第15話:でーとの約束
「……行ってきまス」
「いってきまーす!」
今日も今日とて学校に登校、しかしその美味しさは半減、いや、ほぼ無味無臭に成り果てていた。
「はァ……」
「おねぇ、いい加減あの男のことは忘れるべき、それよりも身近にもっといい人がいると思うんだけど」
「いや!ゆーきにもなにか事情があると思うんだヨ、うん、きっとそウ」
「……はぁ、おねぇがいつか悪い男に捕まらないように僕が頑張らないと……」
いやいや、私は男に乗られる趣味はない。
「おはよ、永遠!」
「ん!?ゆ、ゆぅぅぅきぃぃぃ!!!」
「うおっぷ」
久しぶりに話しかけられたことで、ついアッツアツのハグをしてしまう。
まあ、小学生の頃のハグなんて誤差だよ誤差。そんな言い訳を心で唱えながら必死にしがみつく。
「悪かったから、一旦離して」
「……んっ」
「ちっ、この女たらしが」
おい、円、そんな言葉どこで覚えてきたんだ?おねーさん許さないよ。
「ん!円ちゃん!おはよ」
「おはようゆうきくん。早速だけど、胸がいい?それとも腹がいい?」
「腹!ばっちこい!」
「うりゃぁ!」
「ぐふっ!へ、へへへ、ナイスパンチ」
「何やってるんだヨ!」
慌てて2人を診察する。幸い、両者とも、骨に異常があったり、痣ができたりはしてなかった。
「お゛ま゛え゛ら゛ァ !」
「ごめんて、永遠」
「ごめん、おねぇ」
「……今回は許ス、けど今度やったら許さないからナ」
「「はーい」」
「……ったク」
「……なぁ、お前の姉さんチョロくね?」
「……チョロいよ、それを利用したらぶっ○す」
「……こっわ」
「そこ!何話しているんダ!」
「「何も」」
「仲いいなお前ラ……」
少し焼いちゃいそうになるからやめてほしい。
「あ!今日は一緒にいるのね!これ以上永遠ちゃんを放置したらああするしかなくなっちゃうことになったから良かったわ!」
「よかったですねぇ、流石にあれをするのは気が引けたのでそっちの意味でも良かったです!」
「何をする気だったの!?ねぇ!?」
「あと、それは別として、個人的に祐希くんに感謝してるから、今度ジュース奢るわ」
「コンビニスイーツ1個おごります!」
「? 俺なんかしたっけ?」
「「
「なにそれかっけぇ!でも心当たり無ぇ!」
「おまえラ……」
もう呆れてものも言えねぇ。
「そう言って、あなたも例のが出てきたらこうなるでしょ?」
「お前らよりは節操守るワ」
「……どうしよう、この子本気で
「永遠さんは変なところでDTメンタルですからねぇ」
「うっせェ」
「???どーてーってなんだ?」
「うーん、あ!川の土手のことじゃない?」
「「「そのままの君たちでいて……」」」
「「???」」
「おっ!みんな早いね」
「ほんとー!」
集団登校の引率の6年生が来た。
「それにみんな顔面偏差値高いし……え?高すぎない?」
「今更気づいたの?」
「うん……じゃ、行こうかー」
「しゅっぱーつ」
いつもの通学路。ここを10日の間、地獄みたいな空気で歩いてたのが嘘だったように晴れ渡った気分。
「……ニャハハ」
おもわず笑い声が漏れてしまう。仕方ないことだろう、きっと。
なぁ、名前も知らない神様。私はまだここにいていい、そうだろう?
◇◇◇◇◇
「ん、おはよう」
「「「「「おはようございまーす」」」」」
校門前の先生からの挨拶に返事をした後、蜘蛛の子を散らすように昇降口に走っていく児童たち。
「……」
屋上を見つめ……祐希の方を見る。
―――大丈夫。
少しずつ、少しずつ前に進めている感じがする。
昇降口から、学校に入る。
靴を脱いで、内履きに変える。
そのままの足で、教室に向かう。ここで円とはお別れだ。
名残惜しそうな円の視線に手を振りながら、階段を登って2階に向かう。
5年生の教室は三階にある。一年生の頃、憧れていた、地面から少し離れただけの、高学年だけの城。
私たちは3組。ちょうど4人全員がこの組に入っている。
流石に干渉の力を感じるが、私たちになにか不都合があるわけではないし、訴えたところでどうにかなる次元じゃないので諦めている。
「とわちゃんおはよー!」
「あ!仲直りしたんだね!」
「よかったー!」
「ニャハハ、そもそも喧嘩してたつもりはないっテ」
「そんなふうに思われてたのか……失敗したなぁ」
その後、自分の席に移動して、荷物をおいた後、祐希の席の前に椅子をおいて座った。
あ!仲直りで思い出した!
「なァ〜?私をほっといて、他の女の子と随分楽しそ〜だったじゃないカ」
「うぐっ!それには深い訳が……」
あわあわと手をあちこちに動かして弁明を図る祐希。
かわい、じゃなくて。
「ふ〜〜〜ん???聞かせてもらおうカ?そのわけとやらについテ」
流石にコレは可愛そうだヨ!と、頭の中で私の姿をした天使が
いやいや、許せるわけ無いだロ!と、これまた頭の中で私の姿をした悪魔が
―――天使:ゆーきにも事情があるんだロ!
―――悪魔:幼馴染を優先しないで他のやつと遊びに行くほどのカ?
―――天使:いつまでも幼馴染同士で遊ぶわけじゃないだロ!
「ぐっ!?」
危ない、心の中の天使から思わぬ
―――悪魔:ぐっ!?それもそうだが、幼馴染を優先してほしいじゃないカ!
―――天使:それってあなたの感想ですよネ?ゆーき本人の気持ちが一番!
「ぐさっ!?」
―――悪魔:で、でも、ゆーきにとっての一番は私のはずデ……
―――天使:未練がましいゾ。言い訳の仕方がメンヘラ女みたいになってるゾ。
「ぐさぐさッ!」
やめろぉ!さっきから私にズコズコ刺さってるんだよ!
天使ぃ!お前はどっちの味方なんだ!
―――悪魔:わ……ァ……ァ……
―――天使:泣いてどうこうなる問題じゃないんだヨ!
わかった。天使、もうお前が悪魔だよ。
「あぁ〜、悪かったよ。その代わりと言ってはなんだけど……」
祐希は少し悩んだ気配を見せてから言った。
「土曜日、一緒に遊びに行かないか?えと、2人で」
―――天使:え……?
―――悪魔:それって……?
「で、でーと?」
「ん?今なんて言った?」
「いや!?なんでもなイ……」
えっ!?この展開は予想してない。
なぜ?唯ではなく?私?
なんでなんでなんで???
「えと、嫌だったら別に「行く」……ほんとに?」
「行く、何時に?どこで?何して遊ぶ?」
「えっと、母さんが映画のチケット取ってくれるって言うから、映画かな」
「2人で見にいけるものなのカ?ほら、私たちまだ5年生だシ」
「母さんが言うには「とわちゃんだったら任せられそう」だそうだ」
「えェ……」
まぁそこは、物語ゆえのガバさと割り切ろう。君たちはちゃんとお家の人の同伴の元、危なくない道を通って行こう。おねーさんとの約束だヨ。
「「話は聞かせてもらいました!!!」」
「「唯!?愛美!?」」
「ねぇ!チケットってもう取った後!?」
「いや、永遠と相談してからにしろって言ってたから、多分まだ取ってないと思う」
「じゃあじゃあ!日曜日ってお互いに予定空いてますか!?」
「あ、あァ、わたしは空いてるガ……」
「俺も……」
「「その予定って日曜日にずらしてもらうことってできます!!!???」」
何だこの気迫!?私たちはなにか地雷を踏んだのだろうか。その後、双方の了承を得た後、いきいきした顔で。
「「エイエンちゃん改造計画、開始!!!」」
と、強制的に土曜日の約束を取り付けられた。解せぬ。
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(唯&愛美)「やはりデートか、いつ出発する?私たちも最善を尽くそう」
(祐希&永遠)「静江院!相園院!」
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