第16話★存在進化①


 〜〜可能進化先〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 • カース・スケルトン

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 どう見ても進化先がひとつだけ。

 さっきまでのワクワク感を返してほしい。


 いっぱい選択肢……いっぱい考える……。

 全部それは泡沫の夢。


 現実は選択肢はひとつ。


 あぁ無情。

 まるで都合のいい言葉で夢を見させて、厳しい現実を後に突きつけてくるヤツみたいじゃないか…。



 ……しかしまぁ、結局この「カース・スケルトン」とやらがどんなモノなのかによるよな。


 うん。

 有能だったら万々歳だしな。


 ウィンドウさーん。

 それも説明してくれたりしますかね…?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

カース・スケルトン

・スケルトンの変異種。

・黒塗りの体を持ち、赤い紋様がそれを飾る。

・高い魔力と抵抗力を誇る。

・強い怨念を抱く死者がこれになり、【呪い】のスキルを使用することに長ける。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 意識を向けてみると、例によって説明欄を付け加えてくれた。

 本当に仕事のできる子だね、この解説くんは。

 ウチにも来て欲しかったよ。君のような人材が。


 んで……なるほど。

 魔法タイプなスケルトンで、【呪い】が使えるとな。


 今、俺が唯一もっている魔法の【呪いのまじない】みたいなのを、もっと使えるようになるわけか。


 それはぜひ歓迎したいことだ。

 先の戦闘で、魔法および呪いスキルの有用性はわかっている。


 使いどころはニッチであるものの、戦況を左右することが望めるスキルだ。

 もともと魔法は使いたくあったし、進化することには問題ない。


 ……けどさ。


 なんかすっごい禍々しくない…?

 

 黒塗りの体に赤い模様って、もう見た目が厳つそうだし…。

 【呪い】が得意ってのもだいぶ怖い。


 というか「強い怨念を持つものがこれになる」って、俺そんなに恨みがましくないんだけど!?


 生きたい生きたいという願望が、未練を通り越して怨念になったと取れなくもないが…。


 素の俺は、至って平穏温厚善良人間だ。

 呪いだなんてとんでもない。


 これからの進化先もこんな風に物騒なものになったらちょっと嫌かもなぁ。


 それに、「変異種」というのも気になる。

 文言的に正統進化ではない…のだろう。


 ゲームとかだと突然変異種は強いと相場が決まっているけど、こと現実においてはそうもいかない。病気になったり、生存に不利になることもままあるはずだ。


 この世界における、変異も同様だとするならば、安直に変更するのも考えものだが……。



 しかし、特殊な存在というのはやはり気の惹かれるものがある。

 

 特別感というか優越感というか、そういう感覚には憧れる。

 

 それに、変異は有利に回ることも大いにある。

 生物の進化のプロセスとして重要なことだし。


 ならば意を決して、進化すべきであろう。

 いろいろ不安だけど、まぁそれはそれとしておこうかな。



 じゃ、【カース・スケルトンに進化します】!!


 


 ───そう決意した瞬間、体から強烈な光が放たれた。


 暴れる力の奔流が、全身を飲み込む。

 体を押し広げるように、暴れ渦が膨張していく。


 痛みはない、ただ猛烈な熱さが感覚を支配していた。

 思考が沸騰する。

 世界が忙しなく明滅して、脳がパンクしそうだ。





 なんとか意識を手放さずに抱えていると、刹那、



 何かはわからない。

 どう形容すべきかもわからないけど、たしかにそれが視界に入り込んだ。


 無意識に、俺は腕を伸ばしていた。

 どうしてかは、わからない。


 それが気になったのか、触れようとしたのか。

 自分でもよくわからない。


 

 しかし、伸ばしたその腕は骸骨ではない、───。



 ……え?



 疑問に思うことはもう遅く、そのナニカは、高まった力が弾けるとともに、姿を消す。


 そして肉体に戻ったかと思われた俺の腕は、全ての光を飲み込んでしまいそうな、どす黒いへと変貌していた。


 


 寂れた霊園に、俺という、漆黒の躯体をもつスケルトンが、呆然と虚空に手を伸ばして立っていた。


 

〜〜〜〜〜〜〜【META-LOG(非通知)】〜〜〜〜〜〜〜

……………

▼『カース・スケルトン』に存在進化しました。

▼能力が種に即して変化しました。

▼スキル【足枷の呪い】【牙抜きの呪い】【呪詛の外套】を獲得しました。

……………

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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