第4話 書き出しの一話でさらに期待を煽る 1
書き出しの一文には「物語を前に進める」ことが求められます。
ですがそれだけで第2話のPVが維持できるわけではありません。
第1話全体を通して、読み手の期待を煽れるかが問われます。
会話文が少ないのはNG
会話文からスタートするとフックにしづらいのは前回述べたとおりです。
しかし第一話の早いうちに会話文が出てこないのも、読みづらさを助長してブラウザバックをされる原因になります。
文字がびっしり詰まっていると、読んでいるのがとてもつらくなります。
とくに一見さんがあなたの小説の紹介文を読み、面白そうだと思ってクリックしたら、画面いっぱいに文字が詰まっている。
たったそれだけのことでブラウザバックされます。
読み手を圧迫するほどの密度で小説を書いてはなりません。
とくにWeb小説では原稿用紙を気にせずつらつらと書けるため、気づけば情景描写を画面いっぱいに展開してしまうこともあります。心理描写も然りです。
ですが、それは大魚を取り逃す行為といえます。
適度に会話文を設けて、意図的に空白を作っていきましょう。
話が膨らむきっかけを書く
たとえば「悪の大魔王を倒す勇者の話」という身も蓋もない物語があったとします。
そのとき、第一話はどうあるべきでしょうか。
最も必要なのは、最大のイベントへつながる小さな「きっかけ」を書くことです。
たとえば「村に弱い魔物が現れて、いいところを見せようと勇気を振り絞って戦う」姿を見せます。
開始当初はアクションに出て「弱い魔物と戦う」のですが、これが状況を一変させてトラブルを引き起こし、より強い魔物を呼び寄せ、ついには大魔王と戦うことになるのです。
つまり最大のイベントである「悪の大魔王を倒す」ために、小さな「きっかけ」として「弱い魔物と戦う」ことになります。それが状況を一変させ、トラブルを引き起こして最大の問題が露呈します。
標高の高い山の頂きで小石を蹴飛ばしたら、落下による加速がついて大きな石を転ばせ、それが連なることで大岩が転がってしまう。そういう表現がありますよね。
物語の最初は「きっかけ」にすぎませんが、それがトラブルを生んで「紹介文」に書いた展開を呼び寄せ、さらに大きなものへと挑んでいくことになる。その極みが最大のイベントなのです。
だから、第一話では最大のイベントにつながるトラブルを引き起こす、小さな「きっかけ」を書きましょう。
それが読み手の中で連想が膨らみ、きっと立派な勇者になって最大のイベント「悪の大魔王」に挑むのだろうと期待するのです。
このように、結のイベントを示唆する第一話のイベントであるべきです。
十万字の物語では、意外とイベントは起こせません。よくて起承転結のそれぞれにイベントを起こすくらいです。ひとつのパートでふたつのイベントが同時進行することもありますが、それはひとつの「同時進行イベント」であって、ふたつの別々のイベントではありません。
フックのためだけの第一話ではすぐ見切られる
前回「フック」について述べましたが、フックのためだけに第1話で完結する小さなエピソードを書いてはなりません。
書き出しは「フック」であるべきです。しかし、フックのためだけの第1話では駄目なのです。
その出来事をきっかけに、本編の核心的な物語が動き出すような、そのスターターとなる第1話が必要です。
必ず全体の本編とつながる出来事でなければなりません。
端的にいえば、起承転結でそれぞれひとつのイベントを起こします。(転はリアクションのイベントであることが多いです)。
その規模の大小は、起が最も小さく、結が最も大きくなるのです。この最大の結のイベントを引っ張り出すための起のイベントが必要なのです。
そのために、第1話のイベントはトラブルを引き起こして「必ず失敗」してください。
たとえ戦いには勝ってもトラブルを引き起こしたらそれは「失敗」です。最終的なイベントの大きさを強調することにもなります。
第1話で小さなイベントであっても解決してしまうと、それ以降読まなくてもいちおうの満足を読み手は得てしまいますからね。
第1話で起こるイベントにはトラブル発生で「必ず失敗」するのです。成功して満足させてはなりません。
第1話が「フック」として機能する秘訣です。
物語の開始はトラブルの発生から
皆様は十万字というと「長いな」と感じますよね。しかしそんなに長くないんですよ。
物語をどこから始めるのかは書き出しを決めるうえで最も重要です。
理想的なのは、主人公がイベントに挑んでトラブルを引き起こすところから始めます。
これ以前はバックストーリーと設定があるだけです。どちらも本編とは直接関係しません。物語のスタートは、まさに「イベントがトラブルを引き起こす」ところがふさわしいのです。
いきなりイベントが始まると、「どんな事態なのかな」と読み手に興味を植え付けます。そして主人公がしくじってトラブルを引き起こします。
すると「こんなことになってしまった。これから主人公はどんな目に遭うんだろう」と不安に思います。
「どんな目に」とはなにかわかりませんから「謎」といえますね。
またトラブルを引き起こしたら、主人公に全編が終わりを迎える目的も生まれます。目的を遂行するまで本編は追われないのです。
書き出しのシーンを決めるなら、この「主人公がイベントに挑んでトラブルを引き起こす」ところしかありません。
それ以前は蛇足にすぎないのです。
この蛇足に何千字もあてるのは貴重な文字数を浪費しているのと同義です。
書き出しで伏線を張るパターン
これから起こることを予兆する書き出しもあります。
すべての書き出しが結末や重要な展開の伏線となっているわけではない。ですが、すぐれた書き出しは伏線が含まれていることが多いのも確かです。
伏線は、これから起こる問題が予想よりも重大であると読み手に知らせる手段であり、また重大なことが起こると明確に伝えるものもあります。
いずれにせよ、書き出しで「核心」を予告する手法は、読み手に謎をふりかけて誘い出す一手として使えます。
ただし、あまり露骨に伏線を張るとかえって白けますので、程度をよく勘案しましょう。多くの伏線を張ろうとせず、「核心」の問題を予告するだけにとどめれば、高い効果を発揮します。
とくに物語の根幹をなす単語があれば、それを1ページ目に書いておくと、読み手の頭の中に伏線として残るので、物語をより深く理解してくれるようになります。
言葉の効率を高める
「セーラー服」で人物が女子であり学生であるとわかります。
「オタク」でなにかに熱中している、熱狂的な人物だとわかります。
このように言葉には複数の意味合いを兼ね備えるものがあります。
「校舎」であれば「学校の建物」のことですが、勉強と運動に明け暮れた青春の象徴でもあるのです。
「一文一意」が文章の基本ですが、書き出しに関しては「複数の意味合いを兼ね備えた言葉」を使って、より効率的に読み手へ情報を伝達していきましょう。
MBS系列『プレバト!』の俳句査定で、夏井いつき先生が添削している場面を見れば、俳句ではいかに「文字の効率」を考えるのかがわかります。
そもそも俳句は五七五の十七音で風情を伝えなければなりません。そのために「複数の意味合いを兼ね備えた言葉」を使います。
この発想は小説の書き出しも同様です。
いかに少ない文字数で最大の効果をあげられるか。書き出しの一文で読み手の心を掴まなければならない。書き出しの一話で興味を惹かなければならない。
だから俳句のように、短い文字数で風情を伝える努力が必要です。
「マイク」と書けばアナウンサーや歌手、MC(司会)などに関係があると思いますよね。「オーディション」なら歌手、ダンサー、俳優、声優などをイメージさせます。
どんなものにもピッタリと当てはまる魔法のフレーズがあるはずです。
それを拾い上げられるかどうか。
書き手の知識とセンスが問われます。
最後に
今回と次回は書き出しの一話について書いてあります。
ちょっとしたテクニックですが、知らないより知っているほうが有利ですし、実行したほうがさらに有利です。
次回も引き続き「書き出しの一話」についてです。
20時30分に投稿致します。
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