第17話 シエスタ



 今日は女王陛下からお呼ばれしている。

 僕とソラさんは城のお茶室で待機だ。

「よくぞまいった、このエアコンは凄いのぉ」

「あはは、これで夏も快適に過ごせますね」

 エアコンは絶賛稼働中だ。

「街にも卸したそうじゃないか?反響はどうじゃ?」

「上々ですね、レストランなんかに優先したので客足が伸びてる様です」

「それは重畳。さて、今回呼んだのは願いがあってな」

「願いですか?」

 真面目な顔になる女王陛下。

「いま帝国から攻撃を受けておる。まぁ戦争ということじゃ」

「え!」

「ケントに出てくれということではない、行軍も手助けしてもらったマジックボックスがあるでな」

「それじゃあ?」

「帝国が喧嘩をふっかけてきたのはケントを渡せということなのじゃよ」

「えぇ!」

「なのでこちらとしてもそれは無理と跳ね除けた」

 僕から始まる戦争って!

「じゃがここらで和解をすることにしようと思ってな。それでじゃ、嫁はいらぬか?」

「いや、僕にはもう三人も彼女がいまして」

「三人も四人も変わらんじゃろ?」

 いやいや、大きく変わるでしょ?

「帝国の姫なんじゃが、和解の印に渡り人に嫁がせると良いおってな」

「いや、だから」

「妾の頼みじゃ聞いてくれんかのぉ」

 どこぞの姫様を嫁にするって、

「会ってみないとどうにも」

「そうか、そうじゃの!もう来ておる」

「ええー!!」

 もう逃げられないじゃないか。


「初めまして、妾はスタージャ帝国が第三王姫のシエスタと申す。よろしく頼むのじゃ」

 赤い髪を結って綺麗にまとめてあるが、背丈が低く幼く見えてしまう。

「シエスタ様はおいくつになられるんですか?」

「これでも十七じゃ、背丈のせいで幼くみられがちじゃがの」

 少し吊り上がった目は意志が強い現れからか?

「僕でよろしいのでしょうか?」

「妾は構わぬ」

「そうですか、少し二人で話でも」

 あまり乗り気じゃなかったら可哀想だしな。

「そうじゃの、ソラ、出るぞ」

 二人とメイドが出ていき、シエスタさんが椅子に座る。

「本当に大丈夫ですか?」

 手が震えている。

「な、なにがじゃ?妾はこの為に来たのじゃから」

「無理はしないでください。僕からも陛下に伝えますので」

「そうか、やはりこの身体じゃ嫌じゃったのじゃな」

「そんなことはありませんよ」

「じゃあ何故じゃ?」

「いや、僕を気に入らなかったら可哀想だと思いまして」

 シエスタは顔を赤くし、

「そんなことはないのじゃ、どちらかといえば気に入った」

「本当ですか?」

「本当じゃ!嘘は言わん」

「なら僕の彼女からということで良いですか?」

「か、彼女からじゃと?妾は嫁に来ておるのじゃ」

「それじゃあ僕達のことが何もわからないままじゃないですか?なら恋人から始めましょうよ」

 そうじゃないとフレイヤ達になんで言おうか迷ってしまう。

「そうか、ケント殿は彼女がおったんじゃったな?妾は第一妃になるんじゃろうな?」

「それもこれから次第ですよ」

「な、なんじゃと!妾は一国の姫じゃぞ」

「僕は渡り人でこの国とは多少の関係があるだけですので」

「渡り人の考え方か」

「そうですね。そう言うことも擦り合わせて行けたら良いと思います」

「わかったのじゃ」


 しばらくして女王陛下とソラさんが入ってきた。

「一筋縄ではいかんじゃろ?」

「まずは恋人からだそうですのじゃ」

「あはは、それはしょうがないのぅ、してケントよ、何か話したいことはあるか?」

「文句の一つも言いたいところですが、ここは穏便に行きましょう」

「おぉ、怖いのぉ。出て行くといわれたらどうしようかと思ったぞ」

 出ていきたい気もするが、この国には少しは世話になってるからな。


「本当に最後にしてくださいね?これ以上恋人を増やすのは勘弁願いたい」

「わかっておる。そのための姫でもある」

 シエスタが奥さんになるのがまだ想像つかないけどね。

「ケント殿よ、それではまいろうか」

「そうだねシエスタ」

「な、な、なんでもう呼び捨てなのじゃ」

「シエスタも呼び捨てでいいからね」

「……ケント」

「うん?」

「さぁ、いくのじゃ!」

 

 屋敷に戻り、シエスタの部屋を決める。

「何故妾がこんな端っこなのじゃ!」

「じゃあどこがいいの?」

「ケントの横の部屋じゃ!」

 んー、フレイヤ達が帰ってきてからだな。

「ちょっといまは入ってる人がいるんだよ、彼女が三人いるってしってるだろ?」

「妾が一番じゃ!」

「わかったから、みんなが帰ってきてからね?」

 なんとか宥めてリビングでくつろぐ。

「ちょっと寒いくらいじゃな」

「エアコンをおとそうか?」

「いや、いいのじゃ」

 ケーキを食べながらくつろぐ姿は中学生くらいに見える。


 自分が一番じゃないと気が済まないのは第三王姫だったからなのかもな。

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