第19話 信じ会う二人の力。
なんで俺は前線で戦っているのであろう。
アルフォートはそう思いながらも、時折攻撃してくる、オークを食肉にする要領で叩き切る。
ミーアを助けるために前に出たモノの、自分より高レベルの前衛職はまだまだ居る。だが、オークキングはアルフォートを驚異とみなしており、常に殺気を向けて攻撃を喰らわないように注力してくれている。
そして、子分にアルフォートを狙わしつつ、ドラゴンであるステアに攻撃している状況だ。
だから、アルフォートは前線に留まるしかないのだ。
「ステア! 人化を解いていい!」
「あぁ、言われなくても!」
と、ステアが三メートルサイズのドラゴンになり、五メートル大のオークキングとがっぷし四つ構えになる。
サイズ的にはステアが負けているモノの、種族値の差があるのか、じりじりと押していける。力量には分がステアにあるようだ。
これは勝てるか? とアルフォートが思った瞬間、ドラゴンの巨体が空中を舞った! 足を引っかけられたのだ。
「ステア!」
ドシーンと、大きな音が響き、アルフォートの前に転がされるステア。
技の年季の差が出た感じだ。
「おっしゃああああああ! ドラゴンうちやぶったりいいいいい」
オークキングのウォークライングにて、一気呵成にドラゴンを子分たち共に処理させようとする。
だが、しかし、ここで終わる様なステアではない。
即座にグルリと起き上がると、がっつりとまたオークキングにしがみつく。
そして周りの雑魚共は尻尾で、排除をしていく。
「ステア……!」
アルフォートも彼女の援護に回るべく、持ち前の料理スキルとレンジャースキルで周りのオークを狩っていく。
「アルフォート心配するな、こんなやつら、我一人で十分じゃ!」
「甘く観られたモノだなぁ!」
オークキングは技ならば勝てると踏み、なんと超重量あるドラゴンを肩にもちあげ、そのまま後ろに倒れるスープレックスに移行したのだ!
「ぐああああああ」
ステアの悲鳴が響き渡った。
流石に耐えきれなかったのか、しばらく起き上がれなくなるステア。
しかし、仕掛けた方のオークキングもしばらく起き上がれない。
それでも軍勢であるオーク共はチクチクと槍でステアを貫こうとし、出来ていない。だがダメージは確実に入っていき、ついにてはステアの奇麗な肌に傷がついていく。
それに対して、アルフォートが切れて叫んだ。
よくも、僕のステアを……!
「ステア、僕を乗せろ! ステアだけじゃ、相打ちにしかなってない!」
「……! 判ったのじゃ!」
アルフォートの声に、理解を示したステアが飛び上がる。そしてアルフォートの前に飛び降りる。
「っ、させるな!」
だがそれは、嫌な予感のしたオークキングの声よりも先に成った。
そしてアルフォートが跨り、一つになる。
ステアの身体が光出す。
すると、ステアの身体が魔力に分解されアルフォートに吸収されるような形で収まっていく。
「な、なんだ、それは⁈」
オークキングは驚きで叫ぶ。
『ドラゴンライダーだ!』
そう叫ぶ彼女、いや彼は真っ赤に燃える炎を身にまとい変身した姿。
顏はドラゴンのように険しくなり、手や足に爪が生えている。
そして体中に鱗が生えており、左手の薬指にはミスリルの指輪。
男の身体だ。
以前より、勇ましく、ドラゴンらしさをました彼らは、そのまま、手下のオーク共を一振りの火炎にて一掃する。
「なに?!」
『僕のフィアンセを、ボコボコにしてくれた分を返してやる』
爪だ。爪による攻撃が、左目を失い、死角となったオークキングの左肩を切り裂いた。そしてそのまま、噛みつくように歯をつける。
「ぬあああああああああ!」
大きなオークキングの叫び声が周りに響き渡った。
いままでに有り得なかった痛み、そして食べられるという感触が彼を襲ったのだ。
恐怖のあまり、後ろに下がり、ようやく食事を回避することに成功する。
「な、なんだお前らは……!」
オークキングが震えるように疑問が漏れた。
『これは愛のカタチだ。ドラゴンと人間にとってが、結婚を約束したツガイと文字通り一体になる秘術だ!』
『名をドラゴンライダーというのじゃ!』
先ほどの男性の声とドラゴンの少女が交互に聞こえる。
そして、今度はアルフォートとステアの番だ。
自信満々であったオークキングの筋肉を貪るように、左手、左足、左わき腹と食い破っていく。そして最後に首をムンズと持って言う。
この時点でオーク共は、親分を見捨てて蜘蛛の子を散らすように逃げだしていた。
『最後に言い残すことがあったら言うとイイ』
ステアの声が、慈悲だと言わんばかりにオークキングに問いかける。
「お前は、そんな力を持って人間に迎えられると思っているのか? お前はきっと人間から裏切られる、狙われる、そして最後には俺と同じように殺されるんだ……ははは、今からその姿が見られないのが残念だ」
そう、空笑いをするオークキング。
対して、
『それは僕がさせない。ステアは僕のフィアンセだ。愛している、言葉だけではない存在そのものが好きなんだ。僕が居る限り、ステアを人間なんかにころさせやしない!』
そう宣言するアルフォートの声。
自信満々に言うので、オークキングはもう反論の一言も無く、絶句してしまう。
ここまでモンスターと人間が相容れることができるモノなのかと、そして一緒になれるモノなのかと驚いたからだ。
「やるがいい」
『あぁ、喰わせてもらうぞ』
ステアとアルフォートの声が重なり、バシュっと、オークキングの首が体から飛んだ。空中にとんだ首をアングリと大口を開けた二人に飲み込まれると、人々からの歓声が上がった。
勝利したのだと。
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