第7話 謁見


 それからの旅はちょっとしたモンスターが出るくらいで僕達は馬車の中で過ごした。

 二泊目の街の宿も一人部屋で、あまりにもフレイヤが可哀想なので買い物に連れ出した。

「あの堅物女!」

「私のことですか?」

「うぇっ!」

 二人で出てきたと思ったらソラさんもついてきていた。

「どこかに出かける際は私にも言ってくださいね」

「はい、わかりました」

「どこに行くつもりですか?」

 うーん、考えてなかったけど、

「本屋はありますか?」

「ありますよ?魔導書ですか?」

「そうですね、あればいいなぁと」

「分かりました、ついてきてください」

 フレイヤは若干呆れていた。

 大きい本屋が目の前に現れた。

「この街は王都に近いのでこう言う本屋などもありますね」

「王都に近いから?」

「はい、王都から本は発行されているので、そこから近い街にはそれなりの品揃えがありますよ」

 魔導書コーナーに行くと、錬金術や付与術など、見たことない本が沢山ある。

「何を買ったんですか?」

「雷魔法の魔導書です。あとは高くて手が出せませんでしたよ」

「申し上げてくれれば良かったのに」

「あはは、これくらいは」

 出してもらうわけにはいかない。

「フレイヤはどこか行きたい?」

「屋台に行きましょう?」

 屋台が並んでいる通りがあり、そこで買い食いをする。

「はい、ソラさんの分」

「わ、わたしは」

「ケントが買ってあげたんだからちゃんと貰いなさいよ!」

「あ、ありがとうございます」

 肉串をパクつきながら宿に戻る。

 また部屋は別だがフレイヤも何も言わなくなった。

 僕はさっそく雷魔法の魔導書を読み進め、雷魔法を覚えた。


「昨日はよく眠れましたか?」

「はい、グッスリと」

「あそこの宿高いでしょ?」

「安宿に泊めるわけには行かないでしょ」

「ふん」

 フレイヤとソラさんもだいぶ大人しくなってきた。そしてついに王都に着く。

「うわぁ、大きいなぁ」

「ケント様、あまり外に顔を出さない様にお願いします」

「ケント、行儀悪いわよ」

「あ、ごめんごめん!」

 窓からみた景色は壁だけだけど、城壁があんなに高いなんて凄いとしか言いようがなかった。


 人が並んでいる横を通り抜け、専用門から中に入る。

 そこは流石に王都というしかないほどの広さと綺麗さだ。大通りは人が溢れていて、馬車も専用道路がある。

「本日はケント様の服などを買い揃え、明日、陛下に謁見してもらいますので」

「あ、良かった。この服でいいのかな?って思ってたんだよ」

「私は?」

「貴女は陛下と会うことはなりませんので待機になります」

「はぁ、やっぱりね」

 フレイヤは会えないのか、てか俺一人で会うの?

「え?俺一人?うそ?」

「陛下はそんな怖い方ではないので失礼がなければ普通にしていて下さい」

 ソラさんはそう言うが緊張してきたな。


 それからは怒涛の服選び、あーでもないこーでもないとソラさんとフレイヤで着せ替え人形の様になっていた。

 

「こんなに買って、着るのは一着でしょ?」

「何回か謁見してもらうので一着では足りませんよ」

「えぇ!何回か会うの?」

「大丈夫です。元の世界のことなどを知りたいとおっしゃっていたので」

「あぁ、そう言うことか」

 ふぅ、なんか謁見とか緊張する言い方だからな。

「まだ時間もありますし王立図書館に行きますか?」

「あ、行きたいです」

「そこは私も興味あるわね」

 フレイヤが本なんて珍しいな。


 王立図書館に入ると本の匂いがして落ち着く。さっそく魔導書コーナーに行き、高くて買えなかった錬金術の本を読む。

 隣にソラさんが座っている。何を読むでもなく周りを警戒している。

 もう片方の隣にはフレイヤが来て、ファッション雑誌の様な本を読んでいる。そう言うのも置いてあるんだな。


 結局読めたのは錬金術の本のみで、付与術なんかは読む時間がなかった。

 宿はこれまた豪華な作りの宿で、僕が泊まっていいのかと思うほどだ。

 一人部屋なのに風呂がついていて久しぶりに風呂に入った。


 

 このドアの向こうに陛下と言われる人がいる。

「大丈夫です。私が合図したら膝立て、頭を下ろしてください。陛下の許しが出たら頭を上げて陛下を見て下さいね」

「はい」

 合図があり、中央まで進みソラさんの真似をする。

「此度は余に会いに来てくれ嬉しく思うぞ。楽にしてくれ」

 前を向くと陛下とは女王だった。金色の綺麗な髪を編み上げ王冠を乗せている。少し妖艶な雰囲気のある女王様だ。

「は、初めまして渡り人のケントと申します」

「良い良い、渡り人は不思議な力を持つと言われておるがケントはどんな力を持つ」

「はい。私は来たばかりの時は速読と言って本を早く読むスキルとアイテムボックスと言うスキルがありました」

「ほう、本を早く読むスキルとな」

「はい、魔導書なら簡単な物で三十分はかからないかと」

「ほう、それは凄いの!我も魔導書は苦手じゃからな」

「あはは」

「そう言えば賊に襲われたと聞いたが、大丈夫だったのか?」

「えぇ。彼女や他の冒険者達が協力してくれましてなんとか」

「その彼女とやらが原因ではなかったか?」

「それは違います。森の方で狩りをしていた時から目をつけられていたみたいでして」

 嘘は言っていない。

「そうか、それならば良いが。ほかには元の世界と違うところはあるか?」

「違うところばかりですね。まず魔法がありません」

「魔法がないと不便であろう」

「そのかわり科学と言うのが発展していました」

「ほう、それは昔の渡り人も言っておったそうじゃな」

「あとは男女比が違います」

「どれくらいちがうのじゃ?」

「一対一くらいで男性の方が性について、大らかじゃないかと思います」

「なんと、それではそちも」

「そうですね」

 笑うしかなかった。

「あいわかった、また呼び出すので今度は茶でも飲みながら話そう」


 ようやく謁見が終わり、宿に帰る。

「大丈夫だった?」

 フレイヤが心配そうに聞いてくる。

「うん、優しそうな方だったよ」

「そう、それなら良かった。その格好カッコいいよ」

「えー。こんなの街中じゃ恥ずかしくて着れないよ」

 キラキラ耀くボタンや、装飾過多の服なんてどこできるんだよ。

「着替えてくるからどこか行こうよ」

「うん、待ってるね」

 サッと着替えるとお供にソラさんがついてくる。

「どこに行かれますか?」

「んー、どこかいいところはある?」

「ケント様なら魔道具屋なんか宜しいのでは?」

「そんなとこあるの?行きたい」

「はい!ではついて来てください」

 魔道具ってどんなのがあるんだろう?


「ここが王都で一番の魔道具屋です」

「へぇ。これは何ですか?」

「これは製氷機と言って氷を作る道具です」

 大型の冷蔵庫みたいだ。

「もっと小型化出来ないんですか?」

「小型化ですか?」

「こんなに大きいと屋台で使えないじゃないですか」

 店主はハッとした顔をして、

「そうですね!考えてみます」

「冷蔵庫はあるんですか?」

「こちらです」

「これも小型化したら一家に一台置ける様になるんじゃないかな?」

「そ、そうですね!」

 それから魔道具屋のお姉さんと二人で意見を言い合い楽しい時間が過ぎた。

「また是非来てください」

「はい!」


「ごめんね、一人で楽しんじゃって」

「いいの、楽しそうなケントが見れたから」

「フレイヤは服の感じが変わったけど買ったの?」

「ようやく気付いてくれた。そう、ケントがお城に行ってる間に買って来たの!似合う?」

「うん!似合うよ。なんか違うなーとおもってたんだ」

 危ない、良かったよ気付けて。

「次はどうしますか?」

「また僕の我儘でごめんだけど図書館に行きたいな」

「またどうして?」

 フレイヤが聞いてくる。

「さっきの魔道具屋で錬金術と付与術があれば魔道具が作れそうだなぁと思って、付与術を勉強したいんだ」

「あぁ、ならいいんじゃない?」

「では王立図書館へ」


 またソラさんは警戒しているし、フレイヤはファッション雑誌の様なものをみている。

僕は付与術を勉強し、スキルになったのを見て図書館を後にした。


 あとは細々と道具が欲しくてあっちに行ったりこっちに行ったりしながらフレイヤの服も買ってあげる。ソラさんにも買ってあげようとしたら断られた。


「だめよ?彼女でもない人に買ってあげたら」

「お礼したかったんだけど」

「仕事だからいいの」

「そうです。仕事なんで」

 そうか、仕事だったらしょうがないなぁ。


 宿に帰ると一人部屋で色々やってみる。

 まずは基本のポーションから作ってみた。失敗なんかしないで上級ポーションが出来た。

 

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