第3話終わりの街
「終わりの街?そんな物騒な名前つけられる事ある?」
天音は、クレアに聞いてみるが、まったく返事が返ってこない。
さっきから天音をペラペラと捲っており、興味津々って感じの目で、見ている。
ペラペラと捲られてる感じは、なんだかくすぐったい感じ。
ページ一枚一枚に触れられてる感覚はあるだけど、今までの体に当てはめる事が出来ない所。
そんな不思議な感じがする。
「終わりの街は終わり街だよ。人生の終わりだし、冒険のおわり。この街は、一度入ったら2度と出る事が出来ないの」
ちゃんと聞いてたんだ。
それよりも二度と出る事が、出来ない?
そんなバカな。
「ここは、街なんだろ?だったら何処かに入り口が、あるだろ?そこから出ればいいじゃないか」
入り口が、あるなら出口だってある。
天音は、当たり前で常識的な事を言ったはずだ。
しかし、クレアはアハハと口を大きく開いて、笑い始めた。
本当におかしな物を見つけた子供のように、ケラケラと笑っている。
「ごめんごめん。そっか、異世界の人と話すのってこんな感じなんだ。当たり前の事が、当たり前じゃない。同じ言葉を話しているのに同じ意味ではない。多分、そんな事ばっかりなんだろうね」
クレアは、そう言うと天音をパタンと閉じた。
そして、左ポケットからメモ用紙くらいの紙を一枚とりだした。
その紙をぴらぴらと数回ぴらぴらと揺らし、左手でぎゅっと握った。
紙は握られると突然燃え上がった。
ガソリンが引火したようにタイムラグ感じられないほどに一瞬で、紙は黒い煤になってしまった。
「これが、さっきアマネを焼いた焚き火の魔術。おそらく魔術を見て、体験した感想をどうぞ」
「こんな一瞬燃え広がる火で、俺を焼いたの?何回も言ってけど、人間だからね?」
本当に怖すぎなんだけど。
「それは、一旦置いといて他に気づいた事ない?」
置いとけるものじゃないと思うが。
「一瞬で燃え広がった所が、気になったかな。その紙に何か細工でもしてあるのか?」
「だから、一瞬で燃やしたのが焚き火の魔術なんだよ。魔術は、魔素に記憶させる事を言うの」
一生懸命説明してくれるのは、嬉しいけどまったく理解できない。
そりゃあ魔術や魔法なんてものは、アニメや漫画とかの知識でなんとかなく想像出来る。
でも、魔素が記憶する?
ここの部分がまったく想像出来ない。
天音が理解出来ず悩んでいる事を分かってか、クレアが話を続ける。
「魔素は魔術を使う為の燃料みたいなものだよ。形とか質量なくて見えないけど、今もたくさん存在してるよ。水に置き換えてくれると分かりやすいかも。いつもは、湯気みたいにふわふわと浮いていて、冷まされたら水とか氷になる感じ」
なんか授業を受けてる気分になる。
クレアの話を聞いて考えてみる。
とりあえず空気中には、魔素って言うのが、それを何らかの方法で、集めると魔術になるって事かな?
「なんとなく分かっだけど、それと魔素が記憶するとどう繋がるんだ?」
「いい質問だよ。魔素には、その場所にある物やそこで起きた出来事を記憶する性質があるの。私が使った焚き火の魔術を例として出すね。あれは、私が凍えるほど寒い日にどうにか暖まろうと思い、家に火をつけたの」
例えのエピソードが、ヤバすぎる。
家燃やしたら、その場は暖まっても住む場所がなくなるんだから、その後地獄だろ。
「それで、まだ寒かった私は、腕を火に入れたの。めちゃくちゃ熱かっただよね」
と言ってクレアは、手のひらを見せてきた。
火傷のような痕は、ほとんど残っていなかったが、所々皮膚の色が違った。
治療の後って事なんだろう。
「さっきからエピソードが、ヤバすぎる」
「別に普通だよ〜。それで、その日以来私は、火傷した左手から火を出せるようになったんだ」
「どう言う事?」
「魔素が持っている記憶する性質を利用して、それを再現する事が魔術なの。つまり私の焚き火の魔術は、あの日私が火傷した火を再現したって事なの」
うーむ。
いまいち想像が出来ない。
魔素が色んな形になるって事は、分かる。
でも、記憶と再現するって事が、想像出来ない。
それに元々終わりの街からの出られないって話だったはずだ。
今の魔素の話と何か関係あるのか?
「分からないところもあるけど、大体は理解した。でも、それと終わりの街と何か関係あるのか?」
天音が今までの話との関係をクレアに聞こうとすると、視線が真上に動いた。
そこには、さっきほども見たように、分厚い雲が太陽を隠していた。
「見える?すごく曇ってるでしょ。この雲のほとんどが、魔素なの。見えるくらい濃い魔素が空を覆ってるの」
「そんなバカな。魔素ってものをよくは知らないけど、こんな空を覆うなんてあり得るのか?」
「普通ではあり得ないよ。でも、この土地には、永遠に大量の魔素がこの場所を覆ってるの」
クレアの話からして、この場所が大変危険なところだって分かる。
じゃあ、なんで街と呼ばれるほどに人が集まるんだ?
危険な場所なら、誰も近づかないはず。
そんな事を考えていると、また視線が動く。
「この永遠に出続ける魔素が、この街から出られない原因。さっき魔素には、記憶する性質があるって言ったでしょ。この街は、高濃度の魔素によって記憶されてるの」
「? もっと簡単に言って欲しい」
「さっき言ったように、私の焚き火の魔法は、家を燃やした火を再現してるの。もし、なんでもない一日を高濃度が永遠に再現したらどうなると思う?」
「同じ一日を繰り返す?」
「当たり。この街は、なんの変哲もない一日を永遠に繰り返しているんだよ」
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