第4話:意識?

 時の流れとは早いもので、ひと月後にはあっという間に小学校入学が控えていた。


 今日はゆーきとその家族、そして永遠とその家族でランドセルを買いにアウトレットパークに来ていた。


「うお〜!かっけ〜!」

「そうカ?」

「なんだ、とわ、わかんねぇのかよこの『ろまん』が!」

「ほう、ロマンとナ」

「あぁ、そのろまんあふれるみために、ろまんがあるつかいみち、そしてろまんしかないかっこよさ!」

「ロマンっていいたいだけだロそレ」


(まあわからんでもないが、私が俺だった頃は、ランドセルなんて選べなかったからな)


「いろいろあるな!」

「だナ」

「あっちいこうぜ!」

「あァ」


 祐希に手を引かれてランドセルを選びに行く2人を微笑ましいものを見るような目をする4人。


「あの子達ほんと仲いいですよね〜」

「ですね〜」

「だぁ〜ぅ〜」

「あらぁ〜円ちゃんもそう思うの〜」


 母親同士共有したい話でもあるのだろう。話に花を咲かせる2人、その一方父親たちは趣味の話に没頭していた。


 この光景は間違いなく永遠が繋いだ関係である。

 もっとも、本人は全くそれを意識していない。


「うお〜!とわ!とわ!かっけ〜よな!」

「それさっきもいってたゾ!」


 本人はそっけない態度をとっているが、実際のところ、内心かなり浮いていた。


(黒、青、パステルブルー、緑、黄色なんて色まであるのか!?)



 江戸川永遠、プチジェネレーションギャップである。


「うわ〜、おれあかにしようかな!」

「おいおイ、あかはだめだロ」

「なんで?」

「あかはおんなのこのいろだからナ」

「そんなのだれがきめたんだ?」

「……たしか二」


 精神年齢23歳、5歳に気付かされる。


「じゃ、わたしはあおがいーナ!」

「いいじゃん、かっこいい!」

「むこうでためしにせおえるらしいゾ!」

「いいね!いこう!」


 どちらから示し合わせたわけでもなく、自然な動きで手を重ねる。

 ついそうしてしまったことに気づいてはいたが、手を離す事はしない。


(今だけでも……この関係を大事にしたいと思ったから……)


 いつか離れてしまうことになっても、ずっと祐希の親友でありたいから、ついそんな理想を願ってしまうから。


 今、少しだけ、前世の推しの気持ちがわかった気がした。






 ◇◇◇◇◇






「あ〜つかれた〜」

「そーだナ。あ、すいとうあるけど、いるカ?」

「へへ、さんきゅ」


 ランドセルを選び終えて、外にあるいい感じに日陰になっているベントに腰掛けていた。


 肩に下げているカバンからお目当てのものを探し当てると、頭のカップをぱかっと取り、祐希に渡す。蓋を開けて、渡したカップに麦茶を注ぎ入れる。


「ほイ」

「ありがと」


 ごくごくごくと、飲むときに動くまだ喉仏もできていない喉を、何をするわけでもなく眺める。


「……なんだよ」


 視線に気づいたのか、びみょーな顔でこちらに視線をよこす。


「……べつ二、それよりのみおわったんならこっちにもカップまわせヨ」

「あぁ、ごめん」


 差し出してきカップを受け取り、それをベンチの空きスペースに下ろすと、慎重に水筒を傾ける。

 こうしないと、まだ片手で水筒を持てないため、おもいっきりこぼしてしまう可能性があるからである。


 子供の体の不自由さを実感しながら、水筒の蓋を閉めてカップに口をつけ―――


 ―――ようとして、不意に思い立つ。いや、思い立ってしまう。


(あれ、下手したらコレ間接キスになるんじゃね?)


 そこまで思考した後、永遠の脳内に4つの選択肢が浮かぶ。


 |①「別に子供同士の話だし」と割り切って口をつける。


 |②「やっぱり気になる!」と思い、先程どっち側で飲んでいたかを思い出す。


 |③「これは気にするだろ」と感じ、「どっち側で飲んだ?」と問いただす。


 |④「流石にコレはだめ」とポケットティッシュで口元を拭く。


 まず|①の案だが、とりあえずこの有無はおいておく、深い理由はない、断じて。


 次に|②、そもそもどちらで飲んでいたかなんて覚えていない。なぜかって?喉を見ていたからな!よって却下。


 その次|③、これ捉えようによってはゆーきのことを意識してると勘違いされるじゃないか!よって却下!


 最後に|④、うーん、険悪なムードになる未来が見える見える。よって却下。


 なんてことだ、全ての案がなしになってしまった。しかしこの中から選ばなくてはならない。


 ②か?いや③か?それとも④か?


 悩んだ末に出した答えは―――


(いいやメンドクセ)


 今までの思考は何だったのか、脳のスペックの無駄遣いを鼻で笑って一蹴し、半眼になりながらカップに口をつける。


 ―――神のいたずらか、永遠が悩んだ末口をつけた場所は、最初に祐希が飲んだ場所と同じであった。


 この2人、本人たちの意図せぬところで間接キスイベントを終わらせたのである。


 そして、2人が選んだランドセルは、祐希が赤色のを、永遠が緑がかった青色というもので決まった。ある意味2人らしい選択だった。


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 今回と次回と次次回は試験的に語り方を変えています。

 書きやすいしイメージしやすいのでこっちをデフォにしようかなと考えてたり。

 1話目、2話目、3話目の扱いですが、主人公ヒロインくんちゃんの内心という形にしようかなと考えてたり。


 今後とも、この……略称どうしよう。おさ……まけ?


 トスTSまけ……かな、まあよろしくお願いします。


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