第5話 盗賊


 どんよりとした曇り空、こういう日は読書だな。

「僕は今日は図書館にいってくるよ」

「そう?じゃあ私はギルドで仕事してくるね」

「気をつけてね」

「大丈夫」

 そんないつもの会話。


「こんにちわシアさん」

「あ、ケントさんまた来てくださったんですね」

「はい、今日は回復魔法の魔導書でも読もうと思って」

「わかりました、案内しますね」


 回復魔法の魔導書は分厚くて人を殺せそうなほどあるな。

 パラパラと読み進め回復魔法のスキルを取得する。

「今度はどれにしようかな?」


「ケント!フレイヤが!」

 ミーシャさんが図書館に入ってくる。

「え!何かあったの?!」

 僕は急いで外に出る。

「ケント、フレイヤが盗賊に捕まった」

「助けに行こう!」

「いや、狙いはケントだ。恋人を連れてこいって言ってる」

 それなら尚更だ。

「分かった、行こう!僕は彼氏だから」

「くっ、分かった、案内するよ」


 よく行く森の中、名乗りを上げた冒険者と一緒にその奥に行くと、洞窟があった。

 その洞窟に行こうとするとミーシャに止められる。

「まぁ、待って。フレイヤを助けたいんだろ?」

 縄で縛られたフリをする。すぐに解ける様になっている。

「これでやつらからフレイヤを返してもらったらすぐに脱出するんだ。あとは私達が相手をするから」

「はい」


「おい盗賊!彼氏を連れてきた!フレイヤを返せ!」

「ギャハハ!やっぱり男より仲間の方が大事かよ」

「親方呼んでくるからまってろ!」

 下品な女達を横目に冒険者達は隠れている。

「おいおい、えらく早かったな?こいつで遊んでる暇もなかったわ」

“ドサァ”とフレイヤが倒れている。

「ほらこっちに渡しな!」

 僕は初めてこんなに怒っている。

 ミーシャさんが止めるのも聞かずにフレイヤを抱きしめる。

「ハイヒール」

 一回じゃ治りきらないほど傷だらけにされたフレイヤにもう一度ハイヒールをしようとすると、髪を掴まれフレイヤと剥がされる。

「お前はこっちなんだよ!」

「サイクロン」

 女盗賊は風に切り刻まれる。

「親方ぁ!」

「サイクロン」

 洞窟から出てきた仲間らしき盗賊にも風魔法のサイクロンをぶち当てる。

「「ぎゃぁぁぁぁ!」」

 魔法を人に使うなんて思っても見なかったが案外簡単だ。

 フレイヤのもとにまた戻りハイヒールを使う。元の綺麗なフレイヤに戻った。


「テメェが!」

「危ない」

 僕のことを庇ったミーシャの左腕が飛ぶ。

「お前らぁ!サイクロン!サイクロン!」

「ウギャアアァァァアアァ」

 大半の盗賊はサイクロンに巻き込まれて瀕死の重症だ。

「ミーシャ!大丈夫だ!すぐ治すからな!」

「はは、左腕が無くなっちまったから結婚は無理だな」

 死にそうなのにそんな冗談を言ってくる。

「ふざけるな!生きてもらうぞ!僕のために」

 飛んだ片腕を冒険者が持ってきてくれてそれを受け取ると肩にそれを当ててハイヒールを連発する。僕のレベルじゃハイヒールまでしか使えない。

「死なせない!絶対だ」

 僕はバッドエンドが嫌いなんだ。

「ハイヒール!ハイヒール!」

 ミーシャの腕が繋がっていくのがわかる。

「ハイヒール!ハイヒール」

 ようやく繋がったと思ったら魔力枯渇でミーシャの上に倒れ込んでしまった。


 後から聞いた話だとその場にいた冒険者は怪我もなく盗賊団を捕縛、まぁ殆どがサイクロンでやられていたらしいけど。

 ミーシャは左腕を固定してまだ動かさない様にしている。

 フレイヤは今回のことを反省しているらしいが、悪いのは全部盗賊団だし、森に入っていた時に目をつけられていたらしい。ボロボロになっても僕のことを言わなかったらしいが指輪でバレていたらしい。


「ケント、アーン」

「はい、アーン」

「おいひい!」

 腕を固定されてるミーシャの世話をかって出た僕だが、隣のフレイヤが怖い。

「おいミーシャ、右手が使えるだろ?」

「ふぇーん、怪我人にあんなこと言ってくるよー」

 泣き真似をして抱きついてくるミーシャ。

「フレイヤ、ちょっと我慢してね」

「くっ!私が食べさせてやるよ!」

「お前に食べさせられたら不味くなっちまう」

「ふざけんな!このヤロゥ!」

「なんだと!怪我人だぞこっちは!」

 フレイヤとミーシャが戯れている間に僕もご飯を食べる。


 あの時僕がもう少しでもレベルが高かったら回復魔法ももう少しマシになっていただろうな。

 

 レベルをもっと上げないとなぁ。

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