ろしい流行り病である黒死病に罹患され亡くなってしまいました。

しかもそれはネリ様のみならず、ご主人様や奥様も…。


私は、黒死病には罹患しませんでした。

私が不老不死である故なのかはわかりませんが…。





私の二人目のご主人様は、流行り病に倒れました。

私は、善良な司祭様と共に祈り、生き続けました。



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