第34話 大名行列のごとし
主人公視点です。
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ようやく新たな体に馴染んできたところで、俺は再び歩き出した。
筋肉がほとんどないからか歩くのもかなり苦労したけれど、まぁ骸骨の体でホップステップジャンピングしていただけあって、今は通常通り動ける。
これで不意に敵に出会しても大丈夫だな。
あ、そういえば、リハビリの過程で少しだけ発見があった。
それは、今俺をぐるぐる巻きにしている包帯。
呪詛が刻まれているというなんとも悪趣味なものだが、実はこれ、伸縮自在で、俺の意思で自由に操作することができるらしい。
手を突き出して「うごけー!」と念じると、そこからシュルリと包帯が解け、まるで生きているかのように自動し始める。
これまたかなり丈夫であるらしいので、戦闘はさることながら色々と汎用性が高そうである。
マミーの特徴なのか、俺の種族の特徴なのかわからないけど、まぁ有効活用していこう。
練習がてら包帯をいじくりながら歩くこと、数十分ほど。
新たな影が俺の視界に入り込んできた。
それを端的に言い表わすなら、アンデッドの行進。
二つ先の十字路のところで、無数のアンデッドが次から次へと一様に横切っていく。
前までの墓場にいたアンデッドは知能のない、物言わぬ人形みたいな感じだったけど、あれは確かな意思を持っているような……。
いや、どちらかといえば、強制されていると見る方が可能性は高そうか?
アイツらがこれほどまでに揃って歩いていくなんて、あまりにも考えにくいし。
じゃあ、その先にいったい何があるんだ、ということになるが…。
……。
(ちょっとだけ付いていってみようかな)
現状、何も目的課題も見つかっていないので、とりあえず変化の兆しがありそうなところへ行ってみるのは悪くない行動の…はず。
【呪詛の外套】【鎧化】
奇襲に備えて、身を固めておく。
俺の存在に気づいて一斉攻撃を仕掛けてくる可能性もなくはないので、一応だ。
ちなみに【鎧化】による見た目の変化は全くなかった。
おそらくは、包帯の中の体が硬質化したのだろう。
これ、効果のほどはどうなってるんだろうか…。
ま、ないに越したことはないし、気にすることもない。
ちょうど列の最後尾が見えたので、その後を俺は追って行った。
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しばらく後をつけていると、随分と開けた場所に出てきた。
ずっと狭っ苦しい道だったのに、急に大広間に来た感じ。
先ほどから地面を張っていた根のようなものが、広間全体に張り巡らされている。
まるでそれは生物の血管のようでもあり、どこかグロテスクだ。
アンデッドの行列は、トボトボと鈍い足取りで、前方に向かっていく。
その先には、ちょっとした階段。
そしてその上にはとてつもなく、ありえないほどに巨大な、閉ざされた扉のようなものがあった。
天井を見上げても、まだテッペンが見えない。
それくらいに巨大な扉だ。
(なんだぁ…ありゃ)
そのスケールに、俺は間抜けな声を心の中で漏らすのみ。
いったい誰が、何のために作ったのか全く見当もつかない。
いや、本当に人が作ったのかすらも、俺にはわからない。
アンデッドたちは、途中転びそうな輩がいながらも、壇上へと上がっていく。
…と思われたが、後列の一部の奴らは方向転換して横へと歩いて行き、まるで集合写真を撮る時かのような、2段、3段、というふうに分かれて行った。
(いったい何が……)
すっかり興味津々になった俺は、迂闊にも近づいていく。
……その時。
─────パキッ
何が砕けるような音が、僅かな大きさであったにも関わらずこの大広間に響き渡る。
その瞬間、目の前のアンデッドの集団が弾かれたように、俺の方へ顔を向けた。
真反対を向いていたものも、首を180度回転させて、濁った眼もしくは虚空の目で俺を捉えていた。
(あ〜…、えっと…、これは…)
先手必勝。
俺は飛び退くように、来た道を引き返した。
それと同時に、ドドドドドド、という足音が後方からうるさいほどに聞こえてくる。
(結局こうなんのか!!薄々勘づいてはいたけども…!!)
この迷路みたいな場所で、うん百ものハンターを相手にチェイスが始まってしまった。
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