第13話 シア
「やぁ、シアさん」
「あ、ケントさん。今日もお弁当作ってきましたよ」
「いつもありがとう、お昼が待ち遠しいな」
シアさんはバスケットを両手で持って銀髪を靡かせている。
「今日は何読もうかな」
探していた体術の指南書を手に取ってパラパラと読んでいく。
スキルを取得して良い本はないかと探しているが、今日は気が気じゃない。昼には修羅場になるんじゃないか?
「なにかお探しですか?」
「いや、何を読もうかと思ってね」
「そうですか、難しい顔をされてたので」
「あはは、ありがとう、大丈夫だよ」
そうこうしていると昼飯時だ。
シアさんと二人で広場に行くと待ってましたとフレイヤとミーシャがやってくる。
「あ、彼女さんですか?」
怯えた顔のシアさんに、
「ごめんね、どうしてもシアさんに会わせたかったから、僕の彼女のフレイヤとミーシャ」
シアさんは頭を下げて挨拶をする。
「シアと申します。すいません彼女さんがいる人なのに」
「いいよ、これはケントが好きになるね」
「そうね、こっちでは違うタイプの女だもの」
フレイヤとミーシャがそう言うと顔を赤くするシアさん。
「シアさんさえ良ければなんだけど僕とお付き合いしてください」
僕は頭を下げると、
「わ、私なんかで良いんですか?こんな綺麗な彼女さんがいるのに?」
「はい!」
「よ、よろしくお願いします」
これで三人目の彼女が出来てしまった。ハーレムってやつだな。僕が?
「私達もよろしくね、シア」
「よろしくシア」
「よろしくお願いします、フレイヤさんにミーシャさん」
「フレイヤでいいし、こいつもミーシャでいいわよ」
「こいつってなんだよ!一番目だからって調子に乗るんじゃないよ」
戯れてる二人をよそにシアと目が合う。
「よろしくシア」
「こちらこそよろしくお願いします、ケントさん」
頬の赤らみがとれないシアはとても可愛く見えた。
もちろんまだ、じゃれてる二人も可愛い。
「こんど二人の指輪も買いに行こうよ」
「「やった」」
二人の指輪を買うってことは僕は三つも嵌めるのかな?
「せっかくなのでみんなでご飯にしませんか?ちょっと少ないですけど」
「そうしようか」
「いただくよ」
広場でシートを敷いて四人でシアの手料理を食べる。
「うまっ!」
「これはやられるね」
「そんなことないですよ」
三人は楽しそうにお喋りしている。僕はそれを見てホッとしていた。
「シアは実家くらしなの?」
「いえ、賃貸で一人暮らししてます」
「賃貸なんてあるんだ?家探してみる?」
「いいね」
テポッドはこれでも大きめの街だから探せばあるだろ?
昼を挟んでフレイヤ達はギルドに行くらしく、僕とシアは図書館に戻る。
大工の専門書などを読んでみる。これもスキルになるようだ。
夕方にはシアに別れを告げ、宿に帰る。
「おかえりケント、王都から手紙がきてるわよ?」
「え?まだ一週間もたってないのに?」
読んでみると王都に住まないかとの打診だった。
「王都に住まないかだって?」
「へぇ、家はあるんだろうね?」
「用意してくれるみたいだよ」
「それはいいねぇ」
ちょうど家を探そうとしてたところだけど、シアは大丈夫かな?
「返事はまたシアに聞いてからだね、二人は賛成でいいの?」
「いいわよ」
「わたしもー」
フレイヤもミーシャも王都に住むことに賛成らしい。
あとはシアだけだな。
翌日も朝から図書館に向かう。
シアがいたので声をかける。
「シア、おはよう」
「あ、ケントさんおはようございます」
「ケントでいいよ。それよりちょっといいかな?」
僕は王都からの手紙の件をシアに話した。
「い、いきます。ついて行っていいんですよね?」
「もちろん、シアを置いて行けないよ」
「良かったぁ、私、司書を辞めてきますね」
「引き継ぎとかあるだろうし、すぐじゃなくていいから」
「はい!では行ってきます」
「いってらっしゃい」
僕達はそこで別れて僕は宿に戻り手紙の返事を書いた。
返事はすぐにきて、僕達には屋敷が与えられることになった。地図と場所も書いてあるが、ソラさんが案内してくれるそうだ。
日程が決まったらまた返事をすると返してギルドに向かう。
「あ、ケント!」
「二人とも怪我してるじゃないか、ハイヒール」
二人とも全身傷ついていた。
「ちょっとオーク狩りで手こずってね」
「あそこでオークジェネラルが出てくるとは思わなかったよ」
なんでもない様に言ってるけど危ないことはやめてほしいな。
「もう、気を付けてよね」
「はーい」
「今日は報酬期待できるね」
もう、二人とも可愛いのに男らしいと言うかなんと言うか、これが逆だったら女の人はこんな気持ちなんだろうな。
「心配してるんだからね」
「わかってるって」
「大丈夫だよ」
本当に心配だ。
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