第4話タイムリミット


天音は、あの後同じ時間を繰り返している事について聞こうとした。

「とりあえず詳しい話は、あそこに行ってからにしよ。みんなにアマネの事紹介したい&ちょっと聞きたいことがあるからね」 

と言われ、答えてもらえなかった。

クレアは、瓦礫の辺りをいじり始めた。

何かを探しているようで、ポイポイと瓦礫を投げている。

「じゃーん!!無限レザーポーチ!!」

がらがらと周りの瓦礫をおとしながら、小さい皮の茶色ポーチを取り出した。

結構使い込まれるように思える。

でも、かなり小さいな。

「そんな小さいポーチに無限って名前が、ついてるのか?」

「そう見えるでしょー。でも、そうじゃないだよね」

クレアは、雨宮を掴みポーチに押し込もうとした。

無理でしょ。

俺広辞苑くらいの分厚さあるけど、そのポーチ口からして入りそうに無いだけど。

そう思っていると、パチンって音がした。

音がすると同時にみるみるとポーチの中に天音は、入っていった。

天音の視界のためか、全部ポーチに入れず半分くらいは見えるようにしてくれた。

「えー!?質量とか物理とか色んな物無視してない!?」

「そのシツリョウとかは、知らないけどこれは魔道具って言うの。このポーチは、魔女ならみんな持ってる物だよ」

「自分がいた世界なら大発明だよ」

まぁ魔法がある世界なら、魔道具もあってもおかしくないか。

このポーチは、外から見た目と中の広さが、合っていない。

中の広さは、正確には分からないが、少なくとも自分を余裕で入れるスペースは、あるって事になる。

これめちゃくちゃ凄くないか?

「ポーチも見つかったし、さぁ行きますか!」

そう言うとクレアは、見つかったポーチを腰に身につけた。

そして、予備動作一切なしにボロ壁をピョンって飛び越えた。

身軽なのは、身体が小さいおかげか。

さっきまで、クレアの身長に合わせた世界し見えなかったが、壁を越えた事で、一気に見える世界が増えた。

「凄い。まるで、演劇の世界みたいだ」

それが、見える場所が広がった世界の感想だった。

今にも優雅な音楽が流れてきそうなレンガの建物。

オレンジや青など様々な色の家が建っており、観る者を飽きさせない。

これが、全部作り物で、今から誰かが歌い始めてミュージカルが始まってもおかしくないと思う。

そんな街並みが見渡す限り広がっている。

道も綺麗に整備されており、でこぼこしておらず全て真っ平になっていた。

そんな整った道をクレアは、歩いていく。

歩いている方向からして、街の中心に向かっている気がする。

「演劇かー。案外間違ってないかも。実際私たちは、同じ事を繰り返してわけだしね」

「一つ聞いていいか。どうして誰も居ないんだ。こんなに立派な家が並んでいるのに、どこも人が住んでる様子がない」

あまりにも綺麗すぎる。

道も建物も本当に今出来たような感がする。

「アマネの言葉で、言うならここは舞台裏だから。ここに居ても時間の繰り返しを止める事が、出来ないからね。だから、最後の日のチャンスを待ってみんな街の中心に集まってる」

「最後の日?」

「四日で、この街はまた最初の一日に戻るようになってる。その4日目にあるイベントがある。それが、この街から出る為に関係してるじゃないかってみんな考えてるみたい」

ここは、この街から出る為には、関係ない場所だから誰一人いないって事か。

この街から脱出する為に重要なイベントが、街の中心で、起こるなら自然とそこに集まるよな。

「だから、私達も今から街中心に向かいましょって事」

「じゃあクレアも最初から、街の中心に居れば良くないか?」

「そんなの面白くないじゃない!こんなに不思議な街なのに探検しないのは、勿体ないよ。今だって探検したおかげで、こんなに面白い物に出会えたわけだし」

「そう言ってもらえるとこっちも本になった甲斐があったもの。でも、探検なら他の人も連れてきた方が、良くないか?」

「あー、ダメダメ。みんなそんな余裕ないから。終わりの街って言われてるくらいだし、みんな脱出以外の事に興味持ってないから」

そう言った後、会話が途切れた。

別に聞きたいことがなくなったわけではない。

その逆で、聞きたいことがあり過ぎて言葉が出てこないって感じかも知れない。

クレアは、凄く機嫌が良さそうにスキップしながら進んでいる。

さっきの興味津々な顔からして、感情がわかりやすい子だと思う。

ふと思った事がある。

「そういえば時間がループしたら俺ってどうなるの?」

「多分消えんじゃないかな?ここの建物は、ずっと綺麗だし、時間の繰り返しに人以外は持ち越されないじゃないかな」

「まじで!?消えるって嘘でしょ!?」

「ちなみに明日で、また最初の日に戻るよ」

どうやら俺の命は、後一日のようです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る