第2話 苦戦
「おぎゃあ!おぎゃあ!」
赤ん坊の甲高い泣き声が響く。
そのそばにいる男は気怠げな様子であたふたしている。
「な、なんで泣いてんだよ。
ミルクか?オムツか?おもちゃか?」
男はミルク瓶とオムツとおもちゃの3つを赤ん坊の前に並べる。
赤ん坊はミルク瓶とおもちゃを掴みこちらを泣きながら見ている。
「ミ、ミルクとおもちゃだな。
おもちゃはちょっとまってくれ。
先にミルク作ってくるから少し待ってくれ。」
男は慌てて台所に向かう。
その男の名前は「ルート・ビゼル」
とある国に仕えていた役人のような人である。
赤ん坊の名前は「ルート・スイナ」
ただの赤ん坊である。
ビゼルは生粋の働きものであった。
国ではそこそこの役人として働いており異性との会話は仕事に関しての報告のみだった。
そんな奴が子供との関わりがあるはずはない。
そのため初めての育児に苦戦をしていた。
目には隈ができており疲弊しているようだ。
「赤子の世話っていうのはこんなに大変なのかよ。」
ビゼルは手慣れた手付きでミルクを作っていく。
「お湯がねぇな?
ホイのホホイのホイ!」
その言葉を合図に手のひらくらいの火の玉と水の玉が出てきた。
ビゼルは器用に水の玉を温めお湯を作っている。
更にビゼルは器用に新しい魔法陣を出現させる。
その上には木材がいくつがある。
「ガキのおもちゃなんて何作ればいいんだよ!
ホイのホイホホイ!」
ビゼルが唱えると木材はすべり台になっていく。
完成したそれをスイナの横に置きミルクを作っていく。
「か、完成だ。
おい、できた…」
ビゼルが声をかけた頃にはスイナは眠っていた。
そんなスイナを見ながらビゼルは
「え?
寝たの?」
そんなことを呟きながらぶっ倒れた。
これが数年あるとは知らずに。
かつて敵だった君から テラル @pamutto
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