第12話 指南書


 久しぶりに街の図書館に行ってみる。

「久しぶりですね、シアさん」

「え、ケントさんお久しぶりです。帰って来たんですね」

 シアさんは嬉しそうに笑う。

「はい、王都からようやく」

 頭をかきながら説明をする。

「それじゃあこの図書館にもうご用はないかもしれませんね」

「いや、魔導書でまだ読んでないものもあると思うのできたんですが」

「そ、それじゃあ探すの手伝いますよ」

「ありがとうございます」

 図書館ではまだ読んでない魔導書、あとは指南書を見つけた。

「剣術の指南書か、読んでみるか」

 席について指南書をパラパラとめくっていくとスキルを獲得したことがわかった。

「やった!あ、すいません」

 図書館では大きな声を出すべからず。


 さっそく実験だ。

 シアさんに断りを入れて外に出る。ギルドの訓練場に行くと木剣を取り出し素振りをすると今までと違う感触が、一体となったと言うかこれが本当の剣の振り方なんだな。

 

 指南書、良いじゃないか!これは他にも探さなくては!


 翌日も図書館に向かうと途中でシアさんに出会った。

「あ、シアさん?」

「ケントさん、これ、お昼ご飯また作ったので一緒に食べてくれませんか?」

 バスケットを持っているシアさん。

「喜んで!シアさんの料理美味しいですもんね」

「女が料理なんて恥ずかしいですが」

「何も恥ずかしくないですよ!できる人は尊敬します」

 自分がカップ麺くらいしか作ったことないからだが、

「あはは、それではお昼はまた広場で食べましょう」

「はい!たのしみだな!」


 それまでは指南書が槍、弓、盾とあったのでそれを読む。

「よし、昼だ」

「はい、行きましょう」

 シアさんに連れられ広場に向かう。

「今日はおにぎりにウインナーに卵焼きにって僕の大好きなメニューだ!」

 家庭的で可愛いシアさんはモテるだろうな。

「お口に合えば良いのですが」

「いただきます!うん、うん、美味いっす」

「良かったです」

 シアさんもモグモグと食べている。


「ご馳走様でした」

「お粗末さまです」

 美味かった、けどどこか悲しそうな顔をしている。

「恋人さんに悪いことをしました。すいません」

「え?あぁ、指輪ですね。僕の彼女は冒険者なんでこんなことはしてくれないですよ」

「でも、あの、また作って来ても良いですか?」

「はい!あ、でも毎日これるわけじゃないんです。明日は冒険者活動するんで、明後日で」

「明後日ですね。わかりました」

 ニコッと笑うシアさんにこんな彼女がいたらなぁ、なんて思ってしまう僕がいた。


「へえ、そんでケントはそのシアって子の事好きになったの?」

 フレイヤが聞いてくる。

「んー、好きは好きだね。料理も美味しいし、可愛いし」

「この浮気者!」

 ミーシャがそう言うが、僕的には……やっぱアウトか。

「いいよ、一度顔合わせしようか?」

「じゃあ明後日また図書館にいくんだよ」

「じゃあその昼時に広場に行くよ」

 フレイヤがそう言うとキスをしてくる。

「もう、しょうがない男だよ」


 次の日はギルドで依頼を受けて門の外に出る。


「せい!は!」

 剣が軽く感じる!身体が自然に動くぞ!

「ケント!なんで剣の扱いが上手くなってるんだよ?」

「指南書読んだらスキルになった」

「そんなばかな!」

 そんなバカなことがあったんだよなぁ。

「次は弓、フッ」

 矢は一直線にホーンラビットに刺さる。

「ふぅー、ほんとにスキル様々だな」

「規格外だな」

「だな」

 フレイヤとミーシャは呆れている。


 今日獲れたのはすぐアイテムボックスにいれてギルドで換金してもらった。

「ちょっと買い物がしたいんだけど」

「いいわよ、一緒に行こう」

「私も行くよ」

 フレイヤとミーシャを連れて向かったのは鍛冶屋、やはり夏には欠かせないアレを作りたい。

「こんな感じの箱を作って欲しい」

「おう、ちょっと待ってろ、それくらいならすぐできる」

 鍛冶屋の親父さんはすぐにハンマーで形作ると縦長の箱が完成した。

「あ、ここにこんな感じで羽もつけてもらえないですか?」

「あん?早く言えよ」

 また凄い速さで羽を取り付ける。

「ありがとうございます」

「おう、金さえあればなんでも作ってやるよ」

 親父さんにお金を払って、宿に戻る。


「何をつくるのかしら?」

「さぁ?」

 これに氷魔法と風魔法を付与する、そして錬金術で調整していく。買って来たコードの様なものにスイッチをつけると、

「出来た!クーラー」

 縦型だけどしょうがない。ほんとは横型に取り付けたいが宿だしこのままだな。

「くーらー?どんなものなんだ?」

「つけてみるよ、どう?」

 ミーシャがクーラーの前に立つと冷たい風が吹いてくる。

「おぉ!涼しいよ!」

「なに!あ、ほんとだ!」

 フレイヤもミーシャも気に入ったみたいだ。

「凄いね!これで夏は部屋から出られない」

「いや、出るけどね」

 この涼しさを感じてると日本が恋しくなるなぁ。こっちの方が楽しいけど。

「このツマミで調節できるよ」

 強にしてみると、

「さっ、さむっ!寒いって」

「強くし過ぎだよ」

「あははは」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る