普通のメイドが不老不死になった結果
白水カトラ
本編
一人目の主
私は梨子(りね)、ごく普通のメイドです。
出身はごく一般的な家庭で、出身校は普通の学校です。
17歳の時に、この国の名門貴族で有らせられるご主人様にお仕えするようになりました。
それから五年。
ご主人様は私を、姉のように大切にして下さいます。
私は、早くしてご両親を亡くされたご主人様の心の傷を、私めが少しでも癒すことができればと思い、精一杯仕えて参りました。
今ではすっかり、今までの私は正しかった、ご主人様は私を受け入れて下さった、と感じております。
ある時、ご主人様はウロボロスの伝説というお話をされました。
それは、この世のどこかにいるウロボロスに噛まれると、不老不死になる事ができる…というものです。
ご主人様の提案で、私達はウロボロスを探し歩きました。
そして私とご主人様はある時、ついにウロボロスを見つけました。
ところが、ウロボロスは私とご主人様のどちらかしか不老不死にはしないと言いました。
結果、ご主人様は自身が不老不死になる事を拒否されました。
そして、私が不老不死となったのです。
「今さらですが、なぜウロボロスを探しておられたのですか?」
私は気になったのでお聞きしました。不老不死になりたい訳でもないのに、なぜウロボロスを探しておられたのでしょうか。
するとご主人様は、ただ珍しいものを見てみたかっただけだと仰いました。
そこで私は、もう一つお尋ねしました。
「不老不死にならなくてよかったのですか?」
するとご主人様は、自身は不老不死には無関心である旨を仰られました。
その後、私とご主人様は館へ帰り、穏やかに暮らしました。
18歳だったご主人様は月日の立つうち、どんどん成長していかれました。
私は、どれだけ月日が経とうとも22歳のままでした。
そして、ウロボロスを見つけてから100年後。
ご主人様は、老衰で亡くなられました。
私は、不老不死のごく普通のメイドです。
私の一人目の主人は亡くなりました。
私は、主人を変えて生き続けました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます