第10話 完成品


「これで完成です」

 いま陛下のバックに認識魔法と探知魔法を追加したところだ。

「な、なんと言うことだ!わかる、わかるぞ」

 異世界のマジックバックはやっぱりこうでなくちゃね。

「これは凄い、凄いものを開発したなケント!」

「あ、ありがとうございます」

「いや、これはそなたしか作れるものがいないでは無いか」

「そんな、魔導書を読めば誰でも」

「魔導書は理解して初めてスキルになる。空間魔法や重力魔法を理解できる人間がどれだけいるか」

「それはそうかもしれませんが」

「ケントよ、そなたに我が国の魔導書をみる権利を与える」

 周りがざわつき出した。

「ついて参れ」

「は、はい」

 陛下に続いて歩いていくと厳重に警備されている宝物庫に着いた。

「ここを開けよ」

「「は」」

“ゴゴゴゴゴゴ”

 っと開く扉の中はキラキラと輝いていて宝物と呼ばれるものが沢山あった。

「さて、この中の魔導書を読んで参れ」

「え?いいんですか?」

「分かるものが居なければ宝の持ち腐れじゃからな」

 僕は中に入ると魔導書が置いてある棚に目をやる。

 時魔法、空間転移、古代魔法、

 これはやばい様な気がする。

「私は戻る。この者が読み終わるまでここは解放しておく、警備をよろしくな」

「「は!」」

 嘘だろ!これを読み終わるまで出られないじゃ無いか。

「はぁ、さっさと読むしか無いか」


 時魔法、空間転移、古代魔法を順に読んでいく。さすがに量が多くて二日かかってしまったがなんとかスキルとして覚えた。

「ご苦労であった。して、どんな魔法じゃ?」

「時魔法は物の時間を止めたり早めたりできる魔法、空間転移はわかる場所なら空間を移動できる魔法、古代魔法は強力な攻撃魔法や防御魔法でした」

「なんと、そんな魔導書であったのか、やはり宝物庫に眠らせておくべき魔導書では無いな」

 陛下はお茶を啜り、一息つくと僕に向かって、

「ケントよ、その魔法で何を成す?」

「僕は冒険者としてですが認められる様に頑張りたいと思います。まずはそのマジックバックに時魔法で時を止める付与をしたいと考えました」

「な、このマジックバックに入れた物の時が止まるのか?」

「はい、そうなると思います」

 陛下はずっともっち歩いているマジックバックを渡してくれる。

 僕は時魔法を付与するとこれでマジックバックの中身の時が止まった。

「これで本当の完成品になります」

「これは、ケントよ、他のものにも付与はできるか?」

「大丈夫だと思いますが?」

「なれば、宝物庫の宝箱にこのマジックバックと同じ事をしてくれないか?報酬は払う」

「わかりました」

 宝物庫にいき、宝箱に空間拡張、重量軽減、時間停止、認識魔法と探知魔法をかける。

「これで、城の宝物庫はこの宝箱にすべて納めるのじゃ」

「は!」

 どんどん入っていく宝剣や王冠などの宝物達が全て収まった。がらんとした宝物庫のど真ん中に宝箱が鎮座している。

「あはは、綺麗になったもんじゃ。よし、次は軍のところにいくぞ」

 陛下の足取りは軽く、ついていくのがやっとだ。

「軍の物資を運ぶ荷箱をやってくれるか?」

「よ、喜んで」

 計六つの荷箱に魔法を付与する。


「おお!凄いですぞ!」

「これで行軍が捗りますぞ」

「流石、渡り人様!」

 これで一通り終わったかな?


「とりあえずはこれでいいじゃろ」

 陛下はバックを片手にウンウンと頷くと、ようやく僕を解放してくれた。


 夕方になり、宿に帰る。

「…てことになって」

「すごーい!私のバックにも!」

 フレイヤとソラさんのバックにも付与してあげる。

「あ、ありがとうございます」

「いえいえ、いつもありがとうございます」

 ソラさんは恐縮しているが、使えるものは使っていかないとね。


 ソラさん以外の人は恐れ多いと辞退する始末。

 そのうちマジックバックも広まるといいんだけどね。


「いや、広めていきたいな。時間停止を抜いて、すこし重量軽減を重くすればそれだけで差別化出来るんじゃないかな?」

「そうだけど陛下がダメって言うのはわかるかな、ケントが一人だけなんだから」


 あっ、そうか、僕だけしか作れなかったんだ。


「ならこの案はなしだね」

「そのほうがいいかと」

 ソラさんも納得してこの日は終わった。

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