第2話 書き出しの一文ってとても重要 1

 第1回において、いかに検索にかけるかをご紹介しました。

 きちんと行なえば第1話のPVを高められます。

 そして本作を読む方の多くは「第2話でPVが激減する」ことで悩んでいますよね。





いかに納得させるか

 皆様は、第1話のPVが高いのに、第2話以降のPVが振るわないですよね。

 それは第1話で「読み手を納得させて」いないから。

 「満足させる」ではなく「納得させる」です。これを履き違えてはなりません。


 では「満足させる」と「納得させる」の違いを見ていきます。


 まず「満足させる」とは、第1話で盛り上がりとオチを作ってひとつの小さな物語が完結すると、読み手は「ひとつの物語を読んだな」と思って「満足して」しまいます。

 そして一度満足してしまうと、そこで読む手が止まるのです。

 なぜかというと、読み手はいつでも読み終える理由、見限る理由を考えているからです。

 だから第1話で「盛り上がりとオチをきっちり作る」と第一話だけで読み手の感情が満たされて、「面白いものを読んだな」という感想とともに読みさしてしまいます。


 つまり小説を書く腕があればあるほど、第2話のPVが下がってしまうのです。

 もちろんランキングに入るほどの集客力を身につけたら、第一話で(盛り上がりとオチを加えた)小さな物語を作るのは「あり」です。条件があるとすれば「謎」を残すことです。

 ですが、これから成り上がろうと思う方は、第一話で満足されるとそこでPVが止まってしまいます。

 段階によって狙いは変えるべきです。人気がつくまでは第一話で「満足させて」はなりません。


 ならば「納得させる」とはなんなのでしょうか。「満足させる」とさして違わないと思いますよね。

 「納得させる」とは紹介文までに煽ってきた読み手が「なるほど、そういう物語か」と腑に落ちることを指します。期待と作品を一致させるのが「納得させる」です。


 紹介文までに「異世界転生」と大々的に煽ったのなら、第一話で異世界に転生していなければならない。

 「追放」ものなら、第一話でパーティーや組織から追放されなければならない。

 煽られた期待が偽りでなかったことを証明し、続く物語の内容を担保するのが、正しい第一話の役割です。


 一見さんの多くは「検索」から訪れます。

 検索ワードでリストを手に入れ、その中からタグ、タイトル・キャッチコピー、紹介文を読んできました。それらで期待を煽られたから第1話をクリックするのです。

 しかし第1話でその期待がまったくの空振りだったら。

 第2話を読もうとする意欲が萎えてしまいます。


 第2話への継続率を高めるには、「第1話で読み手の期待に応えて納得させる」ことが必要です。

 いえ、それすら生ぬるいかもしれません。

 「書き出しの一文が読み手の期待に応えているか」が最も重要です。


 第一文はどのような文を求められるのでしょうか。





読み手は読まない理由を探している

 Web小説はインターネット上に重複も含めれば一千万作は存在するでしょうか。

 これだけ膨大な作品の中から、読み手は読みたい作品を選んでいます。

 そして「読むなら名作だけを読みたい」と思っているのです。

 だから、タグ、タイトル・キャッチコピー、紹介文で煽られた読み手はまず第1話をクリックします。


 そして第一文をチェックして、読み進めてよいか、ブラウザバックして他の作品を探そうかを決めます。

 つまり第一文を読んだだけでブラウザバックする読み手が殊のほか多いのです。

 だって、第一文を読んでつまらなそうな作品に期待できるほど時間が無限にあるわけではないからです。


 読み手はいつだって「読まない理由」を探しています。

 読み専さんは第一話の書き出し第一文を読んだだけで見切る人が多いのです。

 では「一文切り」にあわないためには、どうすればよいのでしょうか。


 「小説の書き方」に関するる創作論をいくつか読んだ方ならおわかりかと存じます。

 「フック」です。





フックとは気に留めること

 最もよい書き出しの一文は「フック」になっています。

 「読み手を興味を持って読み進めてくれるような文章」が「フック」です。

 日本語で最も適切なのは「気に留める」そして「謎」に当たります。「見逃せない」も入るでしょう。

 たとえば書き出しの一文に、

「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった。」(川端康成氏『雪国』)

 とあったとします。この一文が「フック」になっているのは、「なにがトンネルを抜けたのか」「雪国とはどこのことか」がわからないことです。

 わからないから情報を補完したくなります。

 そうなれば自然と次の文を読みたくなるのです。


 「フック」とは「気に留める」「見逃せない」ことで詰まるところ「謎」に値します。

 ただ謎を書いたからと言ってフックになるわけではありません。

 第一文にたどり着くまでに、読み手を煽ってきた状況から「納得する謎」であるべきです。

 紹介文のない『雪国』は、タイトルが第一文に含まれていますよね。これが「納得できる謎」を構成しているのです。


 Web小説ではタグ、タイトル・キャッチコピー、紹介文を読んで期待が高まった作品の第一話がクリックされます。

 そして表示された第一文が「煽られた内容」から離れていたら、そこでブラウザバックされます。「異世界転生」と煽ったのなら、第一文は「異世界転生」から離れてはなりません。


 単に謎を出せばよいのではなく、紹介文までに「煽られた内容」に絡めた謎のある一文が望ましいのです。

 ここで「おっ」と思わせられたらしめたもの。続く文も読んでもらえます。

 Web小説における「フック」とは、「煽られた内容」に絡めた「謎」を提示して「気に留める」ように仕向けたものです。





設定はフックにならない

 小説は大なり小なり書き手が設定を作っています。

 せっかく作ったのだから、そのすべてを読み手に伝えたい。

 その情熱が、書き出しの第一文から設定を書かずにおれないのです。

 それも無理はありません。

 書かない設定があるなんて、多くの初心者は文字数を損をしたように感じるからです。

 ですが、これは悪手にほかなりません。

 読み手は設定が読みたいのではありません。主人公を中心とした人間関係の物語を読みたいのです。


 たとえば、

────────

 ロシアが侵攻してくるまで、ウクライナの国土はとても豊かだった。農業大国として世界の食糧庫といわれたほどである。内陸部では小麦やとうもろこしを、川や灌漑の近くでは水稲を育てていた。そしてその穀物はアフリカ諸国や中東諸国などの食を賄ってきたのである。しかしそのすべてはロシアによる軍事侵攻によって奪われてしまった。


────────

 のように、設定をつらつらと書き出して、さも「小説を書いた」気持ちになるのがいちばん怖い。


 これは単なる自己満足です。読み手が読みたいのはこんな設定ではないのです。

 小説では「主人公の感情の移り変わり」「主人公と他人との人間関係の移り変わり」が読みたいのです。

 それなのに設定をつらつら書いても「主人公の感情や人間関係」はまったく動きません。


 第1話の書き出しで設定を語らない。これを意識すれば、最悪の事態は免れます。





最後に

 書き出しの一文で読み専さんがブラウザバックしないために、「フック」を意識してください。

 タグ、タイトル・キャッチコピー、紹介文までに煽ってきた内容と謎を含み、物語を前に進める一文が、書き出しでブラウザバックを防ぐ最大の防衛策です。

 第1話をすべて読ませるための前提条件にもなります。

 第2話PVが低い方は、まず第1話書き出しの一文を確認してください。

 たいていはここで失敗してブラウザバックされていますよ。




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