5章 ガチャでエクスカリバーを引き当てよう!
第27話 召し使いのバイトは時給1,500円でした
『ガチャってポン・発売情報! 伝説の武器シリーズ第二弾。アーサー王』
『1)エクスカリバー』
『2)セクエンス』
『3)ガラチン』
『4)石に刺さった剣』
『5)ロンドミニアド』
『6)クレシューズ』
・ラインナップは以上です。
・商品デザインは変更する場合がございます。
……
商品の発売日は、五月十五日。
あと十日余り先だ。
商品の見本写真では、直径五センチほどのミニチュア武器にボールチェーンが付いている。
これらを引き当て、ヴィヴィアンとマーリンの魔術で、武器として使用できるようにするらしいが……
「大野さん。お茶を運ぶのを手伝ってくださる?」
「はい……」
御子柴家の住み込みメイドに頼まれ、
ここは、御子柴
ランスロットとエクトルが覚醒したのは四日前。
そして、昨日と今日の二日間――ガチャ代稼ぎのために、
制服は、白ワイシャツに白い蝶ネクタイ、黒のジレとスラックス。
交通費も出て、時給は千五百円で一日四時間。
ガチャは一回五百円なので、目当ての剣を早く引き当てれば小遣いに回せる。
中学生の妹(エクトル)のガチャ代も負担せねばならないが、数回のチャレンジで、どうにかなるだろう。
そう――ヴィヴィアンは「武器生成には条件があります」と言った。
それは『ガチャの自分の武器を、自腹で引き当てる』ことだ。
自力で入手した物で無ければ、武器性能が発揮できないらしい。
アーサー王の武器のラインナップは三種だが、「エクスカリバー以外はハズレ」とのこと。
『石に刺さった剣』は、「台座の石が邪魔」。
『ロンドミニアド』は、「馬上試合用の槍で長くて邪魔」……。
ガウェインが使える武器は『ガラチン』か『エクスカリバー』だ。
アーサー王作品で、彼がエクスカリバーを使う描写があり、かつアーサー王の甥なので『エクスカリバー』はセーフ。
ランスロットとエクトルも、父王の剣『クレシューズ』はセーフ。
ランスロットの剣『セクエンス』も、エクトルにはセーフ。
つまり、自分が一番ハズレを引きやすいということだ。
王たる者は、臣下の甥っ子の武器を使うことが許されない。
王とは、孤高の存在なのである――。
(……なんて、カッコつけてる場合じゃないだろ)
うなだれ、我が身の不幸を嘆く。
平穏な高校生活を送る筈だった。
なのに、いきなり過去世の人格が現れ、それが伝説上のアーサー王だった。
しかし、全く嬉しくない。
はっきり言って、今の暮らしに何の役にも立たない。
王の人格が出ている時に、そこそこの剣闘が出来るだけ。
英語がペラペラになるなら神に感謝するが、自分の記憶がベースのせいか、王の記憶や思考も日本語変換されている。
アーサー王伝説の知識が、大学受験に役立つ訳でもなし。
しかも命を狙われるという、要らぬサスペンスを味わっている。
冴えぬ顔で、ワゴンを押してリビングに入った。
四日前の作戦会議に使ったそこは、客人の接待に使われている。
ヴィヴィアンの華道の先生と、その令嬢が訪れたのだ。
和服の華道マダムは、
「あら、お若いサーバントですのね」
「高校の後輩ですの」
「アルバイトですの? 色々と大変ですのね。オホホホホ」
華道マダムの態度に、さすがの
だが娘の方は全く関心が無さそうで、
マダムは、なおも嫌味を言う。
「
「実は高校近くの牧場を買い取りまして、放課後に顔を出しております。いずれは、乗馬クラブを経営する予定ですの」
「あら、それも悪くはありませんわね。オホホッ」
マダムは、耳障りな笑い声を上げた。
食って掛かっても一利なし、である。
「大野くん、もう帰っていいわ。お疲れ様」
ヴィヴィアンに命じられ、
着替えをし、先輩サーバントからバイト代を受け取り、御子柴家を後にした。
昨日と同じように、百円玉ばかりが布製のコインケースに入っていた。
今日は不快な思いをしたが、とにかく武器代は稼いだ。
あとは、一発で『エクスカリバー』を引き当てるのみ、である。
――続く。
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