村でウダウダ

「しかし、まさかあなたが聖女シヴィルだったとは」


「あー、おまえ原始人とか言っとったなそいや憶えてんぞ」


グダグダ世間話をしながら破壊してしまった村長の家の跡片付けをしている。

なんか破壊された床下部から大量のウンコが流れ出てきて大パニック寸前じゃった。


なんでも排泄は床板を上げてそこにしてたらしい。

当然貴重な水をその度に手洗いや床磨きに使えるはずもない。

ヤバすぎだろ・・・


破材造語の板切れで穴を掘ってそこに精霊魔法ウォーターで臭いうんこやウンコ塗れになった家財建材を流し込んでゆく。


しかし穴掘りとか久々にやったわ。


スコップ代わりの板も大量に掬い上げた土砂も気持ち悪いくらい重さを感じないからめたくそ深く掘ってしまった。階段作らずともほん投げるだけでどんどん掻き出せちまうから上がれなくなるとか酸素無くて即死したとかいうレベルの深さになってあせった。


オギュたそもやりたそうだったが穴掘り騎士とかバカにされて無駄な殺生が増えるぞと因果を含め説法したら便秘になったヤツのようなカオになってて笑った。


妻か・・・あいつ名前なんだっけ?・・・ああ、萌だw


「あー、女のクセに穴掘ってるw穴掘り聖女だー!」


ガキがこっち指さして笑っている。


「女が穴を掘るのが可笑しい、とは・・・フッ、ガキのクセに一流の諧謔を理解しよる」


「なんだぁ?大人みたいな喋り方して生意気だぞ」


ちょっとワシより高いかな背丈。

頭を小突こうと伸ばしてくる手を十分に手加減して叩き、紙行燈を触るように頬をたたく。


「いってー!やったなぁ!」


フッ、そいや息子や娘にも手ほどきしたっけ。懐かしいのお・・・


数秒後、自分の手は悉く叩き落とされ、叩かれるばかりのジブンにとうとう癇癪を起したか、大泣きしながら全力で殴りかかってきた。


「その意気やヨシ!」


出鱈目に振り回される手を一打一打、丁寧に捌く。

もちろん捌くのと打ち込みはセット。

なぜならば喧嘩拳法とはどこの国でも世界的にそういうものだからなのです。


息を止めてはグルグルパンチ、大きく息をついてからまた止めてグルグルパンチ。


何回も繰り返すうちに手もただの大振りからコンパクトな突きに変わってゆき、こっちもウェ~ビィに上体で躱さざるを得なくなり始めたあたりでガキの息が完全に上がる。


「あ~~~疲れた、もう動けねえ」


ノド乾いた~、と座り込む。


「頑張ったな、まあ飲めや。アナタにウォーター☆」


手からじょぼぼ~と水を出してやる。


「うわ、もったいねえ!ガボボボボ・・・」


水が出てる指先に、まるで乳首を吸うようにしゃぶりついてくる。


うーん、ガキはやっぱかわいいの~~~~~


「おい、とめろよもったいねえ、もう飲めねえから!」


「ん、うまかったか?」


「ああ、こんなうめえ水初めてのんだ!」


めたくそいい笑顔で笑っている。


・・・ほんと子供は天使じゃのお。

魂とか前世の記憶とかワシの存在とか、そんなんが究極の悪に思えてくるわい。


「おまえここに住んでんのか?」


「ああ、しばらくいるからまた遊びこいやw」


「ん~、おまえつええし、もっと弱いやつんとこいくわ」


「ふーん、もったいないのう。三日も通えばお前以外全部弱い奴になるくらい強くなれるぞ?」


フイッ、とガキの頬に手を伸ばす。

流れるようにガキの手がワシのその手を打ち下ろし、空いた手を突き込んできた。


その手を掴み、立ち上がらせる。


「今のは良かった」


やっぱ子供は天才じゃわ。

目をまんまるに開いて自分の手を見るクソガキ。


その後数分軽く打ち合い、母親らしき女に耳をひっぱられ帰っていった。


「さって、と。息抜きも出来たし片づけ続けるかぁ?」


「面白き体術ですな」



黒ちん村長がマジマジとこっち見てた。

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