シーヴェル

「・・・ということがあったんですよ」


「なるほど、そこに神じゃなくてワシが憑依しちゃったっつーワケか」


「姿のみならず心根の清らかな娘でしてね、あのように魂が壊れたまま生きてゆかねばならぬのなら一思いに・・・と振るったのですが」


「ああ・・・ワシも天使に諭されたわい。ヤバい生き物にしかみえんかったろ、すまんかった」


しかし腐った弟なんか持って歩くかぁ?気持ち悪りぃ・・・

俺なら弟が腐ってたら絶対触らずに業者()に任せるわ。


あー、きもい女に憑依してしまったの~~~~



「なあ、ワシ、この体から出たほうがよくね?」


「しかし、魂が壊れていては…その後の生は地獄でしょう」


「心が壊れるてのは神とかタマシイとか、んなオカルトじゃないのよ。あんたボケ…痴呆老人の世話とかしたことない?」


「は、皆目」


横の女が進み出る。


「おっしゃりたい事は朧ながら察します。私は高位僧正にも侍りますので」


「おお~若いのに感心じゃのぉ。ボケた偉い人がスープのんでうめえつって死んだら”全てこれでよし!”つって拳銃自殺したことになったりするし気を付けた方がよいぞ絶対」


何をどう気を付けんのじゃよ・・・自分で言ってて意味不明すぎるわい。



「・・・して、シヴィルを呼び戻すこと能うのでしょうか」


ん?


「ああ、そうそう、そうじゃよ。やっぱ心聖き少女のカラダ奪うとかやっぱ善良にして精錬たる精神を持つ日本人として許せんよな絶対。人間の心なんつーのは機械と同じで脳の片隅に化学反応で電気的に動作する物理的な構造として組み上げられてんのよ。あ、コレは前世の脳科学(の資料を集めて描かれたマンガ等)とか哲学(比較的名著からの引用をマンガで目にしただけ)っつー精神世界を解読した分野で解明されてる真実でワシのヨタとかじゃあないから」


ウソつくときにテキトーな文言があふれ出るクセ全然変わらんな・・・ダメじゃん転生。


つか化学とか電気とか単語ねーから「化ける学習」とか「雷の気脈」みたいにありものの単語組み合わせて言っちゃってんだが通じんのかコレ・・・


「つまり」


とりあえず咳払いで息をつく。


「このカラダがババアになってボケてその部分の脳細胞が壊死するまでシヴィルっつー腐れ・・・清らかな娘は消えぬっつーこじゃ。安心せい!今は思考や行動をワシが代理してるだけじゃ。呼吸も排尿もできるし、すぐ娘の精神は戻ろうて」


「では、あなた様は・・・その存在は一体何なのです?神や悪霊ではないのですか?」




なんだ、て・・・ワシはワシ、じゃよなぁ・・・??




「・・・ああ、悪霊でいんじゃね?」


「いや、よくありませんぞ!」



「悪霊のシーヴェル(しげる)と呼んでくれ!」

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