回復魔法

「なーおっさん、具合悪いんか?」


おっさんはオッサンから見てもおっさんなのである。


「・・・アデル、アデラ、済まない・・・」


なんか外人ぽい名前を呟きながら喘いでるだけだ。

ドイツ人かこいつ。


しゃーないか、と立ち去ろうとした時、俺の体がこのような情けない仕儀に陥った背景(全景ともいう)を思い出した。


なんか回復魔法でムソーとか言ってたよな。

ムソーて無双のことか?侍とかの??

でも魔法て女の子がステッキ持ってピンプルパンプルパミポップンとか言うやつだろ?

俺習い事て空手くらいしか無いんだけど・・・

まあいいかww



「極神竜カラテ師範代(師範に上がれなくて辞めた)、草林茂。参る」


呼吸法でへその下に重心を集める。


「チョエィヤァアアアア―――――!!!!!!!」


柔軟体操の後、くっそ甲高い悲鳴()と共に屍体のように木に倒れ掛かってる浮浪者へ正拳突きを放つ。

頭、胸、丹田(?)と正中線に沿って五連撃・・・つっても一メートルくらい離れた寸止め・・・一メートルでも寸止め言うんか?まあええわい。


寸止め正拳を打ち込むと、寸止めから放たれた光の玉がホヨホヨと浮浪者に沁み込んでいき、おっさんは二三回ビクンビクンした後、巨大ナマズをまろび出したまま健やかな寝息を立て始めた。


チッ、呑気なもんだぜ。


『ビコーン!神聖系魔法キュアを習得しました』


キュアてなんだっけ・・・キュアキュアて魔法少女系の架空戦記を読んだことがあった気がする。

まぁ英語だろエーゴ。

覚えたってのになんで意味わかんねーんだよどうしようもねえな。



細くなまっちろくなってしまった自分のウデを見ながらため息をつく。


あーあ、女て只の弱い人間だもんな・・・こんなガンダム顔じゃ寄生先の男もみつからんだろうしどーすりゃいいねん。


つうかちんこ・・・おれのちんこが・・・


「おい、どけクソガ・・キィッ?!」


なんかフサッと側頭に手を置かれたと思ったら後ろからおやじがスッ転んできてそのまま小便だまりに顔突っ込みやがった。


「うわあああ!!!!!エンガチョー!!!!!!!!」


中指と人差し指をクロスさせるサインを両手で突き出しながらおもっくそ後退る。


『ビコーン!神聖魔法結界エンガチョバリアを習得しました』


エンガチョも英語だったのか・・・


「ウエッ、ペッペッ!やりやがったな!」


「うわ汚ねえ・・・」


小便おやじは立ち上がると(でけえ・・・巨人かよ)俺に向かって手を伸ばすが、亀の甲羅のような光と鈴のような清らかな音と共に弾き飛ばされて逝った。


えっ?消えたぞ??

ションベンおやじ消えちゃったwww


「ワープか?」


周囲を見回しても、寝てる浮浪者おじとぼったちで見てる若者ら(NEW!)が居るだけで小便おやじは消えてしまったのであった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る