第2話 色々教えてあ・げ・る♪


 //SE 引き戸式の玄関を開ける音



 「ふぅ。ここならキミも安心して話が聞けるでしょ? ニホンミツバチさんの羽音も聞こえないしな」



 「え? 別に外でも大丈夫だったって? ふふっ、嘘嘘っ!! 嘘は良くないぞぉ♪ 身体がめっちゃびくびく〜〜ってなってたからね! まぁ、普段から聞きなれてないとあの羽音は怖いかもね」



 「ということで早速さっきの現象について説明しよう! あれは分蜂ぶんぽうといって越冬したニホンミツバチさんたちの中から新しい女王が誕生して群が2つに分裂する現象だったのだぁ!!」



 「え? なんで分裂するのかって? それはもちろん新しい女王が生まれたからさ。新しい女王が誕生した巣を若き女王に譲ってその親である女王蜂は仲間を連れてああやってさっきみたいに新しい巣を探すんだよ」



 「お!! 察しが良いね!! そうそう、あの固まってたニホンミツバチさん達は引っ越し先を探してる最中だったの。で、キミが開けてくれてた巣箱にあたしが強制的にニホンミツバチさんたちを入居させたということだな」



 「ん? 蜂に選ぶ権利はないのかって? うっ……う~~ん。まぁ、一見可哀想に見えるかもしんないけど、外の自然巣は外敵からも狙われちゃうからね。あたしが作った巣箱に入った方がいいと思う……知らんけど」



 「そうそう。あの巣箱はあたしが全部1人で作ったんだよ。え? すごいって? へ、えへへっ♪ うれしいなぁ。良し、お姉さん嬉しくなったからもっとニホンミツバチさんたちのことを教えちゃうぞ♪ 何が聞きたい?」



 「え? あたしのことが聞きたいって? さっきも言ってたね……」



 「………………」 //不満そうな表情で口を閉ざす



 「おっ!! そうかそうか!! うんうん。あたしのことよりもニホンミツバチさんたちの話をやっぱり聞きたいよね♪ よろしい♪」



 「まずニホンミツバチさん……いや、ここは一般的な蜂の話をしようか。まず蜂には女王蜂じょおうばち、働き蜂、雄蜂おばちの3種類がいるんだ」



 「女王蜂は卵を産む役割を持った蜂だ。基本的に巣にこもって卵を産み続ける。ニホンミツバチさんの場合1つの巣には数万匹がいるけどこれは全部家族なんだよ。だから女王になったニホンミツバチさんは1日に1000個以上の卵を毎日産むんだよ。自分の体重以上の卵を産んじゃうんだからすごいよね」



 「ね!! ね!! やっぱりそう思うよねぇ!!」



 「う~~ん、なんか話が分かってくれて嬉しいなぁ♪ 次は働き蜂の役割だ。働き蜂は外で花粉を獲ったり、蜂蜜を作ったり、巣を作ったり、子育てをしたりたくさんの仕事があってそれを分担しているんだ」



 「若い蜂は安全な巣の中で仕事をして寿命が近い蜂は外敵からの巣の防衛や危険な花粉集めに行くことが多い。家族のために自分が危険な仕事をするなんて健気だよな……うんうん……」



 「だからさっきキミが殺虫スプレーで殺そうとしてたニホンミツバチさんたちはご年配だったんだぞ? そんなニホンミツバチさんをいじめちゃダメだぞ? いい?」



 「うんうん。分かってくれたならお姉さんは嬉しいぞ。キミは素直ないい子だな♪」



 「ん? オスの蜂は何をしているのかって? ……基本的には何もしない」



 「い、いや!! 何もしないからって役に立たないことはないんだぞ? 雄蜂おばちには大事な役割があるんだ」



 「それは何かって? ふ、ふふっ。女王蜂はねぇ、オスとメスの産み分けができるのだぁ!! ねっ、すごい? 驚いちゃったでしょ」



 「うんうん。だよねぇ、驚くよねぇ。その秘密に関わっているのが雄蜂おばちなんだよ。雄蜂おばちはね、女王蜂に精子を与えるのが役割なんだよ」



 「女王蜂はね、その雄蜂おばちと交尾した時にもらった精子を身体にため込むの。で、その精子を使って産卵すればメスが、精子を使わない時にはオスが生まれるんだ。どうだ? すごいっしょ!? ね、すごい……何?」



 「………………」 //怪訝な顔で



 //SE 慌てて立ち上がる音



 「なっ!! な、なな……ば、バカか!? べ、別に変なことなんて言ってないだろ!? 君が勝手に変な想像をしたんだろ!?」



 「………………」 //顔を真っ赤にしながらうつむく



 //SE ゆっくりと再び座る音



 「……ま、まぁ確かに日常会話でそのせい……あんまり使わない言葉だったな……すまない。一応あたしも女子だからな……気を付けよう……」



 「で、でも!! べ、別に変な意味で言ったんじゃないんだしいいでしょ!?」



 「う、うう~~……最近じいちゃんばあちゃんとしか話してなかったから油断したぁ……」



 「え? あ、うん。ここら辺はお年寄りしかいないからさぁ、あたし最近じいちゃん、ばあちゃんとしか話してなくて……じいちゃん、ばあちゃんにこの話してもいつも優しくうんうんって頷いてくれてたから……」



 「……でも、よくよく考えたら変だよねぇ。せい……あれがどうだったらメスが生まれてとかって…………はぁ~~……」



 「………………」 //気まずそうに再びうつむく



 「良しっ!! ここで問題、蜂と同じ仕組みで子どもを作る生物が他にもいます。それは何でしょうか?」



 「べ、別に話をそらしたわけじゃないって!! いいからほらっ答えて」



 「ヒントはねぇ……、身近な生き物です!!」



 「残念〜、違いまーす。……ねえ、真面目に考えてないでしょ。人間が卵から産まれてくるわけないでしょ!? まったく……正解はありでした~~」



 「まったく、キミは蜂に対する知識が皆無だなぁ……蜂には興味なし……か」



 「え? ニホンミツバチさんに興味があるからあたしの仕事を手伝いたいって?」



 「う~~ん。…………まぁ、今年は分蜂もたくさん起きたし、人手はあったほうがいいからな……。良しっ、分かった。じゃあ休日にあたしの作業を手伝ってもらおうかな♪」



 「でも、ちゃんとニホンミツバチさんのことはちゃんとニホンミツバチってさん付けすること!! いい? 分かった!?」



 「……良しっ♪ あっ!! あとはあたしが真面目に蜂の説明している時に変な想像をするな、勝手にあたしをエロ女認定するな! いい? 分かった?」



 「ふふっ、よろしい♪ じゃあ、早速作業しに行こっか♪」



 //SE 引き戸式の玄関を開ける音




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