第18話:はじまりはじまり

「んで、最初はどこに行くんダ?」


 まだ映画まで時間がある。それを踏まえての質問だったが。


「……悪い、考えてなかった」

「そか、んじゃその辺をブラブラするカ」


 たまには目的にとらわれない散策というのもいいものだ。

 何より一番の親友とこうやって来られたこともどんなことよりもプラスになる。


「と、とりあえず、色々回るか」

「あァ」






 ◇◇◇◇◇






 それから俺たちはショッピングモールへ入り、色々な支店を冷やかして回る。


 ―――置物屋にて


「お、この置物かわいいナ」

「ほーん、こういうのが好きなのか?」

「あァ、ただ、こういうのは見る分にはいいんだガ、置くとなると場所がナ」

「確かに、俺も親からの海外の変なタペストリーなんかで部屋がいっぱいになりかけたし」

「ニャハハ、あの時のゆーきの部屋は散々だったよナ」

「笑い事じゃないんだよ」


 ―――本屋にて


「なんか気になる本はあったか?」

「うん、これなんかどうダ?」

「『ランタンとコルシャミ』?概要はどんな感じなんだ?」

「世界の終わりが刻まれていると言われている時計を中心に様々なことが起こるって感じかナ」

「ふーん、難しそう」

「まァ、哲学が絡んできそうなものはだいたい難しいサ」

「そんなもん?」

「あァ、そんなもんサ」


 ―――音楽ショップにて


「ピアノとか触ったこと無いな〜」

「どレどレ〜」


 永遠の細い指が鍵盤に触れるたび、儚く、温かい音が空気を通して伝わる。


「……上手いな」

「どーモ、ゆーきはどっちかというとトランペットが似合いそうかナ」

「流石にトランペットの体験は置いてないな」

「残念、サックスだったら吹けたんだけどナ」

「すごっ!?」


 そうこうしている間に時計の針が映画の時間に合わさっていく。


「今回見る映画はどれダ?」

「これ」


 俺が指さしたのは超人気シリーズの映画版。巷で人気のラブコメディだ。


「あァ、なんもしてないのにハーレムになるやつダ」

「憶え方最悪すぎるだろ」

「ニャハハ!冗談冗談!……毎回どこかしらでヒロインが増えてるやつだナ」

「あんまし変わんねぇ」


 予め母さんが取ってくれていたチケットで映画の席を取り、それを使って俺たちの席に座る。


「私さ、映画が始まる前の予告が好きなんだよナ」

「へぇ、結構ニッチだな」


 シアター内ではお静かに、小声で話しながら映画の内容を考える。永遠は入る際にもらった付録の本を読んでいる。


 少しずつ、シアタールームの中の明かりが暗くなっていく。

 ポップコーンの準備はいいか?さぁ、始まりだ。


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