第一章 本の出版が決まりました…

「薬草?」

「ええ、なんぜ自分は薬売りなんで」

「ふむ、そうなのかい?」

「ええ。旅をしながら薬の材料になる薬草を集めたり作ったりしたものを、時々こうやって村や街に寄って売っています」

「すばらしいな…それに絵がとてもうまい」

「まあ…自分だけの教本ですからね。汚く描いて使えなかったら意味ないですし」

「これを売ろうとは思わないのか?」



 

またびっくりされた。




・・・変なこと言ったかな?




「これをですか?いやあ、さすがに完成してないんで、無理ですって」

「そうか…」




笑いながら言ったら、今度は真面目な表情をされた。




・・・なぜ?




「では、我がロラン家があなたを支援しよう」

「へ?」

「支援する代わりに、この本が完成したら、真っ先に私に見せに来てほしい」

「え、え?」

「この本にはそれくらいの価値がある」

「え、ちょ、ま」


急な提案だったので、俺をからかっているのかと思ったが、先ほどと違って目が笑っていない。

真剣な顔でこちらを見つめていた。




・・・妹さんと一緒で、この人も表情が変わりやすいんだなあ




理解が追い付かず、違うことを考えてしまったが、レイの「…で、どうだろうか」という声で正気に戻った。


「ええと…はい、喜んで?」











息子よ・・・ととさん、本の出版が決まりました。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る