第16話:デート準備

「……セ……殺セ……」

「こらこら、そんな事言わないの」

「そうですよ、ほら、そこでうずくまってないで、ほーら!」


 私たちは今、アウトレットパークに来ていた。

 理由は簡単、永遠ちゃんの服を買うため!


「別に、いつもの格好でいいと思うんだガ」

「いやいやいや!ここはこだわるべきでしょ!」

「そうそう!せっかくのデートなんですから!」

「デートっテ……」


 実は作中、小学校の頃に二人でデートをしたというエピソードが昔の思い出として語られることが会った。しかも事細かに、詳細に。

 つまるところ、原作者にとってもイチオシの話なのである。

 それに本気を出さずしてどうオタクを名乗れようか。

 それに―――


「エイエンちゃんをコーディネートしてみたい……!」


 私の推しが、今目の前にいるのだ。

 本人の意識は高校男子かもしれないが、それを差し引いてでも推しに会えたことは何より嬉しい。しかもその友人をやれてる。2度お得!


「はァ、もうどーにでもなーレ……」


 早速、諦めモードの永遠ちゃんと一緒に、服屋さんに向かった。






 ◇◇◇◇◇






「永遠ちゃんってスカート平気だよね」

「あァ、この体に生まれてからは、もう何も考えないようにしながら着るようにしてル。だけどナ……」


 バッと試着しているスカートの裾を抑え、涙目になりながら顔を真っ赤にした永遠ちゃん。


「これは短すぎるんじゃないかナ!!!???」


 そう、私たちがチョイスしたのは丈が太ももの半分くらいまでのミニスカ。

 それに合わせておへそが出るくらいのシャツと、ニーソックス、普段のパーカーを着合わせている。

 私たちとしてはもう少し露出を増やしたいところだが、それが元で日に焼けて体調を崩せば元も子もないので我慢した。


「何言ってるんですか、祐希さんとのデートですよ?それくらい気合い入れ無いと」

「そうそう、もう少し露出を増やしたいくらいよ」

「くっ、それは分かル、我ながら美少女だという自覚もあル。だけどナ。それでも人間には恥じらいっていう感情があるんだヨ!」


 そう言いながらピシャリと試着室のカーテンを閉める永遠ちゃん。もうちょっとみてたかったんだけど、残念。


「やっぱり元男の子にはハードルが高かったか……」

「え?永遠ちゃんって元男の子だったんですか……?」


 おっと、愛美が地味にショックを受けている。そうよね、自分の推しと同じ顔、というより本人の体に別の人の人格が入っていたら嫌よね。

 まあ、どちらかというと混ざっているような感じだから本人だけど。

 原作の永遠ちゃんもスカートをあまり履いてなかったから、そこも相まっているのかもしれない。


「それってつまり……精神的BL……推せるッ!」

「おっと?愛美?」


 何やら不吉な言葉を残して、愛美はとっとこ服を探しに行き、一着取ってきた。


「じゃあこれならどうですか?」


 そう言って愛美が何か白いものを差し出した。


「うん、じゃ、とりあえず来てみるかナ、……あ、言っとくが、もうさっきみたいな服は絶対着ないゾ」


 そう言った永遠ちゃんが着てみたのはロングスカートタイプの白いワンピース。

 くるぶしの少し上らへんが隠れそうなくらいまでの長いスカートは、露出を控えることでより魅力的な雰囲気を醸し出し、逆に二の腕の半ばまでの袖が白い永遠ちゃんの肌と見事にている。

 デザインは、フリルが両肩の付け根ら辺から腰まであり、その間には、青が強めの薄青緑が見事に映えていた。全体的に白いワンピースが、長い金髪をより引き立てる様になっているのもグッドだ。


「うん、これいいナ。私はこれが好きかナ」

「賛成……センスいいわね、愛美」

「はうぅぅぅきれいですぅぅぅ……」






 ◇◇◇◇◇






 3人の合格点をもらい、見事スタメン入りしたワンピースくんは、そのままお会計の方へ回った。

 ちなみにお金は永遠ママさんから来てる。

 最近仕事に復帰し忙しいらしく、「かまってあげられない分」と言って、小学生のお小遣いには多い量の軍資金をもらった。

 それはおとうさんの方も同じらしく、「美味しいものを食べてきなさい」と、これまた子供のお小遣いには多い量の昼食代ももらっている。


 というわけで、

「後は明日のデートプランなんだけど……」

「うーん、そこはゆーきに任せようと思っテ」

「それはなんでです?」

「今回のは、あくまで私と遊べなかった分を取り戻すための企画だからナ。贖罪の意味でも、私はゆーきに任せようと思っテ」

「なるほどねぇ」


 本人がそう思っているのならそれでいいのかもしれない。

 こういうのは二人しか知らない歩幅のようなものがあるのだから、視界外からその幅をとやかくいうことはまずできない。

 独特の空気感。そんな感じのものを2人からは感じる。

 例えるのであればフライドポテトとバニラアイスのような、当事者にしかわからないのりがあるのだろう。


「大丈夫ですよ。きっと楽しい一日になります」

「……ん、そーだナ」


 ……その時の永遠ちゃんの表情が、少し寂しそうだったのは、きっと気のせい。

 そう思うことにした。


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