第7話 ニホンミツバチさんとセイヨウミツバチ
//SE 靴を脱いで廊下を走っていく音
「ごめん、お待たせ!! じゃ、行こっか。多分あいつだと思うけど」
//SE 引き戸式の玄関を開ける音
//SE 草を踏み歩く音
「ちょっと
「え? ふ~~ん、なるほど。養蜂場の蜂蜜が豊作だったわけね。で? それで儲かった金で買ったそのバイクをあたしに自慢しにわざわざ来たわけか? ふんっ! 相変わらずな奴だな」
「お、おいっ!! 勝手にこの子に触るな!!」
「こ、この子は今年からこの街に転勤してきた社会人1年生だ。今は休日にあたしの養蜂場の手伝いをしてくれてるんだ」
「おい!! だ、だから勝手に触るな!!」
「ちょっとあんた!! いいかげんしてよね。この子はあたしの養蜂場でニホンミツバチさん達のお世話してんだから」
「なっ!! ふ、ふざけるな!! その子はあたしの大事な子なの。あんたの養蜂場でなんて働くわけないだろ!?」
「そ、そんなことないって……。この子は別に養蜂場で稼ごうと思ってるわけじゃないし……ねっ。そうよね!! この女より……セイヨウミツバチよりもあたしのニホンミツバチさんの方がいいよね?」 /不安そうな自信なさげな表情で
「ふふん♪ ほ~~らっ、この子はセイヨウミツバツよりニホンミツバチさんが好きだって。分かったらさっさと帰んなさい!!」 /勝ち誇った態度で
//SE バイクの爆音
「………………」 /嬉しそうな表情で
「まったく、じいちゃんと言いあの女と言い、今日は来客が多いなぁ。ゆっくり家で休めやしない。あんな女に毒されて西洋かぶれになるんじゃないぞ?」
「ん? 今のは誰かって? あの女は
「ああ、あいつとは大学時代からの知り合いでね、昔からああいう嫌な奴なんだ。今は養蜂場の他にも大学時代に研究していた蜂の酵素を使って
//SE においを嗅ぐ音
「……あれ? ちょっとにおうな」 /怪訝な表情で
「いや、そうじゃなくって。その……セイヨウミツバツのにおいが付いてるんだ。そのままだとあたしのニホンミツバチさん達がきっと嫌がるだろうからちょっと休憩してから作業しような!」
「ふふっ、あたしレベルになると蜂のにおいだって分かるようになるんだぞ? まぁ、キミはあたしがゆっくりとニホンミツバチさんのにおいに染めてあげるからな♪ 安心してお姉さんに付いて来ればいい。それと街の向こう側にあんまり近づくんじゃないぞ? またあの女に掴まるかもしれないからな!」
「ん? お気に入りのパン屋があるって? ダメダメ!! あたしがこっちに近いおいしいパン屋さんを教えてあげるからそのパン屋さんとは縁を切れ。分かったな?」
「うんうん♪ そうそう、偉いぞ♪」
「え? ニホンミツバチさんとセイヨウミツバチの違うが分からないって? ……聞き捨てならないな。いいか? ニホンミツバチさんとセイヨウミツバチは全然違うんだ。……そうだな、それを知るためにもこれからはセイヨウミツバツの映像も見てニホンミツバチさんとの判別が出来るように訓練しよう」
「大丈夫ですじゃない!! ってか、あたしが大丈夫じゃない!! こんなに一生懸命に数か月あたしの養蜂場を手伝ってくれた子がセイヨウミツバチとの区別がつかないなんてお姉さんのプライドが許さない。絶対に判別できるようになってもらうぞ?」
「ということでお家に入って早速特訓するぞ♪ さっ、こっちに来なさい?」
//SE 草を踏み歩く音
♦ ♦ ♦
//SE テレビから聞こえてくる蜂の羽音
「じゃあ、これはどっちかな?」
「ちっが~~う!! 大きさはセイヨウミツバツかもしんないけど身体の色が若干黒いだろ!? 正解は
「ずるくない!! もう、ダメだぞ?
「……そっか。ちょっと疲れちゃったんだね。まぁ、そりゃそうか。自転車でここまで来て作業してたんだもんね。……よし、そこにうつぶせになって」
「いいから、ほらっ!!」
「よしよし♪」
//SE ひざで近づいてくる音
「…………んしょ」 /背中にまたがって密着する
「あっ、こら!! 逃げようとしない! マッサージしてあげようとしてんだから」
//SE 背中をゆっくりもみほぐす音
「……どう? 気持ちいいか?」
「んっ、そうかそうか♪ それは良かった。明日も頑張ってもらわないといけないからな。今日はしっかり疲れを癒そうね♪」
//SE テレビから聞こえてくる蜂の羽音
「さっ、じゃあ特訓の続きだ! これはどっちの蜂さんかな?」
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