第一章 いい気分が最悪だ

「・・・ん?」


二人で仲良く串焼きを頬張っていると、視線を感じた。

ねっとりとしていて、とても気持ち悪い視線だ。しかも、一つではない。


思わず眉間にしわが寄る。せっかくいい気分だったのに。


「・・・ととさん?」


「あ、ああ。なんだ?」


視線に意識が逸れていて、反応するのが遅れた。


「どうしたの?」

「ああ、いやなに。気にするな」

「そう?」

「串焼き食べ終わったか?なら、デザート買ってきてやるからここでじっとしてろよ」

「うん、わかった」


父親の無理やりな話題転換に何かを察したのか、さり気なく串焼きのおっちゃんの屋台の横を陣取る息子。



・・・察しの良い息子は父ちゃん好きだぜ!



きょろきょろと辺りを見渡し、「お、あれおいしそう」とイチゴアイスを売る屋台へと進んでいく。

すると、それに合わせるようにいやな視線も動いた。



・・・狙いは、俺か?









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