第15話◯己の存在


 体の奥底から、湯水のように何かが湧き上がる。


 もちろん実際に物理的に溢れているわけではない。

 もっと感覚的なことである。


 なんとも形容し難い感覚だ。

 今まで感じたこともない。


 しかしその何かが溢れると同時に、ちょっとした全能感が思考を取り巻いた。


 ……これはあれだな、力が湧き出てくるぜっ!ってヤツだな。

 漫画とかじゃ覚醒した時とかによくあるアレ。


 自分が覚醒したと自惚れるわけじゃないが、しかしそれくらいに確かな力の増幅を感じた。

 

 この世界で力が上がるとなれば、存在値や位階の上昇。

 今回の場合は後者だな。

 

 そうなるとやはり、今、目の前で倒れている老木を討伐できたということになるが…。


 『存在値が一定値に達しました───、』


==============================

個体名:ーーー

種族名:スケルトン

位階:劣参位レッサー・サード

存在値:1354

[能力]

生命力:606/606

魔力 :47/47

攻撃力:70

防御力:70

抵抗力:51

敏捷力:25

[称号]

【覆す者】


[スキル]

【META】【密化】【投石】【呪いのまじない】【窮地脱却】【必殺拳】


[特性]

【骨の身体】【アンデッド】

==============================


 答え合わせするかのように、アナウンスが頭に響く。

 そして、文字と数字の羅列のウィンドウが展開された。


 存在値を獲得していた、それはつまり……。



 やった、倒せたのか…。


 ギリギリまで、また起き上がって反撃してくるんじゃないかと警戒していたが、それは杞憂だったらしい。


 おそらく格上であろう相手に勝利を収めることができた。

 かなりギリギリな戦いだったろう。

 

 ちょっと判断が迂闊だったかもしれない。

 本能的に格上だとわかっていたのだから、無理に挑戦する必要はなかった。

 一度は妨害されども、もっと注力していれば、相手の隙に逃走を図れたかもしれないし。


 もし、オート機能が何か目覚めていなければ、今の立場は逆だった可能性は大いにある。


 ……いや、オート機能があったからこそ、俺はあの時───根っこから解放された時に突撃したのかもしれん。


 今はもう、効果が切れているからか落ち着いている。


 しかしあの時は、絶対にアイツを滅さなければならない、という謎の使命感と責任感を感じていた。

 そして、アドレナリンが出たかのように、ひどく興奮状態にあった。


 おそらくというか、ほぼ確定でスキルのせいだ。


 以前に使用した時もそうだが、思考が俺らしくなかった。

 スキルの影響は全くないとは、断じて言えないだろう。



 思考が変わり、いつもとは違う行動にでる……か。



 これからは少し、オートを使用するのは控えめにした方がいいかもしれない。

 

 有用性は計り知れないし、今回だってコレのおかげで助かったみたいなところはあるが……、それ以上に恐ろしくもある。


 自分が、自分の意思にはない、突拍子もない行動に出るのは正直言って怖すぎる。

 一種の金縛りというか洗脳というか……そういう精神操作みたいなものではないか。


 もしオート機能が擬人化したら、「今まで、俺のおかげで助かったんじゃねぇか!」とブチギレられそうだけども、こればかりはちょっとね。


 いざという時の切り札……みたいな認識にしておこう。



 ……あー、でもそうなると、ちょっと戦闘訓練みたいなのもしておかないと。

 俺自身は戦闘技術なんて皆無どころか、喧嘩すらもまともにすたことがないヒョロっ子だからなぁ。


 生前は生粋の運動音痴だったから、頑張らなければ。



 そう、今後に向けて決意表明をしたところで───



 『存在進化の条件を満たしました。いずれかの種族にです』



 

 うぉ…、おぉ…。マジか…。

 ついにこの時が来たのか…。


 耳にはしていた、存在進化…!



 〜〜〜〜〜【存在進化】〜〜〜〜〜

 一定の存在値と特定の条件を満たすことで可能となる、存在の進化を行うこと。

 種族が上位のモノ、もしくは別分類の種に変更される。

 変更する種によっては、存在値を獲得できる。

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 ご丁寧に説明もしてくださる。

 うん、イメージ通り。詳しいこともありがとう。


 ……種族が変わる。

 それすなわち、無銘無個性のスケルトンから脱却できるということ。

 

 ここまでピュアホワイトな人骨でやってきたわけだが、ようやくなんらかの属性が得られるわけだ。

 

 順当に行くならば…、剣とか持ってスケルトンウォリアーです、とか魔法が使えるようになってメイジスケルトンです、とか……。


 もしかしたら人ではなく、犬のスケルトンだとか、肉体を手に入れてゾンビになるだとか…!


 想像が膨らむ。

 無地ゆえに、いろんな可能性があるからな。

 きっと選択肢も豊富なはず。


 優柔不断な俺だと、だいぶ悩みそうだが……まぁそれはそれとして。


 さぁいったい、俺は何になるんだ…!?





 〜〜可能進化先〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 • カース・スケルトン

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 

 ……。


 ……。


 ……。


 

 えっ!?これだけ!?

 


 一個ずつウィンドウが展開するのかな、と思ってしばし待ってみたけれど、全く音沙汰なし!


 完全にこれ一択である。


 おい、少なすぎだろ!

 種族に〜〜、って言ってたのに!!




 


 

 


 

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