第8+2話 二人だけの景色
//BGM ヒグラシの鳴き声
//SE 下駄で歩く音
「それにしても夏ももうすぐ終わりだな。まだまだ暑いけど……」
//SE 歩みを止める
「こ~~らっ、歩くの遅いぞ? あたしよりも若いんだからもっと元気よくしゃきっと歩きなさい!!」
//SE 下駄で歩く音
「ん~~? こんなに遠いなら軽トラで来た方が良かったって? ふふっ、まぁいいじゃないかこうやって二人で歩くのも。いつもニホンミツバチさんのお世話しててなかなかかまってあげられなかったからな。それで今日は機嫌が悪かったんだろ?」
「ふふっ、ほ~~ら、そうやってまた嘘つく。ダメだぞ? お姉さんはそう言う嘘はすぐにわかっちゃうんだからな?」
「でも、キミが来てくれてほんと助かったんだよ? だからお姉さん今日はキミにお礼しちゃうから」
「着いた…………ここだよ」
//BGM 虫のかすかな鳴き声
「どう? ……綺麗でしょ。ここはゲンジボタルとヘイケボタルの両方が見られるとっても珍しい場所なんだ。お姉さんこの山に来て見つけたんだよ。他の誰も知らない秘密の場所……」
「何で秘密なのかって? ……もうっ! みんなに知られちゃったらここが荒らされちゃうでしょ!? ホタルたちにとってはこの静かな環境がいいんだ。だからここまで歩いて来たんだぞ?」
「……でも、キミにだけは特別に教えてあげる」
「いいから、見よ♪」 /笑顔で微笑んで腕を引っ張る
//SE 草を踏み歩く音
♦ ♦ ♦
周囲をゆらゆらと揺らめくホタルの光
川の近くにゆったりと腰かけて眺める
「きれいだねぇ」
「都会っ子はこんなにたくさんのホタルなんて見たことないんじゃないか?」
「………………」 /ちらちらと視線を顔に向ける
「なんかごめんね。今まで海やお祭りの誘い断っちゃって……」
「で、でも別にキミと海やお祭りに行くのが嫌だったわけじゃないんだぞ?」
「え? じゃあなんで断ったのかって?」
「……………………」 /しばらくの間じっとうつむいて
「実はあたしは……あんまり人が……好きじゃないんだ。。」
「前に働いてた会社でも人間関係で上手くいかなくって……そのまま体調を崩してやめちゃってね。それからも人がたくさんいるような場所には近づくのが怖くって……」
「ははっ、本当はキミに偉そうに色々言えるような立場じゃないんだけどね」
「でも、ニホンミツバチさんのお世話をするようになってからはだんだんと体調も良くなってきてね。そんなときにキミもここに来てくれて。…………あたしすごく嬉しかった」
「ニホンミツバチさんのことも全然知らないキミが頑張って色々勉強している姿もお姉さん嬉しかったぞ? だから今日はここに連れてきてあげたの。……いや、違うな。あたしが連れてきたかったんだ」
「ここはあたしのお気に入りの特別な場所なんだ」
「そう。あたししか知らない……特別な場所」
「でも!! 今からはあたしとキミの二人だけの秘密だな」
「そっ。だからこれからもよろしくね♪ あっ、あと
「良かった♪ ……いや、お姉さん実は心配だったんだよ? やっぱり養蜂としてはセイヨウミツバツの方が採れる蜂蜜の量も多いし、なんだかあいつの養蜂場に行っちゃうんじゃないかって。もう内心不安で不安で……。あっちの方がなんかすごいこともたくさんやってるし」
「ちょ!! わ、笑うな!!」
「あ、あたしはいつもがさつな喋り方してて……女っぽくないかもしれないけど……。本当は臆病な性格なんだよ」
//SE 草むらから立ち上がる音
「でも良かった♪ キミをここに連れてきて。色々お話しも聞けたしな!! お姉さんの不安な気持ちも晴れたよ。……さてっ。じゃあ、お家に帰ろっか?」
♦ ♦ ♦
「ふぅ~~♪ やっぱりお家の中は涼しくっていいなぁ」
「綺麗なホタルも見られたし十分に夏を満喫したな♪ でもすっかり暗くなっちゃったね。悪いけど街に送るのは明日でもいい?」
「ありがと♪ ……そうだ!! これからはお仕事の日の朝にあたしが軽トラで送ってあげよう。そうすれば2日間あたしの家に泊れるっしょ?」
「いいのいいの。どうせあたしも街の花屋に朝行くんだし。決まりね♪」
「あっ、ちょっと待って……そうだ!! 来週からはお仕事が終わったらその日のうちにあたしの軽トラでここに来ればいいじゃん! そしたら3日間ここに泊れるよ!? ねっ♪ 良いっしょ?」
「ふふっ、だね♪ キミの食費も浮くし。あたしは1人分も2人分も手間はほとんど一緒だからさ」
「決まりだね♪ あっ、そうだ! もう1つ夏らしいことやろうよ。ほらっ、外に行こ♪」
♦ ♦ ♦
//SE 線香花火の音
「いやぁ、夏といったらやっぱ花火だよね。去年街でもらった花火があって良かった良かった」
「ん? 線香花火以外はないのかって? ……ない」
「ふふっ、別にいいじゃないか。線香花火だけでも。浴衣姿のあたしとこうして花火を楽しめているんだからな」
//SE 打ち上げ花火の音
「お? 街の方でも打ち上げ花火が始まったみたいだね」
//SE 打ち上げ花火の音
「……こ~~らっ。打ち上げ花火なんかよりもこっちをちゃんとみなさい!」 /顔を下から覗き込んで
「………………」 /ほのかな明かりの中にみえる笑顔
♦ ♦ ♦
//SE 線香花火が燃え尽きる音
「あっ、消えちゃった」
「……夏ももう終わりだね」
「………………」 /少し名残惜しそうに
「……さてと。さぁ、いよいよ養蜂場にとっての一番の大仕事の季節の秋がくるし、これからますます忙しくなるぞぉ♪」
「キミにも今まで以上に手伝ってもらうからな。…………頑張ってね♪」
蜂谷彩矢はニホンミツバチを絶賛する~春・夏編~ ツーチ @tsu-chi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
人は見かけによらない/ツーチ
★5 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
世の常/ツーチ
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
大阪・関西万博を救いたい/ツーチ
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます