第4話 エロフのお告げ
【朗報】新米魔王様、ムチムチボディの女の子だった。
…そんなんありい? なんつーか、久々に互いの実力を理解し合っていて、良い感じの絆とかを育みつつ共に数多の試練を超え〜みたいな冒険譚の軌跡を描くと思っていたんですけど。
「ッ…!」
生唾を飲む、乱れる呼吸を整える。待ちなされ、まだ慌てる時間ではないアルヨ!!
「たかが好みどストレートな女の子が魔王になっちまった上に、その魔王をこれからハーレムに引き込むだけの話よ! …はっ、違う!!」
アイレアはハーレムを
「それに冷静に考えても見ろ。これから11の転生者達とやらを斃すんだ、長旅になる」
アイレアとの付き合いはそこそこに長くなる事は自明の理。出会って間もない男が無理矢理に迫れば、彼女の心を傷付ける事になるだろう。
「そもそも! 俺はイチャコラハッピーなハーレムを築きたいわけよ? 不和な仲の女の子がいたら気まずいでしょうが」
申し訳程度の照明を消し、足早にアイレアの眠るベッドに潜る。当然、紳士たる俺は無防備な魔王に背中を向けて眠る。簡単な事さ、ネビュ! ただ目を瞑り睡眠欲に全てを委ねるだけ…。
(…にしても温いなぁ、アイレア)
女の子の体温は男よりも高いらしいとは聞いていたが、本当だった。それに、僅かに甘くて落ち着く匂いがする。背中の魔王様から漂っているのだ。
(先代の魔王も『香りには造詣が深いのでな』と自慢げに語って来たのを覚えている。あれは確か地獄の最下層で斬り合っていた時だっけ…懐かしいな)
思い出に耽りながら寝返りを打つと、そこには絹のように滑らかな黒髪が広がっていた。不意に下方向へ滑った視線が遂に見てはいけない場所を捉えてしまう。
「えっっっっっ」
ろいわ!!! なんじゃこりゃ!?
「おっぱいって…でかい…」
俺は真実なんて何一つ見えていなかった。幾多の死線を乗り越えて、ヒトという種の限界すら超えているらしい力を手に入れて尚も、こんな身近で重要な事に気付いていなかった。
「美しい…!」
そんなマジマジと見た事もなかったもんで、機会を得ると感動的なまでの曲線美だなと感動してしまった。
「スゥ…スゥ……」
「陛下〜? 寝てる〜? …堕ちたな」
陛下の玉体が無防備である事は完全に証明された。
「そうね、無防備なんだから〜もう」
再びアイレアに背中を向ける。良いもん見れたし、彼女の玉体に淫乱な事をしてはいない。これが、ウィンウィンという奴だな、うん。欲を言えば触れてみたいとは思うが、良くないと思うな流石に。
「幾ら俺が性欲以外の娯楽を持たない男だとしても、出会ったばかりの無防備な寝ている女の子の身体に触れるなんてしないしない」
これでも、勇者なもんでね? 道義に外れる事はせんのですよ。おやすみ、世界。
……………………
……………………
……………………
「え、やわらか」
「ンン……」
「おんなのこって、すごい」
「スゥ…スゥ……」
「はっ!?」
気付いたら俺はアイレア様の玉体を両手で鷲掴みしていた。下着越しではあったが、指の沈む感触・暖かな温もり・確かにある弾力と未知の領域のデータを得る事に成功した…
「最低だ…俺」
事後に何を言おうが言い訳でしかないわけだけど、女の子と同じ部屋で過ごすのって人生で初めてなんすわ。雄としての本能が、理性を凌駕してしまった、アイレアのエチエチボディが私の心を射止めてしまったのです。
「取り敢えず土下座かな…土下座するならもっかいくらい揉んどくか?」
何故か逆に開き直って、無防備なアイレアの方へ向き直った途端。
「何だ…いし、き……が……」
———
『…! 精神世界…という事は』
『はい、私が御告げに参りましたよ』
『クラース・ポエマ=エピコ……』
『お久しぶりですね〜、1,021日振りに見る貴方は良き男性になったなと感じます』
『…11の異世界転生者・ラスボスとは何者だ?』
『もうお聴きになったのですね〜、貴方にはいつも通りの事が起こる…というだけの話ですわ』
『11体
『いいえ』
『…お前の御告げとやらは
『何度も申し上げている通り、私が手ずから災禍の種を世界へ落としているわけではありません』
『…』
『…フフフ、信用なさらなくても結構ですわ。そ・れ・よ・り・も〜』
『!? 俺の身体に何を…!』
『若き魔王への
『御告げを得る為には清らかな身体である必要があるんじゃなかったっけか?』
『身体さえ清らかであれば魂も心も自由なんですのよ、私達って♪』
『くっ…ヘンタイエルフめ!』
『嗚呼!! そんな眼差しを向けられると私も興が乗ってしまいます♡♡♡』
———
「…! まさかあんなエロフに感謝する日が来るとはな…」
脳内が予言と色欲だけで構成された存在に頼ってしまった自分が情け無い。
「…うぉお…下着を大至急変えないとねえ」
「ネビュ! 大変だ!」
「!? 何事なん?」
振り返ると、大声を上げたアイレアが龍の頭を象った赤い杖を構えていた。
「イカ臭い魔力を感じる…未知の状態異常だ!!」
「いや、これは違くてですね…え、ちょ—」
「『
まずい!! ギルドが丸ごと消し炭になる!! 咄嗟に魔力強化の丸薬を齧る。
「『
俺の前面に異次元へと繋がる結界を張り、
「アホですかアンタは!! 街中で山一つ消し飛ばす様な魔法を使うんじゃありませんって!!!」
「…すまん、つい」
「つい、じゃないでしょーが……」
人生で2番目くらいに緊張したかもしれないねえ。例えオツムが弱くても分別くらいあると思っていたのに…はあ。
「これは…そう、解呪出来ないタイプの呪いだから気にしないで!」
「股間がイカ臭くなる呪いか…そんな変な呪いをよく掛けられたな」
「…そうだな」
そんな呪い掛けてくる奴がいたら、俺が完全に亡き者にしてやりますぁ。
「少し着替えてくる」
「分かった、終わり次第クエストボードの前に来い」
「りょーかい」
……土下座するタイミングを逃した。
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