第2話 見えない暗殺者

 30代になるまでに完成させることが出来たのは、風邪を治す薬だった。これは確かに、歴史に名を刻むほどの功績で実際にノーベル賞をもらうことが出来たが、こんなレベルでは足りないもっとだ。風邪という概念を治す薬をできたのはいいが、俺の発明したいものは物理の概念で収まってはいけない。そうあの日決心したように…………。


 妻の体温がどんどん冷たくなっていく中、俺に最後の言葉を残してくれる。


「あなたはまだ若いわ。それに、あなたのことだから、結婚したいという女性は五万といるわ。だから、私たちのことは忘れて……あなたが幸せになることが、わたしはこの上なくうれしいから」


 ここで彼女は涙を流す。以前の俺なら喜びの意味として、あなただけでも生きてくれて良かった、そう捉えていただろう。しかし、たった今絶望の涙と直面いたばかりの俺にはそうでないと理解するのは容易であった。


「絶対に助け出して見せるから」


 彼女がもう長くないのは様態を見てすぐに分かった。こういう時に、希望に縋れないのは天才としての初めての無力感かもしれない。いや、確かこういう感情を後悔と言うのだったな………………。


 俺が奴を止めることがで生きていれば、俺がもっと医学の勉強をしていれば、俺がもっと普通の経験をしていれば…………こんなことには……。


 その後、病院の中で二人は亡くなった。この時も俺の涙は大滝のように止まることを知らないかった。ちなみに、喜びの涙ではなかった。俺は知らないことなんてないと思っていたが、知らないことに気づいていなかっただけの様だ。そして、そんな無知な俺には知らないことがもう1つある。それは諦めるということだ。そう俺は絶対に成し遂げる……死んだ人を生き返らせる方法の確立を。


 40代になり、周囲の技術の発展もあり、無重力装置を完成させることが出来たが、未だ俺の目標である死者蘇生には遠く及ばない。それにこの方法は現実的でないことに気づいた。また、この経験は後の人生で生かせる気がしていたが、今はそんなことをグダグダ言ってる暇はない。ようやく物理法則を曲げることが出来たのだ。作って見せよう、タイムマシンを…………。


 タイムマシンを作る覚悟を決めてから5年。未だに作業は難航していた。理由を挙げればきりがないが、特に大きいと考えられるのは、戦争が起きたからである。構造が超高度なため、誰も理解することが出来なかった無重力装置を作ったはいいものの、俺はそれ自体にはあまり興味がないので量産しなかった。だから、その唯一の無重力装置を求めて戦争が始まったのだ。そのせいで資源が手に入らないし、俺の命を狙うもの出現するしで作業に取り掛かる時間が奪われて、作業がほとんど進んでいなかった。このペースでは間に合わないと焦燥感を覚え始めて、緊張感のある仕事部屋は質大幅に低下させるものとなった。


 基本化学は同じことの繰り返しで、何時間も時計の針を目で追いかけるような単純だけど、辛く苦しい根気勝負になってくる。しかし、そんなつまらない作業もあり得ないくらい速度で成長するときがある。それは世界的な人の命を将棋の駒のように扱うほどの激しい戦争が起きた時だ。そう、今こそチャンスの時なのだが、同時にピンチの時でもあった。あと三時間もしない内に、日本に原爆が落とされるらしい。今の文明においての原爆というのは、島国なら簡単に亡きものにするくらいの威力を持っている。こうなる理由は単純明快で無重力装置があることさえ証明できてしまえば、いずれ再度作ることは可能だろうという魂胆だ。俺が量産しなかったために、たった1つしかない無重力装置を持つ日本の独壇場になることを恐れたのだろう。人間は自分に利益を与えるものからより甘い蜜を貰おうとし、逆に不利益を被るものは処分したくなるものであるから仕方がない。俺が起こしてしまったことなのだろうか?今回も俺の勉強不足だったというのか…………………………。


 いつの日からかもわからなっくなってしまった、毎日違う研究をしているはずなのに、同じ毎日を繰り返しているような気がしてならない。確実に一歩を踏み出すてるはずなのに、その歩みを明日踏みと感じてしまう。おそらくこれがスランプというやつなんだろうな…………。


「先生もうここは危険です。早く安全な場所に避難しましょう」


「うるさい、今に下手何になるというのだ。俺の発明がすべてなかったことになるのだぞ?今からもう一度作り直すのにどれだけの時間が掛かるかわかってるだろ。わかったなら、このシェルターから出ていけ」


「くっ、分かりました…………」


 そして、シェルターから出ていく俺直属の唯一の部下の女性アシスタント。しかし、そんなことはどうだっていい。自分の研究はもうすでに終わりの時を迎えつつあるのだろう、外が空爆の音でうるさく地震のような衝撃がシェルターの中でさえわかるくらいに降り注ぐ。もう無理なのかもしれない、そう考えながらも時間が惜しいため地下防御シェルターの中で作業を必死に繰り返していると、視界が閉ざされたように突然あたりが暗くなる。自分でも何が起きたかわからない状況に混乱しすぎるあまり全く動けなくなる、まるであの日のように。


「だ~れだ?」


 そう静かな研究してに天使のような綺麗で透き通った声が耳ではなく心で聞いているこのような気分になると同時に、焦燥感が募る。なぜなら、手術と同じように一秒単位の戦いをしているので時間が何よりも惜しい。こんなお遊戯に付き合っている暇はないと振り解こうとする。しかし、体は全く言うことを聞かない。


 もしかして彼女は俺を殺すための刺客としてここに赴き、空気中に毒をもって俺の体を動かなくしているのだろうか。今の状況を必死に理解しようと理由をつけようとするが、まったく答えがでない。もしかしたら人の言うことをまたしても聞くことが出来なかった俺への天罰か。神の存在にすがるしかできなくなった天才に、柔らかくも美しい声で話しかけてくる暗殺者。


「みんなでたこ焼きを食べようと思って持ってきたのに…………」


 俺の記憶の中にある何かがくすぐられるような感触、その言葉の後だと目隠しされている手を温かくも、大きくも感じてしまう。そして、後ろを振り向こうと知ると目隠しの顔を抑える力が強くなり、その場から動けなくなる。その時、シャリンと神社で神様に自分の研究が成功するように祈っていた時に、隣で踊る巫女様の神楽から出るような聞き覚えの鈴の音。そんな中、暗殺者が俺に告げる。


「私の姿は一生に一度しか見ることが出来ないから、こんな状況下で見るのはもったいないよ」


 姿を見てきた人を一人残らず始末してきました、と言いたげな言葉に俺は大滝のような涙を流すが、暗殺者は目隠しの手を辞めない挙句アドバイスを俺に伝え始める。


「いい?案外科学の発展は多くの人のニーズからくるものよ?確かそう教えてくれ…………」


 暗殺者が最後まで言い終わるまでにキッチンにあるタイマーのようなピピピピという位音が鳴り響く。すると彼女は俺を元気づけるかのように別れを告げる。


「ありがとう。また会いましょう」


 そうなんだな、俺のやってきたことは間違いじゃなかったんだ。落ち込んでなんかいられない、前を向いて最後の仕上げに掛かろうか…………。


 

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 わざわざ自分なんかの作品を読んでいただきありがとうございます。色々な方から(自分の中では)コメントをいただいているのですが、現代人の割にスマホを扱ってこなかったので、返信の仕方がわからず無視をするような形になってしまい、本当に申し訳ありません。できれば、返信の方法を優しく教えていただけると幸いです。


 こんな堅苦しい話は自分には似合わないと思うので、話題を変えますが、最近アパートの周りがたばこ臭くなっているのに困ってます。ちなみに自分が吸っているというわけではないです。だから、家の扉を開けて階段を降りようとしているする直前の急な曲がり角で、「最悪、たばこ臭いんやけど」と独り言を呟いていたら、曲がり角の目の前にたばこを咥えたお隣さんが「すいません」と一言…………。気まずすぎんだろ!!そのあと自分はお隣さんと顔を合わせられなくなったという悲しいお知らせです。自分の作品のクオリティはまだまだ低いかもしれませんが、これからも応援よろしくお願いします。


 この作品の意味が分からないや分かりづらい場所があれば教えてください。あと、どういう意図で書いたかを分かった方がいればコメントしていただけると幸いです。


 これからも精進していきたいと思います。ありがとうございました。














 


 

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