第12話:2人目のカノ
あれから4年、俺たちは5年生になり、授業内容に英語がチラホラ入りだした頃。
「……はぁ」
俺は頭を抱えていた。
「ゲームカセット一本大体5000円、普段のお小遣いが500円、一回お手伝いで50円で、今ん所毎日一回のペースで350円だから一月で……2000円……」
そう、欲しいゲームがあるのだ。しかも高い。ゲームってどうして子供対象なのにこんなに高いんだろうか。
「うむぅ、お小遣いの量を増やしてもらうか……そのためには50問漢字テスト95点以上……うーん……」
ここで永遠に泣きつくのは簡単だ、しかし。
「いつまでもとわに頼りっきりってのもなぁ」
永遠だったらオレに適した勉強方法を考えて、一緒に頑張ってくれるだろう。しかし、それではこっちが迷惑をかけるばっかりだ。
「……そうか……」
今まで考えたことがなかったプランが頭に浮かぶ。そうじゃないか、こうしてゲームのことで悩むのもいいが、俺は全然永遠に恩を返せてないのだ。
「うん……いや、でもぉ……」
どんなことをやったら永遠が一番喜ぶかを考え、模索しながら歩く。
と、前から飛び出してきた何かにぶつかった。
「きゃっ!?」
「うぉ!?」
バラバラバラと、ぶつかってきた何かが持っていたものが道路に散らばった。
「ごっごごご、ごめんなさいぃ〜!?」
「あ、あぁこっちこそ、手伝うよ」
ぶつかったのは俺と同じくらいの歳の女の子だった。三つ編みと眼鏡ってとこがthe普通って感じの女の子。
ランドセルをおろして、周りに飛散したたくさんの本を、コレまた飛散する前に入っていたであろう紙袋に入れていく。
ん?この本……
「あぁぁぁあのぉぉぉぉ!あまりみないでいただけるとぉぉぉぉ」
「あ、あぁごめん」
本の表紙から目をそらし、そのまま紙袋に入れる。コレと今彼女が拾い上げたもので最後だな。
「あ、ありがとうございましたぁ〜」
「いやいや、ぶつかったのはこっちの不注意だし」
「あはは……それじゃぁ」
「うん」
いやぁ、人助けした後は気分がいいなぁ。
「って、そうじゃなくて!」
それもいいけど、まずは永遠への恩返しのプランを考えるべく、ダッシュで家に戻った。
◇◇◇◇◇
「……?」
何故か頭の中で何かが囁いたような感覚。
「何なんダ?」
この感覚は……前にもあったような……
まるで私の知らないところで何かが動いたみたいな……
不意に廊下から、プルルルルと電話がなった。
「はいもシもシ、江戸川ですけド」
『あ、とわちゃん?』
「唯か、どうしタ?」
『いや、どうしたかって言われるとなにもないんだけどね、なにか違和感があって』
「……唯もそう感じるカ」
『え!とわちゃんも?』
「あァ、この感覚、確か前にもあったようナ……」
どこだ?ここ二、三年のうちに経験したことがあるような……
「……あ」
『どうしたの?』
「いや、唯で思い出しタ」
『私で?』
「あァ、この感覚は―――」
二人目のヒロイン、愛園愛美が唯野祐希と合流した。
◇◇◇◇◇
「愛園愛美……どうして忘れてたのかしら。いや、憶えてはいるのよ。ただ、その可能性が上がってこなかった感じ。カレーにグッズグズに煮溶けた玉ねぎみたいな」
「そーだナ、それも含めて記憶処理されたんだろうナ、後やっぱりお腹空いてるよナ、ほら、塩飴あげるヨ」
「わぁ!みたらし団子の味がするやつ!あと愛園愛美は私たちと同じ3組だったわね確かガサガサ」
「まあどちらにせよ、接触するなら昼休みだナ、あト、もしかしたら向こうから接触してくる可能性もあるナ」
「コロコロ、次の授業は……コロコロ、社会か、いい睡眠導入剤になりそうだわ、コロコロ」
「聞いてやれヨ……」
「武将の伝記漫画を読み漁ってはその時代の武将と姫の恋の話を探してた中学校時代を舐めんじゃないわよ……コロコロ」
「いや初耳なんだガ、とか言ってるト……」
視界の右端に、廊下を歩いてくる愛美の姿が見えた。その目はしっかり私たち……ではなく、右側にいる唯のことを見ていた。
「ふぅ〜ヨシッ、あ、あの!静江唯さん、ですよね、話があるので昼休みにあってほしいのですが」
「ガリガリ…… ガリゴリ……ゴクッ、えぇ、いいわよ、私たちもあなたと話がしたかったから」
「?、いえ、私が用事あるのは静江さんの方だけなので……」
「ビンゴだナ」
「えぇ」
今の話で愛園愛美が転生者であることが確定した。
「大丈夫よ、この子も同郷だから」
唯が私のフード付きパーカーを引っ張りながら言う。
「どーも」
笑顔を見せて手を振る。愛美の反応はまだイマイチ理解できてないみたいだな。少し表情が硬いように見える。
「心配しなくていーゾ、私もあなたと当たり前の恋バナがしたいだけだからナ」
「……!」
コレで気づいたか、まあ鐘がなりそうだし今日はこのくらいにしようと、密会の約束はお開きになった。
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