第4話 筋肉痛
「今日も頑張って読むぞ」
「私も頑張って稼ぐぞ」
僕らは二人それぞれの場所に行く。
フレイヤはギルドに、僕は図書館に。
「あ、司書さん、おはようございます」
今日は髪を下ろしているので気づきにくかった。
「おはようございます。私はシアと言います」
「僕はケントって言います。よろしくシアさん」
「はい、よろしくお願いします」
魔導書をまた読み出す。
この魔導書を読んだ後にスキルとして身につくのはクセになりそうだな。
お昼の時間で一息つくと、
「ケントさんはお昼は?」
「僕は外で食べようと思ってます」
昨日は夢中で食べ損ねたからな。
「あのサンドウィッチなんですけど食べませんか?」
「シアさんが作ったの?」
「へ、下手ですけど」
「食べます!ちょうどお腹空いてたんです」
二人で図書館の外の広場でベンチに座る。
「本当に下手なんですが、よければ食べて下さい」
「美味しそうじゃないですか!いただきます!」
「どうですか?」
メガネの奥の瞳がウルウルしている。
「美味いっす!」
「よ、よかったぁ」
「美味いっすよ、シアさんも食べましょうよ」
「あ、はい」
二人で美味しくランチを食べていると、
「ケントさんは渡り人様なんですよね?」
「え?なんで知ってるんですか?」
「え?もう街では有名ですよ?」
有名なの?僕が?
「礼儀正しくてイケメンだって」
「そ、そんなことないですよ」
「わ、私はイケメンだと思いましたし」
顔を真っ赤にしているシアさんにこっちが赤くなってしまう。
「い、いや、ありがとうございます」
否定するのも違うと思い、お礼を言う。
「いえ、こちらこそ」
声がドンドン小さくなる。
「あはは、これで午後も勉強頑張れそうです」
「そ、そうですよね、魔導書頑張って読んでください」
「はい!シアさんも頑張って下さいね」
「はい!」
さぁ、頑張って魔導書読むぞー!
これで身体強化、四大魔法(火水風土)は覚えた。あとは実践してみてレベルを上げないとな。
「あ、シアさん、明日からちょっと実践してくるんで少し来れなくなります」
「あ、そ、そうなんですね。わかりました、頑張って下さい」
少し寂しそうに見えるが、僕もまだまだこの街に来て間もないからな。頑張らないと、
「また来ますのでそのときはよろしくお願いします」
「わ、わかりました」
最後は笑顔のシアさんに戻ったので良かった。
「明日から僕もギルドに行くから」
「え?もう魔導書はいいの?」
「うん、一応実践してレベルを上げたいからさ」
フレイヤにそう言うと嬉しそうだ。
「またケントと二人で門の外にいけるのは嬉しいな」
「僕もだよ」
レベルを上げたらまた魔導書を読んでスキルを増やしていかないとな。
「ケントがニヤニヤしてる」
「いや、ただ嬉しくてさ。頑張ったことが評価される世界なんだなぁって」
「元の世界は違うの?」
「僕の元の世界は頑張っても結果がついてこないと評価されないんだ。こっちはちがうだろ?」
「そんなことないよ、頑張っても結果がついてこないことなんて山ほどあるよ」
「そうか、でも数値化されるだけでも僕は嬉しいんだ」
「そうなんだね」
元の世界で数値化された僕はどれくらいの数値だったんだろうか?考えても仕方のないことだけどね。
こっちでも頑張ってみるしかないしね。
「ストーンランス」
レイブボアの頭にツノが生え倒れる。
「うん。身体強化以外は使える様になったな」
「凄いよ、四大魔法を使えるなんて、魔法使いでやっていけるよ」
「うん、でも身体強化も使える様になりたいんだ」
「私も使えるけど教えるのは難しいかな」
「大丈夫、コツは掴んできたんだ、あとは練習あるのみ」
身体強化に身体がついていかないんだよね、頭では分かってるんだけど上手く身体を動かせてない。レベルが上がればそれなりに使えるのかな?
「剣術とかは練習あるのみ?」
「そうだね、ケントならすぐ覚えられるよ」
そうか、剣術みたいな魔法はないもんな。
「よし!頑張ろう!」
「うん!」
フレイヤに教えられる様に剣を降り、身体強化も使いながらちょっとづつ覚えていく。
汗だくになりながら今日は一日を終えた。
「う、うう、」
「大丈夫?」
「ただの筋肉痛だから大丈夫!」
やっぱり慣れないことはするもんじゃないかな?でも、これを乗り越えたらきっと……
泥の様に眠ったあと、起きるとやはり全身筋肉痛で動くのが痛い。
「今日は宿から一歩も出ちゃダメ」
「出たくても出られないよ」
「そりゃそうね、本当に大丈夫?」
「大丈夫だからフレイヤは行ってきて」
もう喋るのですらしんどい。
フレイヤを送り出すとトイレをなんとか済ませ、後は寝るだけ。眠れないけど。
「回復魔法取ってからやればよかった」
図書館に行って回復魔法を……何時間かかるかわからないのにこれでいっても迷惑をかけるな。
「いい子にしてましたかー?」
フレイヤが帰ってきた。
「あはは、なんとかね」
本当になんとか身体が動くので剣の手入れをしていた。
「危ないわね。ちゃんと寝てなきゃ」
「やることがないとつまらなくて、でもだいぶいいんだよ?」
「それでもダメ!ちゃんと寝てて」
食事まで部屋に運んで食べさせてくれた。
薬も貼り薬を買ってきてくれたのでありがたい。
「ごめんね、ありがとう」
「どういたしまして、動いちゃダメよ?」
貼り薬のおかげかだいぶマシになった。
翌日は雨が降っていたので今日も休み。
イチャイチャしながらゆっくりストレッチをして過ごした。
昨日の雨が止み、朝靄のなかギルドに向かう。薬草の依頼は常設で、他の依頼も見てみる。
「これなんていいんじゃない?」
「ラッシュボアの討伐依頼?危なくないの?」
依頼を見ると体調4、5メートルの猪らしい。
「レイブボアを狩れるなら大丈夫よ」
「ならそれにしようか」
草原の少し奥に森がある。そこがラッシュボアの発見されたところらしい。
朝露に濡れる草を掻き分け森に入る。
ようやく昼過ぎにラッシュボアを発見。
「僕がやるよ」
「大丈夫?」
「いくよ、ストーンランス」
横を向いているラッシュボアの目を狙いストーンランスを発射すると突き刺さり、二、三歩動いて倒れた。
「凄いわよ!ラッシュボアを一発だなんて!」
「たまたまだよ、二発目も用意してたし」
アイテムボックスにそのまま突っ込んで、森を抜ける。あとは薬草を取りながら帰るだけだ。
ギルドの買取所に行き、解体もお願いする。
「ラッシュボアかい!やるじゃないか!しかも傷が頭だけってのがいいね!」
「高く買ってもらえますか?」
「そりゃ色つけてやるよ」
受付で依頼金と買取金を受け取り、買い物に出かける。
フレイヤが指輪を欲しそうに見ていたので買ってあげると喜んでくれた。
「こっちでは右の薬指に嵌めてると恋人いますって意味なの」
と、言うことで僕の分も買って薬指につけている。
「結婚すると左の薬指?」
「そうよ、結婚したらね」
それは一緒なんだな。
ルンルンのフレイヤと一緒にまた街ブラをする。
腕を組んであっちにフラフラこっちにフラフラなにも目的はない。が、楽しい。
次の日も森に行く。
ワイルドタイガーというモンスターを討伐だ。先に見つかってしまったが、こっちには魔法がある。
「ウインドカッター」
前脚を狙い放つと避けられずに前脚が斬れるとフレイヤが一撃で喉を掻っ捌いて倒した。
「危なかったわね」
「先に気付かれるなんて風上にいたのかな?」
「ワイルドタイガーは敏感なのよ。気配で分かったんじゃない?」
そうか、探知系とかの魔導書も読んどかないとな。
「でも倒せてよかったわ」
「そうだね」
アイテムボックスに収納し、来た道を戻る。
レベルはようやく、
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忠野 健人
二十一歳
レベル15
力 D
体 E
知 D
速 E
魔 D
スキル 速読 鑑定 四大魔法(火水風土)身体強化
ユニーク 異世界言語 アイテムボックス
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十を超えて少しは強くなった気がする。
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