第29話★存在進化②


 『存在進化の条件を満たしました。いずれかの種族にです』


 生首をぶちのめしたところで、待ち望んでいたアナウンスが響く。

 

 (存在進化……、2回目は思ったよりも早かったな)


 やはり存在値を爆稼ぎしたからか、スパンもそれなりに短くなっているような気がする。

 条件とやらがわからないので、待ちぼうけにならざるを得ないから、非常にありがたい。


 (さぁさっそく、進化先を見せたまえ!)


 頭の中でそう命じると、従うようにウィンドウが目の前に展開された。



 〜〜可能進化先〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 • ネクロ・スケルトン

 • タイラント・スケルトン

 • スケルトン・ウォリアー

 • スケルトン・メイジ

 • アーマード・スケルトン

 ………

 • グール

 • カース・グール

 • タイラント・グール

 ………

 • マミー

 • カース・マミー

 • レイダー・マミー

 ………

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 (おぉ……、おおぉ…!!)


 そのウィンドウの長さに、思わず感動してしまう。


 前回はまさかの一択だったからな。

 今回ももしや……と心配していただけあって、選択肢が広がっているだけでも何処か嬉しいものがある。


 のだが……。


 (いや……多すぎ多すぎ!!)


 急にどうしたと引いてしまうほど、選択肢が多い。

 表示されたウィンドウが、爆買いしたときの領収書みたいなことになっている。


 前回の悲壮的な状況はなんだったのだ。

 

 多すぎて迷うと言うレベルではない。

 もう勝手に決めといてほしいくらいである。


 だがまぁ、結局自分がそれになるわけだし、とりあえずチェックしてみないとな……気は滅入るが…。




 そんなこんなで、気になったものだけをピックアップしてみよう。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ネクロ・スケルトン

・カース・スケルトンの上位種。

・呪詛の刻まれた体に触れた者は、たちまち魂が崩壊する。

・呪いの扱いが非常に上手く、物理的攻撃も可能にする。

・下位種であれば、死体を自在に操ることができる。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 はい、まずは現状の正統進化系。

 上位なだけあって、物騒さも一段と増している。

 なんだ触れるだけで魂が崩壊するって。怖いわ。


 性能面はとりあえず、「死体を操ることができる」というのが注目かな。

 ネクロマンサー的なスキルでも使うことができるのだろう。


 今の位階が【劣】なので、操れる奴も少なそうだが……強くなっていけば強力になるに違いない。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

タイラント・スケルトン

・スケルトンの上位種。

・強靭で巨大な体を持ち、攻撃力と防御力が秀でて高い。

・巨腕の一振りは岩石をも粉砕する。

・地面を揺るがし、遠距離への攻撃も一部可能。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 こちらは、ただの「スケルトン」の上位種。

 説明を見る限り、見事なパワー系だ。


 【徒手空拳】の補正がのった肉弾戦法が主な今、かなりの強化となるだろう。

 攻撃面でも防御面でも、心強くなるはずだ。


 しかし……せっかく希少種へと派生している今、元の系統へと戻っていくのはいささかもったいないような気もする。


 目先の強化に目が眩んで、この先の可能性を潰すのは非常に惜しい。

 いや、もしかしたらまた希少種ルートに戻れるかもしれないが…。


 とりあえず順位は低そうだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ブラッディ・グール

・グールの派生種。

・血を自身のように操り、武器や攻撃に変化させて戦う。

・高い攻撃力と敏捷力、魔力を誇る。

・死体を喰らうことで能力が上がり、捕食対象のスキルも一部使用できるようになる。

・飢えると血を欲するようになり、理性と自我が失われる。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 お次は、グールという新しい系統だ。

 屍肉を貪り食うというイメージがある、あのだろう。


 しかしこれは通常種ではなくその派生。

 血を操るという、なんともカッコ良さそうな戦闘スタイルの種族だ。

 今後ヴァンパイアにでもなれるかも、と妄想できる。


 ただ、血がないと暴走してしまうと言うのは難点だ。


 こんなところに生命の気配は全くない。

 ということは、血を得る機会もないというわけで。

 最悪、自我を失った状態がデフォになってしまうかもしれない。


 それさえ解決できれば、優良物件なんだがなぁ…。

 


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

マミー・タブー

・この世界に甚大な影響を及ぼした者の死後、これになる。

・呪詛の刻まれた包帯で身を包み、そこから瞬間的に呪いの攻撃を飛ばせる。

・また、包帯を自在に扱い、対象の捕縛をすることもできる。

・魔力と抵抗力が非常に高いが、生命力と防御力、攻撃力が著しく低い。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 


 これは進化先候補……というか、個人的に気になった選択肢だ。


 これまた、マミーという新しい路線。

 包帯ぐるぐるまきのイメージだが、その通り、包帯を利用して戦うらしい。


 ……しかし性能面については、少し眉を顰めたくなる。

 魔法型になるのはいいが、物理方面が軒並み貧弱なようだ。


 今の戦い方とはかなりミスマッチ。

 現状、攻撃的な魔法スキルを持っていないのもあって、進化先としてはあまり選びたくはない。


 しかし俺が気になったのはそこではなく、この種族としての説明文。

 「この世界に甚大な影響を〜〜」という部分だ。


 どうにも矛盾というか、変な感じがする。


 俺はこの世界においては、貧弱も貧弱な存在なはずだ。

 でなければ存在値ももっと大きいし、位階も【劣】ではないだろう。


 しかし、「世界に甚大な影響を及ぼしたもの」とな。


 カース・スケルトンに進化する際も思ったが、どうにも身に覚えのない条件を満たしているような気がする。


 (何か秘密があるはずだが…それはいったい……)


 思索してみても、到底納得のいく結論は導き出せない。


 その境地に何か重大なこと……例えばみたいなものがあるのだろうか。


 そんな壮大なことなら、やっぱり俺の理解に及ぶ範疇ではなさそうだが……。

 しかし、なんとなく使のようなものが胸の奥に引っかかっている。



 

 うん。


 進化先は決まった。


【俺は─────】



 体の内側が猛烈な熱さに支配され、魂の一粒一粒が膨張していくかのような感覚に陥る。

 節々から真っ白な閃光が辺りへと放出され、エネルギーの奔流が体を飲み込む。


 (うぐっ、これはやばっ───)


 意識を保てないほどの負荷。

 前回はなんとか耐えたものの、今回はそうもいかない。


 抱え込んでいた意識はあっさりと手放され、視界は暗転した。



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